まず押さえる前提

年内のドラッグストア株を見るうえで、最初に整理しておくべき点があります。

ウエルシアホールディングスは、ツルハホールディングスとの経営統合に伴い、2025年11月27日に東京証券取引所プライム市場で上場廃止となりました。したがって、現在の上場ドラッグストア株を個別に比較する場合、ウエルシアは単独上場銘柄としては分析対象外です。

この前提のうえで見ると、年内の主な注目先は、ツルハHD、マツキヨココカラ、スギHD、サンドラッグ、コスモス薬品、クスリのアオキHDです。

なぜセクター全体は崩れにくいのか

ドラッグストア株が年内に大崩れしにくい理由は、売上の支えが複数あるからです。

まず、日用品や食品は生活必需品であり、景気がやや鈍っても需要が急減しにくい分野です。

次に、調剤は高齢化と処方せん枚数の積み上がりが続きやすく、来店頻度の安定化に寄与します。スギHDの2026年2月期決算でも、調剤領域は処方せん応需体制の強化とDX活用が成長の柱として示されました。

さらに、都市部や繁華街に強い企業では、訪日客需要と化粧品の回復が引き続き材料になります。マツキヨココカラの2026年3月期第3四半期は、売上高が前年同期比4.7%増、営業利益が同4.2%増で、会社資料でも人流増加や化粧品需要の取り込みが業績要因として確認できます。

季節要因も無視できません。花粉、猛暑、感染症、乾燥対策といった需要は短期的な客数や客単価を押し上げやすく、年内は複数回のテーマが回ってきます。

それでも銘柄差が広がりやすい理由

一方で、同じドラッグストアでも利益の出方はかなり違います。

大きな分岐点は次の4つです。

論点プラスに働く条件重荷になりやすい条件
粗利率化粧品、医薬品、調剤、PBの比率が高い食品比率が上がりすぎる
販管費既存店効率、DX、物流最適化が進む人件費、賃料、物流費が先行する
再編仕入れ、物流、システム統合が進む統合コストが先に出る
出店ドミナントが効いて回転率が上がる出店だけ先行して採算が鈍る

つまり、売上成長だけでは評価が決まりません。

食品や日用品の販売が伸びれば売上は作れますが、その構成比が上がるほど粗利率は下がりやすいです。逆に、化粧品、PB、医薬品、調剤が強い企業は、同じ売上増でも利益の質が高くなりやすいです。

注目銘柄の方向感

銘柄年内の見方見るべきポイント
ツルハHD 3391強含み〜中立ウエルシア統合の進捗が最大テーマ。共同仕入れ、物流、PB、IT統合が株価の評価軸になる
マツキヨココカラ 3088強含み化粧品、都市型店舗、海外展開が相対的に強い。インバウンドと高粗利商材の両面が効きやすい
スギHD 7649中立〜強含み調剤と医療連携の積み上げが強み。年内は調剤の質と出店効率が評価軸になる
サンドラッグ 9989中立〜強含み収益安定性が高く、足元の利益のブレが比較的小さい。防御力のある内需株として見られやすい
コスモス薬品 3349中立売上成長は期待しやすいが、低価格モデルのため粗利率改善が伴うかが重要
クスリのアオキHD 3549中立〜選別地方出店と食品強化の成長余地はあるが、利益率と販管費の管理が年内の分岐点になる

ここで相対的に見やすいのは、マツキヨココカラ、サンドラッグ、スギHDです。

マツキヨココカラは、高粗利の化粧品と都市部需要の取り込みが明確です。第3四半期時点で海外店舗数は98店、香港も17店まで広がっており、単なる国内ディフェンシブ小売というより、アジア健康・美容消費の文脈で見られる余地があります。

スギHDは、2026年2月期に売上高1兆103億円で前年同期比15.1%増、営業利益485億円で同14.1%増、自己資本比率47.3%でした。調剤の成長と店舗網の拡大が続いており、年内も構造成長の見方を維持しやすい銘柄です。

サンドラッグは、2026年3月期第3四半期に売上高が前年同期比5.3%増、営業利益が同4.9%増でした。爆発的な伸びではありませんが、安定的に積み上げるタイプで、2026年5月7日時点の補足市場データでもPERは14倍前後と、極端な高評価にはなっていません。

逆に、コスモス薬品とクスリのアオキHDは、売上成長だけでなく利益率の確認がより重要です。低価格や食品強化は来店頻度を作りやすい一方、年内の株価持続には粗利率と販管費のコントロールが欠かせません。

季節要因はどう効くか

年内のドラッグストア株では、季節テーマが株価材料になりやすいです。

春から初夏

花粉症薬、目薬、マスク、UV、スキンケア、制汗剤が動きやすい時期です。都市部の人流回復が重なると、化粧品や外出関連商材を持つ企業が見られやすくなります。

猛暑が最大テーマです。冷感商品、飲料、経口補水液、日焼け止め、虫よけ、制汗剤などが回転しやすくなります。食品や日用品の比率が高い企業には来店増の追い風ですが、利益面では粗利率の確認が必要です。

