なぜ「手取りの何%」で考えると失敗しにくいのか

新NISAの積立額を考えるとき、多くの人は月1万円、月3万円、月5万円、月10万円のように金額で考えます。

もちろん、それでも悪くありません。

ただ、同じ月5万円でも、手取り20万円の人と手取り50万円の人では負担感がまったく違います。

手取り20万円で月5万円なら、収入の25%です。かなり攻めています。

手取り50万円で月5万円なら、収入の10%です。家計によっては無理なく続けやすい水準です。

だから、積立額は金額だけでなく、手取りに対する割合でも見る必要があります。

ここを見ずに「月5万円が正解」「月10万円が理想」と決めると、生活費が苦しくなり、相場が下がった時に売らされやすくなります。

2026年6月2日時点の新NISA枠

まず制度の上限を確認しておきます。

2026年6月2日時点で金融庁が公表している新NISA制度では、つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円です。両方を合わせると年間360万円まで投資できます。

生涯の非課税保有限度額は1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までです。

区分年間投資枠主な位置づけ
つみたて投資枠120万円長期・積立・分散投資向け
成長投資枠240万円上場株式や投資信託なども対象
合計360万円2つの枠は併用可能

ただし、制度上使える金額と、自分が投資してよい金額は別です。

非課税枠は魅力的ですが、生活費、緊急資金、近い将来に使うお金まで投資に回す必要はありません。

また、NISA口座で損失が出ても、課税口座の利益と損益通算できません。非課税メリットだけでなく、下落時の扱いも理解しておきたいところです。

手取り別の積立額目安

手取り収入ごとに、5%・10%・15%・20%で見た場合の積立額は次の通りです。

毎月の手取り5%10%15%20%
20万円1万円2万円3万円4万円
25万円1.25万円2.5万円3.75万円5万円
30万円1.5万円3万円4.5万円6万円
40万円2万円4万円6万円8万円
50万円2.5万円5万円7.5万円10万円

初心者なら、まず5%から10%で考えると無理が出にくいです。

手取り30万円なら、月1.5万円から3万円。これなら、投資に慣れながら家計の変化も見やすい。

15%以上は、家計にかなり余裕がある人向けです。20%になると、固定費が低い独身世帯、共働きで片方の収入を貯蓄・投資に回せる家庭、生活防衛資金が十分ある人でないと重くなりやすいです。

積立額を決める前に見る3つの財布

新NISAの積立額を決める前に、家計を3つに分けて見ます。

財布中身NISAに回してよいか
生活費の財布家賃、食費、通信費、保険料、教育費回さない
近い将来の財布税金、車検、引っ越し、旅行、入学費用基本は回さない
長期資金の財布10年以上使わない余裕資金NISA候補

この分け方をすると、投資してよいお金が見えやすくなります。

新NISAは長期投資と相性があります。逆に言うと、数か月後や1年後に使う予定のお金とは相性がよくありません。

「銀行預金に置いていると増えないから」と考えて、近い将来使うお金まで投資に入れるのは危険です。相場が下がったタイミングで必要になれば、損を抱えたまま売ることになります。

