0. エグゼクティブ・サマリー
LABUBUの本質は、もはや玩具価格ではありません。
現在のLABUBU市場は、
感情経済圏
として動いています。
ユーザーは「小さなフィギュア」や「ぬいぐるみ」を買っているように見えます。
しかし実際には、
- トレンド接続権
- SNSでの承認
- 限定イベントへの参加感
- コレクター階級
- コミュニティ所属感
を買っています。
つまりLABUBUは、
ソーシャル通貨
に近い存在です。
ここが通常の玩具と決定的に違います。
1. LABUBUとは何か
LABUBUは、香港出身アーティストKasing LungによるTHE MONSTERSの代表的キャラクターです。
POP MARTのブラインドボックス、フィギュア、ぬいぐるみ、MEGA商品などを通じて、2024年以降に世界的な認知を獲得しました。
現在の市場構造は、単なるアートトイというより、
- スニーカー市場
- Supreme
- NFT
- トレーディングカード
- KAWS
- BE@RBRICK
- 現代アート
に近いです。
本質は、
文化資本の価格化
です。
希少性、話題性、所有者コミュニティ、二次流通価格が結びつくことで、キャラクター商品が資産のように扱われるようになっています。
2. なぜ爆発したのか
1. セレブ起点
LABUBUは、BLACKPINKのLISAをはじめとするセレブ露出によって、アジア富裕層カルチャーやファッション文脈へ接続されました。
ここで重要なのは、単なる宣伝ではなく、
かわいいものを持つことが、ステータスとして可視化された
ことです。
2. ブラインドボックス構造
POP MART最大の強みは、ブラインドボックス型の販売です。
これは、通常の商品販売というより、
ガチャ金融
に近い構造です。
ユーザー心理は、
- 当たりが欲しい
- コンプリートしたい
- 限定を引きたい
- SNSで開封結果を見せたい
という方向に動きます。
この射幸性が購買回数を増やし、二次流通市場にも資金を呼び込みました。
3. SNS拡散
LABUBUは、
- TikTok
- 小紅書
との相性が非常に高い商品です。
理由は、
映える
希少
かわいい
所有自慢しやすい
が同時に成立するためです。
4. 海外市場の拡大
POP MARTの2025年上半期決算では、アジア太平洋、米州、欧州など海外地域の売上が大きく伸びました。
特に東南アジアでは、LABUBUが単なる玩具ではなく、
新興アジア中間層の成功記号
として機能した側面があります。
タイ、ベトナム、マレーシアなどでは、ステータス消費としての性格が強くなりました。
3. 現在の市場フェーズ
2024年から2025年前半までは、
LABUBUなら何でも上がる
に近い総ハイプ相場でした。
しかし2026年現在、市場は変わり始めています。
起きているのは、
- 供給増加
- 再販
- 偽物の増加
- 転売競争の激化
- SNS疲労
- 高値づかみ勢の増加
です。
この結果、一般流通品のプレミアムは崩れやすくなっています。
一方で、初期モデル、限定品、来歴証明のある個体、MEGA、大型コラボなどには資金が残りやすい。
つまり市場は、
総ハイプ相場から、選別型コレクター資産市場へ
移行しています。
4. POP MARTの構造問題
2025年のPOP MARTは、数字だけ見れば非常に強い決算でした。
全社売上は371.20億元、前年比184.7%増。
THE MONSTERSは141.61億元、前年比365.7%増。
利益も大きく伸びました。
ただし、投資家が見ている論点は別です。
それは、
LABUBU後も成長できるか
です。
THE MONSTERSが全社売上の38.1%を占めるということは、強みであると同時に、集中リスクでもあります。
IP市場では、単一IP依存は危険です。
過去には、
- 妖怪ウォッチ
- Angry Birds
- NFT PFP系
- 一部のソーシャルゲームIP
のように、短期で爆発した後に熱量が急低下した例があります。
POP MARTの課題は、LABUBUを単発ヒットで終わらせず、複数年にわたるIPポートフォリオへ変えることです。
5. 最大リスクは「意味の希薄化」
多くの人は、
増産 = 暴落
と考えます。
もちろん供給増は価格下落要因です。
しかし本当の危険は、
LABUBUを持つ意味が薄れること
です。
IP型資産に必要なのは、文化熱量です。
必要なのは、
- コミュニティ
- 世界観
- 二次創作
- 熱狂
- 憧れ
- ストーリー
です。
これが消えると、価格は単なる中古玩具価格へ戻ります。
これがミーム崩壊です。
6. LABUBUはディズニー化できるか
最大テーマはここです。
長寿IPには共通点があります。
- 世界観
- 感情接続
- 世代継承
- 物語性
- 多媒体展開
DisneyやPokémonは、単に「かわいい」だけではありません。
