決算サマリー(前年比)

項目当期実績前年同期増減率会社計画進捗率
売上収益1兆3,347億76百万円1兆3,593億66百万円-1.8%2兆1,797億76百万円〜2兆2,697億76百万円58.8%〜61.2%
営業利益2,735億74百万円4,146億6百万円-34.0%4,360億円〜5,260億円52.0%〜62.7%
親会社の所有者に帰属する四半期利益1,467億56百万円2,520億48百万円-41.8%4,537億56百万円〜5,137億56百万円28.6%〜32.3%
EPS271.67円485.94円-44.1%833.39円〜943.59円-

累計では前年同期比で減収減益だが、第3四半期単体では売上収益5,436億円、営業利益1,428億円と前四半期比で大きく改善した。

ポジティブ要因

第3四半期単体は大幅な増収増益

第3四半期単体の売上収益は5,436億円で前四半期比953億円増、営業利益は1,428億円で同568億円増となった。平均販売単価の上昇と出荷量の増加が同時に進み、収益回復が鮮明になった。

AI需要がデータセンター向けを押し上げた

会社は、フラッシュメモリ市場でデータセンターとエンタープライズ向けにAI用途のサーバー需要が拡大していると説明している。累計でも出荷量は前年同期比で増加しており、数量面では追い風が続いている。

アプリケーション全体で改善が広がった

第3四半期単体ではSSD & ストレージ売上収益が3,004億円で前四半期比558億円増、スマートデバイスが1,863億円で同290億円増、その他も570億円で同105億円増となった。改善が特定用途に偏らず広がっている点は前向きである。

第4四半期見通しは強い

会社は第4四半期に売上収益8,450億円〜9,350億円、営業利益4,360億円〜5,260億円を見込む。全アプリケーションで販売単価の大幅上昇を予想し、合弁契約延長に伴う約30億円の売上収益計上も見通しに含めている。

リスク要因

累計では前年同期の高採算局面に届いていない

累計売上収益は前年同期比246億円減、営業利益は同1,410億円減、親会社の所有者に帰属する四半期利益は同1,053億円減となった。足元が改善していても、前年同期の高い販売単価水準との差はなお大きい。

円高と市況変動の影響を受けやすい

会社は当第3四半期累計期間の米ドル平均為替レートが前年同期比で円高に推移したと説明している。半導体メモリ業界は事業環境が短期間で大きく変化する特徴があり、価格と為替の振れが利益変動を増幅しやすい。

第4四半期には固定資産税の一括計上がある

会社は第4四半期に年間の固定資産税約120億円の計上を見込んでいる。販売単価上昇が続いても、費用増が利益率の押し下げ要因になる可能性がある。

業績予想はレンジ開示で不確実性が残る

通期業績予想はレンジ形式で、売上収益は2兆1,797億76百万円〜2兆2,697億76百万円、営業利益は4,360億円〜5,260億円と幅がある。メモリ市況の変化が速く、上振れと下振れの両方を織り込む必要がある。

財務安全性

親会社所有者帰属持分比率は30.6%で前期末の25.3%から5.4ポイント改善し、低水準から標準圏に近づいた。流動資産合計は1兆596億2百万円、流動負債合計は9,863億60百万円で、流動比率は約107.4%と最低限の安全性は確保している。社債及び借入金は流動185億17百万円、非流動9,008億72百万円で、総資産に対する比率は約34.0%と軽くはない。一方で営業CFは3,221億67百万円の黒字、フリーCFも1,539億75百万円の黒字で、資金繰りは改善している。現金及び現金同等物は2,815億27百万円まで増加した。

業界動向との関連

会社によれば、フラッシュメモリ市場ではAI用途によるデータセンター向け需要が拡大し、PCやスマートフォン向けも新規AIモデル投入で堅調に推移している。キオクシアはこうした需要を取り込みつつある一方、半導体メモリ業界は価格変動が大きく競争も激しい。需要環境は追い風でも、販売単価と為替の変化次第で収益振れ幅は大きい業界である。

株価への示唆(条件付き)

今期実績EPSは271.67円で、通期会社予想から逆算した来期着地ベースのEPSレンジは833.39円〜943.59円となる。ここではレンジ中央値の888.49円を用い、半導体メモリ事業の市況変動が大きい点を踏まえたシナリオ PER として8倍、10倍、12倍を仮定する。これらの PER は補助的な市場データではなく、業績変動の大きい事業特性を踏まえた参考前提である。

シナリオ想定PER予想EPS理論株価
弱気8倍888.49円7,108円
中立10倍888.49円8,885円
強気12倍888.49円10,662円

上記は第4四半期に会社が見込む販売単価上昇と通期レンジ達成を前提とした試算であり、メモリ価格の反落や円高進行が起きた場合は下振れる可能性がある。一方でAI向け需要の強さが続き、レンジ上限に近い利益水準で着地すれば、評価レンジの上側を意識しやすくなる可能性がある。あくまで参考値であり、投資判断は各自の責任で行う必要がある。

今期の総括

2026年3月期第3四半期累計は前年同期比では減収減益だったが、第3四半期単体では販売単価と出荷量の改善が同時に進み、収益回復がはっきり表れた。累計の弱さと足元の回復が併存する、転換点を示す決算といえる。

来期見通し

会社は第4四半期に売上収益8,450億円〜9,350億円、営業利益4,360億円〜5,260億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益3,070億円〜3,670億円を見込む。通期では前年度比で増収増益予想を維持しており、背景には全アプリケーションでの販売単価上昇見通しとデータセンター向け需要の強さがある。もっとも、会社自身がレンジ開示を採るように市況変動は大きく、達成度は価格環境と為替の動きに左右されやすい。

中立的まとめ

キオクシアホールディングスの2026年3月期第3四半期は、累計では前年同期比で厳しい一方、足元では回復が鮮明になった。AI需要と販売単価上昇は前向きだが、メモリ市況の変動、円高、費用増の影響は引き続き大きい。今後は第4四半期の着地水準が、回復局面の持続性を見極める重要な材料になる。


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