生活防衛資金がないなら積立額は小さくする

生活防衛資金がない状態で、積立額だけ大きくするのは順番が逆です。

目安としては、生活費の半年分から1年分を現金で置いてから、NISAの積立額を上げるほうが家計は崩れにくいです。

もちろん、最初から完全に貯まるまで投資してはいけない、という話ではありません。

ただし、生活防衛資金が少ないなら、月1万円や手取りの5%程度から始めるほうが現実的です。

投資で一番つらいのは、相場が下がった時にお金が必要になり、売りたくないのに売らされることです。これを避けるだけで、長期投資の失敗はかなり減ります。

家計タイプ別の考え方

独身で固定費が低い人

固定費が低く、毎月の黒字が安定しているなら、手取りの10%から15%を検討しやすいです。

手取り30万円なら、月3万円から4.5万円あたりです。

ただし、転職、引っ越し、資格取得、独立準備などで大きな出費が近い場合は、投資より現金を厚くしたほうがいい場面もあります。

子育て世帯

子育て世帯は、手取りの割合だけで決めないほうがいいです。

教育費は時期によって大きく動きます。保育料、習い事、塾、受験、入学金、大学費用が重なると、同じ手取りでも余裕資金は一気に減ります。

この場合は、まず手取りの5%から10%で様子を見る。ボーナスや児童手当をどう扱うかも含めて、教育資金と老後資金を混ぜない設計にしたいところです。

住宅ローンがある人

住宅ローンがある人は、金利上昇、修繕費、固定資産税、火災保険、管理費・修繕積立金も見ます。

毎月の返済だけ見て「余裕がある」と判断すると、数年後に苦しくなることがあります。

変動金利で借りている場合や、繰上げ返済も検討している場合は、NISAの積立額を増やす前に手元資金を厚めに残すほうが現実的です。

50代以降で老後が近い人

50代以降は、積立額だけでなく、取り崩す時期も考えます。

10年以上使わないお金ならNISAで運用を検討しやすいですが、数年以内に使う退職金、住宅修繕費、親の介護費まで株式中心で運用するのはリスクがあります。

この年代では、手取りの何%かだけでなく、現金、債券、投資信託、退職金、年金見込みを分けて考える必要があります。

増額していいサイン

次の条件がそろってきたら、積立額を増やしてもよいか検討できます。

サイン確認すること
6か月以上黒字が続いている臨時収入ではなく通常収入で余っているか
生活防衛資金がある生活費の半年から1年分を現金で置けているか
大きな支出予定が見えている教育費、車、引っ越し、住宅修繕を除いているか
下落時に売らなかった含み損でも積立を続けられたか
商品内容を理解している何に投資しているか説明できるか

増額は、気分でやるより、家計の実績を見てからのほうがいいです。

半年から1年続けてみて、まだ余裕がある。そこで月1万円増やす。このくらい地味な進め方で十分です。

減額したほうがいいサイン

逆に、次の状態なら積立額を下げることを考えます。

サイン理由
クレジットカード残高が増えている投資より支出管理が先
生活防衛資金を取り崩している投資額が家計に合っていない可能性
相場下落が気になって眠れないリスク許容度を超えている可能性
ボーナスで赤字を埋めている毎月の積立額が高すぎる可能性
近い将来の支出を投資でまかなう予定必要時期と投資期間が合っていない

積立額を下げるのは負けではありません。

家計に合わせて減額し、投資を続けるほうが、無理をして全部止めるよりずっと良い場合があります。

よくある質問

手取りの何%が正解ですか?

万人に共通する正解はありません。初心者は5%前後、家計が安定している人は10%前後から考えると無理が出にくいです。15%以上は、固定費や生活防衛資金を確認してから判断したい水準です。

月5万円を積み立てたい場合、手取りはいくら必要ですか?

手取りの10%で考えるなら、月5万円の積立には手取り50万円が目安になります。手取り25万円で月5万円なら20%です。固定費が低ければ可能な人もいますが、家計への圧迫は強くなります。

生活防衛資金とNISAはどちらを優先すべきですか?

急な出費に備える現金が少ないなら、生活防衛資金を優先する場面が多いです。NISAは元本保証ではないため、必要な時に必ず増えているとは限りません。

積立額は毎年変えてもいいですか?

変えて構いません。収入、家族構成、住宅費、教育費、介護費、相場環境は変わります。むしろ、年1回は家計と積立額を見直すほうが自然です。

まとめ

新NISAの積立額は、金額だけでなく手取りに対する割合で見ると失敗しにくくなります。

初心者は手取りの5%前後。

家計が安定している人は10%前後。

老後資金づくりを本格化するなら15%前後。

20%を超える場合は、固定費、生活防衛資金、近い将来の支出をかなり丁寧に確認したい水準です。

新NISAは、非課税枠を最速で埋める制度ではありません。家計を守りながら、長く投資を続けるための制度です。

増やすより先に、続けられるか。ここを見たほうが、結果的に資産形成は崩れにくくなります。

出典

本記事は、2026年6月2日時点で確認できる金融庁のNISA制度情報を基に作成しています。制度や対象商品の条件は変わる可能性があるため、口座開設や商品購入前に金融庁・金融機関の最新情報を確認してください。

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。