GPUの数が増えるほど、GPU同士、ラック同士、データセンター同士をつなぐ通信量も増える。AIインフラ相場は、GPUだけでは完結しない。800G、1.6T、さらにその先の高速光接続がなければ、大規模AIクラスターは動かない。

ここが、易中天3社の株価が急騰している本質である。

ただし、日本人投資家がこのテーマを見る場合、かなり冷静さも必要だ。米中デカップリング、A株特有のボラティリティ、1.6T量産後の価格競争、CPOやシリコンフォトニクスへの技術シフト。このあたりを見ずに「AIのツルハシ銘柄」とだけ読むと、たぶん危ない。

なぜ光モジュールがAIコア銘柄になったのか

AIデータセンターでは、GPUの性能だけを見ても不十分である。

H100、H200、Blackwell、さらに次世代GPUへ進むほど、計算能力は上がる。ただ、その計算能力を使い切るには、サーバー間で大量のデータを低遅延でやり取りする必要がある。

そこで必要になるのが高速光モジュールだ。

GPUが増える
↓
AIクラスターが巨大化する
↓
サーバー間・ラック間通信が詰まりやすくなる
↓
800G / 1.6T光モジュール需要が増える
↓
光モジュール企業の利益が跳ねる

NVIDIA決算を見ると、AIインフラ投資はまだ止まっていない。むしろBlackwell世代でネットワーク側の重要度はさらに上がっている。

市場が易中天を高く評価するのは、この構造が見えているからだ。AI半導体の主役はGPUだが、光モジュールはそのGPUを束ねる血管に近い。少し言いすぎに聞こえるかもしれないが、今のAIデータセンターでは「計算」と同じくらい「接続」が相場テーマになっている。

3社の業績はすでにかなり強い

足元の数字も強い。

2026年1〜3月期を見ると、3社ともAIデータセンター需要を受けて高成長を続けている。

銘柄2026年Q1売上高2026年Q1純利益市場の見方
中际旭创194.96億元57.35億元800G・1.6Tの本命。規模と利益率が別格
新易盛83.38億元27.80億元伸び率が大きく、海外データセンター向けの期待が強い
天孚通信13.30億元4.92億元上流部品で、勝ち組モジュールメーカー全体に乗れる

ここで注目したいのは、利益率である。

普通の製造業なら、売上が伸びても利益率はそこまで上がらない。しかし高速光モジュールは、800Gや1.6Tのような先端品ほど技術難度が高く、製品ミックスが改善しやすい。

中际旭创の2026年Q1は、売上高が前年同期比192%増、純利益が262%増。新易盛も2025年通期で売上高248.42億元、純利益95.32億元まで伸びた。天孚通信は規模こそ小さいが、2025年通期で売上高51.63億元、純利益20.17億元という高収益体質を維持している。

この数字を見ると、市場が「部品株」としてではなく「AIインフラ株」として評価するのは自然である。

なぜ市場プレミアムが高いのか

易中天にプレミアムがついている理由は、大きく3つある。

1つ目は、AIクラスターの通信ボトルネックである。

生成AIの学習・推論では、GPUを大量に並べるだけでは足りない。大規模クラスターでは、ネットワーク帯域、消費電力、遅延、発熱が制約になる。800G以上の光モジュールは、この制約を緩和するための中核部品になる。

2つ目は、最終需要が中国内需だけではないことだ。

3社の成長は、中国国内の通信投資だけで説明できない。北米クラウド、AIサーバー、GPUサプライチェーンの投資が大きく効いている。直接顧客名をどこまで開示しているかは会社ごとに異なるが、最終需要として米国ビッグテックのAI CAPEXと強く結びついていることは、市場がかなり意識している。

3つ目は、利益率の高さである。

先端光モジュールは、いまのところ単純な組み立て品ではない。光学設計、熱設計、歩留まり、部材調達、顧客認証が絡むため、量産できる企業が限られる。だから、少なくとも現時点では価格競争よりも供給能力が評価されている。

ここがA株の投資家心理を刺激している。

「AIなのに、中国株で、しかも業績が本当に出ている」。この組み合わせは強い。強すぎるからこそ、逆回転も速い。

2027年予測:強気シナリオはかなり先まで織り込む

2027年に向けた市場の議論は、かなり強気である。

ただし、ここは注意したい。2027年予想は証券会社ごとにレンジが広く、コンセンサスというより「強気シナリオの綱引き」に近い。

銘柄2027年に市場が見ている論点見方
中际旭创純利益200億〜250億元超を維持できるか2026年Q1の年率換算ではすでに高水準。1.6Tの数量と単価が焦点
新易盛純利益200億〜400億元台まで見方が分かれる旧来の60〜80億元レンジは、2025年実績95.32億元と比べても保守的すぎる
天孚通信純利益40億〜50億元台への拡大期待モジュール本体より上流部品で、勝者分散型のポジション