人生の記憶、家族体験、ゲーム体験、映画体験、世代間共有と結びついています。
一方、LABUBUは現状では、
視覚ハイプ依存
が強い。
今後の鍵は、POP MARTがLABUBUを、
かわいい商品
から、
物語資産
へ昇華できるかです。
映画、アニメ、ゲーム、テーマ空間、イベント、コラボレーションを通じて、所有以上の体験を作れるかが問われます。
7. 二次流通市場の本当の構造
LABUBUの二次流通価格は、単純な定価差ではありません。
価格は、
- 希少性
- SNS熱量
- 中国景気
- 東南アジア富裕層
- 為替
- 若年層消費
- 転売資金
の複合体です。
つまりLABUBU価格は、
アジア流動性指数
でもあります。
アジアの若年層や中間層が「余剰資金で何を買うか」を映す鏡になっているからです。
8. マクロ経済との連動
LABUBUは景気敏感資産です。
なぜなら購入原資は、
余剰可処分所得
だからです。
金融緩和期には、
余剰資金
↓
趣味消費
↓
投機化
↓
価格急騰
が起こりやすい。
一方、金融引き締め期には、
可処分所得低下
↓
趣味削減
↓
転売崩壊
↓
流動性低下
が起こりやすくなります。
LABUBU市場は、ミニ流動性相場です。
9. 偽物問題
LABUBU市場で無視できないのが偽物問題です。
偽物が増えると、
- 真贋コスト上昇
- 市場信頼低下
- 取引速度低下
- 流動性低下
が起きます。
その結果、資金は、
証明可能個体
へ集中します。
未開封、正規購入履歴、レシート、証明書、信頼できる販売元が重要になります。
10. 今後残る個体
強い個体
- 初期モデル
- シリアル入り
- 数量限定
- 大型MEGA
- 著名コラボ
- 未開封
- 来歴証明あり
- 真贋確認しやすい個体
弱い個体
- 通常量産品
- 再販可能品
- SNSバズ依存
- 箱なし
- タグなし
- 真贋不透明
- 流通量が多い個体
市場が成熟すると、価格差はさらに広がります。
11. 転売市場の未来
短期転売の期待値は、かなり低下しています。
理由は、
- 増産
- 再販
- 手数料
- 偽物
- 相場崩壊速度
- 競争参加者の増加
が重いからです。
短期転売で利益を出すには、
- 即売却
- 海外販路
- 真贋知識
- 初速勝負
- 仕入れ価格の優位性
が必要になります。
初心者が後追いで参入するほど、期待値は悪化しやすい市場です。
12. 日本市場の特殊性
日本は、海外トレンドの最終到達点になりやすい市場です。
よくある流れは、
海外熱狂
↓
日本流入
↓
国内高値づかみ
↓
供給増
↓
プレミア崩壊
です。
特に危険なのは、
- 限定風の量産品
- 再販前提の限定品
- SNSだけで人気化した個体
- 真贋確認が難しい二次流通品
です。
日本市場では「かわいい」「流行っている」で買われやすい一方、ブームが一巡した後の買い手が薄くなるリスクがあります。
13. 投資対象としての評価
LABUBUは、金、株、債券ではありません。
本質は、
ミーム化した文化資産
です。
最大リスクは、
流動性消失
です。
買い手が消えると、価格はゆっくり下がるのではなく、
100
↓
70
↓
40
↓
10
のように一気に崩れることがあります。
これはNFTやトレカ、スニーカー転売市場でも繰り返されてきた現象です。
14. 今後の最大分岐
LABUBUが生き残るかどうかは、
文化化できるか
にかかっています。
一瞬で終わるIPは、
- 流行消費
- 一過性ハイプ
- 投機終了
で終わります。
生き残るIPは、
- 長期コミュニティ
- 世界観
- 世代継承
- 感情接続
- 物語展開
を持ちます。
LABUBUは今、分岐点にいます。
15. 実戦戦略
短期
短期転売はかなり難化しています。
狙える条件は、
- 超限定
- 即流動化
- 中国販路
- 東南アジア販路
- 初動勝負
- 真贋確認済み
です。
後追いで通常品を買う戦略は、リスクが高くなっています。
中長期
中長期で狙うなら、
代替不可能個体
のみです。
条件は、
- 初期
- シリアル
- 大型
- コラボ
- 来歴
- 未開封
- 証明書
です。
「安いから買う」ではなく、「なぜ将来も意味が残るのか」を説明できる個体だけが候補になります。
最終結論
LABUBU市場は今、
総ハイプ時代
を終え、
金融化IP市場の成熟・選別フェーズ
へ入りつつあります。
今後は、
- 一般品のコモディティ化
- 超希少個体への資金集中
- 転売期待値の低下
- 真贋証明の重要性上昇
- 文化資産としての選別
が進む可能性が高い。
つまり戦略としては、
LABUBUなら何でも買う
ではなく、
意味・歴史・証明性を持つ個体だけを保有する
時代へ移行しています。
LABUBUは終わったのではありません。
ただし、誰でも勝てるハイプ相場は終わりつつあります。
ここからは、IPの熱量ではなく、文化として残る理由を見極める市場です。