決算サマリー
| 項目 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 増減率・見方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 17.09億円 | 22.39億円 | -23.6% |
| 営業利益 | -4.85億円 | -1.01億円 | 赤字拡大 |
| 経常利益 | -7.64億円 | -2.83億円 | 赤字拡大 |
| 当期純利益 | -2.07億円 | -4.07億円 | 赤字幅は縮小 |
| EPS | -12.07円 | -25.40円 | 赤字 |
| 自己資本比率 | 56.5% | 50.0% | 改善 |
当期純損失は前年より縮小しているが、本業の営業損失と経常損失は悪化している。純損失の縮小だけを見て改善と読むのは少し危ない。
営業段階では赤字が広がっており、収益体質はまだ立て直し途上である。
セグメント別の状況
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| お墓事業(屋外墓地) | 5.55億円 | -18.7% | 0.01億円 |
| お墓事業(納骨堂) | 1.28億円 | -20.5% | -0.78億円 |
| 葬祭事業 | 10.25億円 | -26.5% | 1.21億円 |
| セグメント合計 | 17.09億円 | -23.6% | 0.43億円 |
| 全社費用調整 | - | - | -5.28億円 |
| 営業利益 | - | - | -4.85億円 |
屋外墓地は、樹木葬や共有墓の需要がある一方で、契約件数が伸びず減収となった。納骨堂も来苑者数の減少が響き、赤字が続いている。
葬祭事業は、ラステル久保山の受注・施工は順調だったものの、一日葬などの比率上昇で施行単価が押し下げられた。死亡者数増加というマクロの追い風はあるが、それがそのまま高採算につながっていない。
ここはかなり重要で、ニチリョクは「終活関連だから安定成長」と単純には見られない。需要はあるが、単価、販売力、全社費用の吸収が課題になっている。
キャッシュ・フローと財務
| 項目 | 2026年3月期 | 2025年3月期 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 営業CF | -4.59億円 | -1.13億円 | 本業で資金流出 |
| 投資CF | +12.33億円 | +1.52億円 | 事業譲渡収入が寄与 |
| 財務CF | -6.27億円 | -2.14億円 | 借入返済が進む |
| 現金及び現金同等物 | 2.53億円 | 1.07億円 | 増加 |
| 総資産 | 50.29億円 | 57.89億円 | 減少 |
| 純資産 | 28.43億円 | 28.99億円 | 小幅減 |
営業CFは4.59億円のマイナスで、本業の資金創出はまだ弱い。
ただし、投資CFは事業譲渡による収入15億円などで大きくプラスとなった。財務CFでは長期借入金の返済などが進み、負債合計は前年末比7.04億円減少している。
つまり、2026年3月期は「本業は苦しいが、事業譲渡と借入返済で財務の形を整えた期」と見るのが近い。
過年度訂正のポイント
同日発表された「過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」では、差入保証金に関する会計上の見積りが見直された。
会社側は、一部霊園における販売実績の推移や回収見通しを踏まえ、回収期間が当初想定より長期化する見込みになったと説明している。会計処理としては、貸倒引当金の計上による差入保証金の評価減である。
ただし、会社はこの評価減について、寺院等の信用力低下や回収不能を理由とするものではなく、回収期間の長期化に伴う時間価値の低下を反映するものとしている。
| 対象期 | 主な影響 |
|---|---|
| 2022年3月期 | 総資産-14.17億円、純資産-14.16億円、当期純利益-2.26億円 |
| 2023年3月期 | 総資産-14.71億円、純資産-14.71億円、当期純利益-0.55億円 |
| 2024年3月期 | 総資産-15.50億円、純資産-15.50億円、当期純利益-0.79億円 |
| 2025年3月期 | 総資産-16.86億円、純資産-16.86億円、当期純利益-1.36億円 |
| 2026年3月期3Q | 総資産-19.10億円、純資産-19.10億円、当期純利益-2.24億円 |
訂正の見出しはかなり重い。特に純資産への影響が大きく、過年度の財務余力の見え方は変わる。
一方で、2026年3月期決算短信では「継続企業の前提に関する注記」は該当事項なしとなっている。ここは投資家が安心材料として確認しておきたい部分である。
2027年3月期見通し
| 項目 | 2027年3月期予想 | 2026年3月期実績 | 見方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 23.37億円 | 17.09億円 | +36.5% |
| 営業利益 | 2.21億円 | -4.85億円 | 黒字転換 |
| 経常利益 | 1.63億円 | -7.64億円 | 黒字転換 |
| 当期純利益 | 1.22億円 | -2.07億円 | 黒字転換 |
| EPS | 7.12円 | -12.07円 | 黒字化 |
会社計画は強い。赤字決算の直後に営業利益2.21億円まで戻す前提なので、市場は当然ここを疑って見る。
ポイントは、葬祭事業の単価改善、お墓事業の契約件数回復、納骨堂の来苑者・成約率改善、そして全社費用のコントロールである。
営業CFがマイナスのままでは、黒字転換計画の説得力は弱くなる。2027年3月期は、損益だけでなくキャッシュの改善が確認点になる。
ポジティブ要因
1つ目は、財務面で負債圧縮が進んだことだ。借入返済により負債合計は減少し、自己資本比率は56.5%まで改善した。
2つ目は、来期の黒字転換計画である。計画通りなら、赤字体質からの転換が明確になる。
3つ目は、終活関連需要そのものは残ることだ。葬祭、墓じまい、樹木葬、納骨堂、生活支援といった領域は、人口動態的には需要が消える市場ではない。
リスク要因
最大のリスクは、売上回復と利益改善の実現性である。2026年3月期は売上が23.6%減っており、営業赤字も拡大した。ここから一気に黒字化するには、かなり明確な収益改善が必要になる。
次に、過年度訂正の印象である。回収不能ではないと説明されているとはいえ、差入保証金の評価減は純資産を大きく押し下げている。投資家の信頼回復には、今後の開示と実績の積み上げが必要だ。
もう一つは、営業CFの弱さである。事業譲渡収入で現金は増えたが、本業から現金が出ていく構造が続くと、株価評価は上がりにくい。
株価への示唆
短期的には、赤字決算と過年度訂正の見出しが重い。特に訂正開示は、内容を読まずに売られる可能性がある。
ただ、中身を分けて見ると、訂正は差入保証金の時間価値の見直しであり、2026年3月期の本決算では来期黒字転換計画が出ている。市場が見るべき論点は、過年度訂正そのものよりも、2027年3月期に本当に営業黒字へ戻せるかである。
個人的には、ここで強気に振るにはまだ早い。まずは四半期ごとに売上の戻り、葬祭単価、全社費用、営業CFの改善を確認したい。
総合判断
総合判断は慎重中立である。
2026年3月期は、売上減、営業赤字拡大、営業CFマイナスという厳しい内容だった。一方で、事業譲渡収入と借入返済により財務面は一定程度整えられ、2027年3月期は黒字転換を見込む。
ニチリョクを見るうえでは、「終活需要」というテーマ性よりも、実際に利益を出せる事業構造へ戻せるかがすべてである。次の決算では、黒字転換計画の初速をかなり厳しく見たい。
出典
本記事は、ニチリョク(7578)が2026年5月21日に開示した「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)」および「過年度の決算短信等の訂正に関するお知らせ」を基に作成しています。