特に新易盛は、見方を更新する必要がある。

「2027年純利益60億〜80億元」という数字は、過去の前提なら使えたかもしれない。しかし同社は2025年通期で純利益95.32億元、2026年Q1だけで27.80億元を出している。現在の市場が織り込んでいるのは、もっと大きい利益ステージである。

とはいえ、強気予想をそのまま一直線に引くのも危うい。

2026年から2027年にかけて1.6Tが量産拡大すれば、売上と利益は伸びる。一方で、量産が進めば競争も強まる。価格低下、歩留まり、部材不足、顧客認証の遅れ、為替、関税。どれか一つで利益率の前提は崩れる。

光モジュール株は、夢が大きい。だから予想数字も大きくなる。ここは市場の熱量をそのまま飲み込まない方がいい。

日本人投資家が見るべき3つのリスク

米中デカップリング

最大のリスクは、やはり米中関係である。

易中天の魅力は、北米AI投資の恩恵を受けることにある。だがそれは同時に、米国の規制リスクを受けるという意味でもある。

高性能GPUだけでなく、AIデータセンターの通信部品まで規制対象が広がる可能性はゼロではない。中国資本の企業が米国のAIインフラにどこまで関与できるのか。この線引きは、政治で急に変わる。

各社は東南アジア生産やグローバル供給網の整備を進めている。天孚通信は蘇州・シンガポールの二本社体制、江西・タイの生産拠点を打ち出している。ただ、工場を移しても資本と技術の出自リスクが完全に消えるわけではない。

技術シフトとコモディティ化

2つ目は、技術変化の速さである。

いまは800G、1.6Tが主役だが、次には3.2T、CPO、シリコンフォトニクス、光I/Oといった新しいテーマが来る。現在のプラガブル光モジュールがしばらく主役を続ける可能性は高いが、永遠ではない。

さらに量産が進むほど、価格競争も出てくる。中国メーカーが強い業界では、供給能力が増えた瞬間に利益率が下がることが珍しくない。

このテーマは、成長率だけでなく粗利益率の維持がかなり重要になる。

A株のバリュエーションと値動き

3つ目は、A株グロース市場の値動きである。

中国A株の創業板は、期待が乗ると一気に買われる。逆に、少しでも「期待が高すぎる」と見られると、好決算でも売られる。

易中天はまさにその状態に近い。

業績は強い。テーマも強い。だが、株価はすでにかなり先の利益を見に行っている。2027年の利益を先取りして買われている銘柄は、四半期決算で少しでも粗利益率や受注コメントが弱いと、普通に急落する。

日本株や米国株の感覚で入ると、値幅に驚くはずだ。

投資戦略

易中天は、AIゴールドラッシュの「ツルハシ銘柄」としてはかなり魅力的である。

ただし、買い方はかなり難しい。

短期では、NVIDIA決算、北米クラウドのCAPEX計画、800G・1.6Tの出荷コメント、米中規制ヘッドラインに反応しやすい。決算の数字が良くても、株価が先に走っていれば材料出尽くしになる。

中期では、見るべきポイントは次の4つだ。

チェック項目見方
1.6Tの量産進捗2026〜2027年の利益成長の中心
粗利益率価格競争が始まっていないかを見る
海外生産米中リスクをどこまで下げられるか
北米AI CAPEX最終需要が続くかどうかの本丸

個人的には、3社を同じように見るより、役割を分けた方がいい。

中际旭创は、本命大型株。新易盛は、利益弾性が大きい成長株。天孚通信は、上流部品でテーマ全体に乗る銘柄。この違いを理解しておくと、ポジションの取り方も変わる。

一番やってはいけないのは、急騰後に「AIだからまだ上がる」とだけ考えて飛びつくことだ。易中天は強いテーマだが、すでに多くの投資家が同じことを考えている。

まとめ

中国の光モジュール3社「易中天」は、AIデータセンター相場の中で本当に重要な位置にいる。

GPU需要が強いほど、ネットワーク側の高速化も必要になる。800G、1.6Tの普及は、NVIDIAや北米クラウドのAI投資とかなり強く結びついている。

中际旭创、新易盛、天孚通信の業績はすでに強い。だから市場が高く評価するのは自然だ。

ただし、2027年予想はかなり先まで織り込んでいる。米中デカップリング、技術シフト、価格競争、A株の過熱感。この4つは常に見ておく必要がある。

易中天は、AIインフラ相場のかなり魅力的な銘柄群である。同時に、期待値が高すぎる銘柄群でもある。

投資するなら、決算直後の熱狂よりも、1.6Tの量産進捗、粗利益率、海外生産、北米CAPEXを確認しながら、急落局面で丁寧に拾う方が実務的だと思う。

参考情報

本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。