風邪薬、栄養剤、保湿、調剤需要が焦点になります。とくに調剤が強い企業は、医療連携や処方せん応需の積み上がりが評価されやすい時期です。

冬から年末

感染症、風邪薬、解熱鎮痛薬、保湿、カイロ、大掃除用品がテーマ化しやすいです。ただし、前年の流行が強かった場合は反動減も起こり得ます。サンドラッグの第3四半期資料でも、風邪薬を中心とした冬物季節商材が弱めだった点は確認しておくべき論点です。

3〜6カ月で株価を動かしやすい材料

年内前半から秋口までの視点では、次の指標が重要です。

注目点見方
月次売上既存店売上が客数主導か客単価主導かを見る
粗利率食品構成比上昇が利益を削っていないかを見る
調剤処方せん枚数、併設率、医療連携の積み上がりを見る
化粧品インバウンドと高粗利カテゴリーの回復を確認する
再編ツルハの統合進捗が実務段階に入るかを見る

短期で最も見やすいのは、化粧品と都市型需要を持つマツキヨココカラ、利益の安定性が高いサンドラッグです。

一方で、コスモス薬品とクスリのアオキHDは、売上の強さが確認されても、粗利率や販管費が伴わなければ株価が伸びにくい局面になりやすいです。

9〜12カ月で見るべき勝ち筋

年末までの中期視点では、勝ち筋は3つに整理できます。

規模の経済

ツルハとウエルシアの統合は、年内の最重要テーマです。共同仕入れ、物流、PB、システム統合が進めば業界全体の評価軸が変わる可能性があります。ただし、最初に見えるのはシナジーよりコストのことも多く、進捗確認が必要です。

高粗利領域の比率

化粧品、医薬品、調剤、PBの比率が高い企業ほど、売上成長が利益成長につながりやすいです。この意味で、マツキヨココカラ、スギHD、サンドラッグは比較的見通しを立てやすい部類です。

食品集客モデルの効率化

コスモス薬品やクスリのアオキHDのように、食品を集客に使うモデルは売上拡大には強いです。ただし、年内の再評価には「売上が伸びる」だけでは不十分で、低価格でも利益が残る構造が見えるかが重要になります。

シナリオ分析

強気:30% 猛暑、感染症、化粧品需要、訪日客需要が重なり、売上だけでなく利益率も改善する。再編期待も加わり、セクター全体の評価が一段切り上がる展開。

中立:50% 売上は堅調だが、利益成長は企業ごとにばらつく。マツキヨココカラ、サンドラッグ、スギHDが相対優位となり、食品比率の高い企業は選別されやすい展開。

弱気:20% 円安長期化、人件費上昇、価格競争で粗利率が想定より悪化する。ツルハ統合でもコスト先行が意識され、セクター全体がディフェンシブ割安のまま評価される展開。

リスク

リスク内容
人件費上昇最低賃金上昇や採用難で販管費が増えやすい
食品比率上昇売上成長の割に粗利率が伸びにくくなる
値下げ競争同業・異業種との競争で価格主導の消耗戦になりやすい
円安コスト輸入化粧品や原材料コストの上昇が利益を圧迫する
統合コストツルハ統合で一時費用やシステム調整負担が先に出る可能性

まとめ

年内の日本ドラッグストア株は、内需ディフェンシブとしての強さを維持しやすい一方で、株価はかなり選別されやすい局面です。

テーマとして強いのは、猛暑、感染症、インバウンド化粧品、調剤、業界再編です。

短期で見やすいのは、化粧品と都市部需要を取り込めるマツキヨココカラ、利益の安定性が高いサンドラッグです。中期では、ツルハの統合進捗と、スギHDの調剤を軸にした構造成長がより重要になります。

コスモス薬品とクスリのアオキHDは、売上成長の見栄えよりも、粗利率と販管費の改善が続くかどうかが評価の分かれ目です。年内の投資家視点では、売上の強さより「利益の質」を優先して見るほうが、セクターの実態に近いと言えます。

参考資料

  • ウエルシアホールディングス公式サイト「株式会社ツルハホールディングスとの経営統合に伴い当社株式は、2025年11月27日をもちまして、東京証券取引所プライム市場において上場廃止」
  • マツキヨココカラ&カンパニー 2026年3月期第3四半期決算短信
  • スギホールディングス 2026年2月期決算短信
  • サンドラッグ 2026年3月期第3四半期決算短信
  • コスモス薬品 会社IR資料および既存店・出店動向に関する開示
  • 補足市場データ: Yahoo!ファイナンス等の市場データを参照(2026年5月7日時点)
本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。