決算サマリー(前年比)

項目当期実績前年実績増減率
営業収益1,987億35百万円1,622億68百万円+22.5%
営業利益1,162億89百万円901億32百万円+29.0%
親会社所有者帰属利益791億39百万円611億12百万円+29.5%
ROE23.1%20.1%+3.0pt

現物売買代金の拡大と清算関連収益の成長が全体を押し上げ、営業利益率は58.5%まで上昇した。市場活況の恩恵が大きい一方で、情報・データ・金利関連サービスも着実に積み上がっている。

ポジティブ要因

現物売買代金の拡大が取引関連収益を押し上げた

2025年度の株券等の1日平均売買代金は7.52兆円で、前年度比31.9%増となった。プライム市場内国株も同30.0%増の5.74兆円まで拡大し、取引関連収益は773億99百万円と前期比20.0%増となった。

清算関連収益が大きく伸びた

金利スワップ取引の担保管理関連収益などが寄与し、清算関連収益は542億42百万円と前期比57.5%増となった。株式市場の活況だけでなく、ポストトレード機能の収益拡大が利益の厚みを増した。

上場・情報関連収益も堅調だった

上場関連収益は186億82百万円で前期比7.9%増、データサービス収益は35億円で同11%増となった。売買だけに依存しない収益源が育っている点は中期的に評価しやすい。

還元姿勢は明確である

2026年3月期実績配当は61円、2027年3月期会社予想も61円で据え置きである。さらに2026年4月28日には、取得総額上限200億円の自己株式取得も公表しており、資本効率と還元を意識した運営が続いている。

リスク要因

収益は依然として相場環境に左右されやすい

2026年3月期の増益には、日本株市場の売買活況という市況要因が大きく効いた。売買代金が落ち着けば、取引関連収益は反動を受けやすい。

2027年3月期会社予想は微減益である

会社は2027年3月期に営業収益2,050億円を見込む一方、営業利益は1,150億円で前期比1.1%減、親会社の所有者に帰属する当期利益は775億円で同2.1%減を見込む。好調な前期からの反動を吸収できるかが次の焦点になる。

新規サービスの収益化には時間差がある

通貨先物、データサービス、AI活用型サービスは中長期の成長余地を持つが、短期で主力収益に育つとは限らない。相場依存度を本当に下げられるかは今後の進捗確認が必要である。

システムと制度変更の影響は大きい

JPXは国内市場インフラの中核であり、基幹システム障害や市場制度変更が信用と収益の両面に影響しやすい。高収益企業である一方、運営基盤への要求水準も高い。

財務と還元

営業利益率は58.5%、ROEは23.1%と高水準で、収益性と資本効率は強い。市場インフラ事業は固定費型の性格が強いため、売買やデータ需要が増える局面では利益率が上がりやすい構造を持つ。

還元面では、配当据え置きに加えて自己株式取得も決定しており、株主還元姿勢は明確である。今後は、こうした還元が相場活況頼みではなく、多様な収益源の拡大によって支えられるかが重要になる。

株価への示唆

この決算は、日本株市場の活況を背景にした高収益体質の強さを再確認させる内容だった。一方で、市場が次に評価するのは単年度の売買活況ではなく、金利関連、データ、AI、新商品といった非伝統的収益源の定着である。

2026年5月1日に公表された4月売買状況では、東証プライム市場内国普通株の1日平均売買代金が8兆9,031億円と高水準を維持しており、短期的には追い風が続く可能性がある。ただし、決算公表後の株価反応を定量的に示す二次データは十分に確認できておらず、評価は会社開示と売買統計を軸にみる必要がある。

今期の総括

日本取引所グループの2026年3月期は、日本株市場の活況を追い風に大幅増益となった。特に現物売買代金の増加と清算関連収益の伸びが大きく、収益性と資本効率の高さも際立った。

ただし、今後の評価は相場活況企業としてだけでなく、市場インフラの拡張企業として見直せるかにかかる。2027年3月期は微減益計画の中で、金利関連、データ、AI、新商品といった収益多様化の進捗を確認する1年になる。

出典

本記事は、対象企業が開示した決算短信、決算補足資料、中期経営計画アップデート、適時開示資料を基に作成しています。

  • 株式会社日本取引所グループ「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」、開示日 2026年4月28日
  • 株式会社日本取引所グループ「2025年度 決算補足資料」、開示日 2026年4月28日
  • 株式会社日本取引所グループ「中期経営計画2027 2026年度アップデート」、開示日 2026年4月28日
  • 株式会社日本取引所グループ「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ」、開示日 2026年4月28日
  • 株式会社日本取引所グループ「2026年4月 売買状況」、開示日 2026年5月1日
本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。