決算サマリー
| 項目 | 当期実績 | 前年同期 | 増減率 | 会社計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,061.76億円 | 989.99億円 | +7.2% | 1,080.00億円 | 該当なし |
| 営業利益 | 90.33億円 | 68.35億円 | +32.2% | 85.00億円 | 該当なし |
| 経常利益 | 89.54億円 | 67.69億円 | +32.3% | 84.00億円 | 該当なし |
| 純利益 | 64.08億円 | 46.79億円 | +36.9% | 56.00億円 | 該当なし |
| EPS | 441.40円 | 322.34円 | +36.9% | 385.74円 | 該当なし |
会社計画欄は2027年3月期の通期予想を置いているため、当期実績に対する進捗率は該当なしとしています。売上より利益の伸びが大きく、営業利益率は6.9%から8.5%へ改善しました。
定量評価
| 指標 | 直近実績 | 比較対象 | 見方 |
|---|---|---|---|
| EPS成長率 | +36.9% | 前期比 | 利益成長は営業利益の伸びと整合しています。 |
| ROE | 17.3% | 前期13.7% | 自己資本に対する利益効率は改善しました。 |
| 簡易ROIC | 約13.8% | 前期約11.3% | 営業利益、実効税率、有利子負債、自己資本からの簡易推計です。 |
| PER推移 | 予想6.76倍 | 2010年以降2.33から39.97倍 | 市場評価は長期レンジ内にあります。 |
数字上は利益率と資本効率が改善しています。ただし、営業CFがマイナスであるため、利益の質は売上債権の回収と合わせて確認する必要があります。
ポジティブ要因
建設事業の増収増益
建設事業は完成工事高1,058.93億円、セグメント利益113.20億円となりました。商業施設の新築、内装、リニューアル工事、宿泊施設需要への受注活動が売上と利益を支えました。
営業利益率の改善
売上高営業利益率は8.5%となり、前期の6.9%から改善しました。売上高の増加に加え、完成工事の採算が利益押し上げに寄与したと考えられますが、案件ごとの採算は継続確認が必要です。
財務基盤の強化
純資産は400.21億円、自己資本比率は53.7%となり、前期の50.4%から上昇しました。建設業としては自己資本の厚みがあり、一定の財務安全性を維持しています。
株主還元方針の明確化
2026年3月期の年間配当は230円、2027年3月期予想は株式分割後で125円です。中期経営計画では配当性向40%程度またはDOE4%程度を目標に掲げています。
リスク要因
営業キャッシュ・フローの悪化
営業CFは32.32億円のマイナスとなりました。税金等調整前当期純利益は91.09億円でしたが、売上債権等の増加95.44億円、未収消費税等の増加27.42億円、法人税等の支払額28.86億円が資金を押し下げました。
建設資材価格と労務費
会社は、原油価格の影響による建設資材価格の上昇や調達環境の悪化、慢性的な労働力不足による労務費の高騰をリスクとして挙げています。受注時の採算管理が重要になります。
来期は営業減益予想
2027年3月期は売上高1,080.00億円を見込む一方、営業利益は85.00億円で前期比5.9%減の計画です。増収でも利益率が低下する見通しであり、販売用不動産の売却収益や工事進捗の前提を確認する必要があります。
建設業の景気循環
建設業は民間設備投資、資材価格、人手不足、金利環境の影響を受けます。当該業界は景気循環の影響を強く受けるため、業績は一定ではありません。
財務安全性
総資産は744.36億円、純資産は400.21億円、自己資本比率は53.7%です。流動資産683.76億円に対して流動負債288.52億円で、短期の支払い余力は高い水準です。一方、営業CFはマイナスで、現金及び現金同等物は146.63億円へ減少しました。利益水準だけでなく、工事代金の回収速度を確認したい局面です。
業界動向との関連
建設業界では政府建設投資が堅調に推移し、民間設備投資にも高まりがみられます。一方で、建設資材価格や労務費の上昇が続き、売上成長よりも受注採算と施工体制が利益を左右する環境です。
株価への示唆
株価への示唆は条件付きで見る必要があります。2027年3月期の会社予想EPSは385.74円です。補足市場データでは、2026年5月15日時点の株価は2,552円、予想PERは6.76倍、時価総額は約372億円です。株価は業績だけでなく市場期待や需給によって変動します。
| シナリオ | 想定PER | 予想EPS | 理論株価 |
|---|---|---|---|
| 弱気 | 5.0倍 | 385.74円 | 1,929円 |
| 中立 | 6.8倍 | 385.74円 | 2,623円 |
| 強気 | 8.0倍 | 385.74円 | 3,086円 |
上記は来期予想EPSを前提にした機械的な試算です。受注採算の改善と営業CFの回復が続く場合は評価を支えやすい一方、資材価格や労務費の上昇で営業利益率が下がる場合は下振れる可能性があります。
今期の総括
2026年3月期は、商業施設を中心とした建設事業が業績を牽引し、売上高、営業利益、経常利益、純利益がいずれも増加しました。ただし、営業CFはマイナスであり、利益成長と資金回収のずれが確認点として残ります。
来期見通し
2027年3月期は売上高1,080.00億円、営業利益85.00億円、経常利益84.00億円、親会社株主に帰属する当期純利益56.00億円を見込んでいます。会社予想は外部環境により変動する可能性があります。現場を中心とした4週8休の働き方改革や販売用不動産の売却収益見込みも前提に含まれています。
総合判断
総合判断は中立である。営業利益率、ROE、簡易ROICの改善は評価できますが、営業CFのマイナスと来期営業減益予想を踏まえると、まだ慎重に見たい決算です。次回は受注採算、売上債権の回収、2027年3月期計画の進捗が焦点になります。
出典
本記事は、対象企業が開示した決算短信と補足市場データを基に作成しています。
- 「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」、株式会社イチケン、2026年5月18日開示
- 補足市場データ:IRBANK「1847 イチケン 株式指標」、2026年5月15日観測