決算サマリー(前年比)
| 項目 | 当期実績 | 前年同期 | 増減率 | 会社計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2兆4,435億33百万円 | 2兆4,315億68百万円 | +0.5% | - | - |
| 営業利益 | 6,249億36百万円 | 6,973億19百万円 | -10.4% | - | - |
| 経常利益 | 6,303億38百万円 | 7,077億27百万円 | -10.9% | - | - |
| 親会社株主帰属利益 | 5,744億54百万円 | 5,441億33百万円 | +5.6% | - | - |
| EPS | 1,254.57円 | 1,182.40円 | +6.1% | - | - |
トップラインは横ばい圏を維持したが、売上高営業利益率は28.7%から25.6%へ低下し、利益率面では調整色が残った。
ポジティブ要因
売上高は高水準を維持した
2026年3月期の売上高は2兆4,435億33百万円で前期比0.5%増となった。前期の高成長の反動がある中でも、2兆4千億円台の売上を維持した点は底堅い。
AI需要が市場成長をけん引
会社は、データセンター向けAIサーバー需要の拡大が半導体市場全体の成長をけん引したと説明している。情報通信技術の進展やAIの進化を背景に、半導体製造装置市場の中長期成長期待はなお高い。
純利益とEPSは増加した
親会社株主に帰属する当期純利益は5,744億54百万円で前期比5.6%増、EPSは1,254.57円で同6.1%増となった。営業減益でも最終利益段階では増益を確保している。
来期上期の会社見通しは強い
2027年3月期第2四半期累計の会社予想は、売上高1兆5,700億円で前年同期比33.1%増、営業利益4,310億円で同42.2%増、親会社株主に帰属する当期純利益3,280億円で同35.7%増である。少なくとも上期見通しは強い回復を織り込んでいる。
リスク要因
営業利益率は低下した
営業利益は6,249億36百万円で前期比10.4%減、売上高営業利益率は25.6%と前期の28.7%から3.1ポイント低下した。売上成長に比べて利益の伸びが伴わず、収益性には一服感がある。
中国向け投資には一服感がある
会社は、半導体製造装置市場で中国における設備投資には一服感がみられたと説明している。一部地域や用途への投資偏重が鈍ると、装置需要の波が業績に影響しやすい。
市場変動が大きい業界構造
会社は、半導体市場では短期的な需給バランスや価格変動が一段と激しくなっているとみている。大手半導体メーカーの投資動向に左右されやすく、業績変動要因は依然大きい。
通期予想はまだ未開示
会社は、2027年3月期の通期連結業績予想を中間期決算発表時に開示する予定としており、現時点では上期見通しのみの開示にとどまる。下期の投資環境や受注動向の不確実性は残る。
財務安全性
自己資本比率は71.5%で前期末の70.1%から1.4ポイント改善し、財務健全性は高い。営業活動によるキャッシュ・フローは5,397億32百万円の黒字、投資活動によるキャッシュ・フローは964億92百万円の赤字で、フリーキャッシュ・フローは4,432億40百万円の黒字を維持した。現金及び現金同等物は5,054億14百万円まで増加している。一方、この開示の要約数値からは流動資産・流動負債や有利子負債の詳細内訳を十分に確認できず、流動比率と有利子負債比率の精密算定は本記事では行っていない。
業界動向との関連
会社によれば、半導体市場ではAIサーバー向け需要拡大が成長をけん引した一方、中国向け設備投資には一服感がみられた。東京エレクトロンの業績もこの構図を反映しており、AI関連の追い風を受けながらも、地域別・用途別の投資変動で利益率が振れやすい。半導体製造装置市場の中長期成長期待は高いが、短期的な波も大きい局面にある。
株価への示唆(条件付き)
今期実績EPSは1,254.57円である。2027年3月期の通期会社予想EPSは未開示のため、ここでは便宜上、直近実績EPSを評価基準として用いる。半導体製造装置市場は高成長期待がある一方で投資サイクルの変動も大きいため、想定PERは弱気18倍、中立22倍、強気26倍のシナリオで置く。
| シナリオ | 想定PER | 予想EPS | 理論株価 |
|---|---|---|---|
| 弱気 | 18倍 | 1,254.57円 | 22,582円 |
| 中立 | 22倍 | 1,254.57円 | 27,601円 |
| 強気 | 26倍 | 1,254.57円 | 32,619円 |
上記はAI関連投資の拡大と装置需要の底堅さが続くことを前提とした参考試算であり、中国向け投資の鈍化や半導体市況の調整が強まれば下振れる可能性がある。一方で、2027年3月期上期会社計画どおりの高成長が確認され、通期見通しも強い内容になれば評価レンジの上側を意識しやすくなる可能性がある。あくまで参考値であり、投資判断は各自の責任で行う必要がある。
今期の総括
2026年3月期は、AI関連需要を背景に売上高の高水準維持に成功した一方、利益率の調整で営業減益となった。最終利益は増加したが、収益性の鈍化と市場変動の大きさが同時に見えた決算だった。
来期見通し
2027年3月期は通期予想が未開示で、現時点では第2四半期累計の会社見通しのみが示されている。会社は上期に売上高1兆5,700億円、営業利益4,310億円、経常利益4,370億円、親会社株主に帰属する当期純利益3,280億円を見込み、いずれも前年同期比で大幅増を計画している。背景にはAI関連を中心とした需要の強さがある一方、市場変動要因が多いため、下期を含めた通期の見極めは中間期決算時点が重要になる。
中立的まとめ
東京エレクトロンの2026年3月期通期決算は、高水準の売上を維持しつつも営業利益率が低下した内容だった。AI需要の追い風は続くが、中国向け投資の一服感や市場変動の大きさは無視できない。今後は2027年3月期上期の進捗と、中間期時点で示される通期見通しが評価の分岐点になる。
出典
本記事は、対象企業が開示した決算短信・決算説明資料・有価証券報告書などの計算書類・開示資料を基に作成しています。
- 主資料: 東京エレクトロン株式会社「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」、開示日 2026年4月30日
- 株価への示唆: 2027年3月期通期EPSが未開示のため、同短信に記載の2026年3月期実績EPSを基にシナリオPERで試算