一風堂のブランドは強いが、今は利益率を見られている
力の源HDの強みは、国内で育てた「一風堂」を海外へ持ち出せることです。
海外ではラーメンが単なるファストフードではなく、日本食、クールジャパン、都市型外食の一部として受け止められやすい。価格帯も国内より高く設定しやすく、うまく回ればブランドの横展開が効きます。
ただ、2026年3月期の数字を見ると、話はそこまできれいではありません。
売上は伸びています。店舗数も、ライセンス形態を含めて国内173店舗、海外144店舗、合計317店舗まで広がりました。一方で、営業利益率は2025年3月期の8.2%から2026年3月期は6.4%へ低下しています。
市場がここで見ているのは、ブランドの知名度ではなく、価格改定と店舗運営の効率化でどこまで利益率を戻せるかです。
力の源HDのビジネスモデル
力の源HDは、大きく見ると3つの事業で構成されています。
| 事業 | 内容 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 国内店舗運営 | 一風堂、RAMEN EXPRESS、因幡うどん、名島亭、楓・奏など | インバウンド、価格改定、人件費、省人化 |
| 海外店舗運営 | IPPUDOを中心に直営・ライセンス展開 | 高単価化、現地コスト、家賃、人材 |
| 商品販売 | 麺、スープ、調味料、おみやげ商品、B2B販売 | 工場稼働、販路拡大、ブランド商品の外販 |
国内は、一風堂だけでなく、因幡うどん、名島亭、M&Aで加わった「楓」「奏」なども持ちます。ただし、投資家がまず見るのは国内ブランド数の多さより、既存店の客数、客単価、店舗利益率です。
海外は成長の柱です。2026年3月期はスペインやインドネシアで新規展開がありました。ただ、会社側も海外ではインフレ、原材料価格、人件費、家賃、消費マインドの低下を挙げています。海外だから自動的に高利益、という読み方は少し危うい。
商品販売は、一風堂ブランドを店舗外へ広げる事業です。国内B2Bや海外量販店向けの展開は面白いものの、現時点では会社全体の評価を大きく変えるほどの利益柱というより、ブランド接点を増やす補助線として見たいところです。
2027年3月期予想:売上は伸びる、利益はまだ慎重
2027年3月期の会社予想は次の通りです。
| 項目 | 2026年3月期実績 | 2027年3月期会社予想 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 362.61億円 | 401.25億円 | +10.7% |
| 営業利益 | 23.25億円 | 25.95億円 | +11.6% |
| 経常利益 | 25.82億円 | 26.38億円 | +2.2% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 18.29億円 | 18.07億円 | -1.2% |
| 1株配当 | 20円 | 24円 | +4円 |
売上高400億円台という見た目は悪くありません。営業利益も増益計画です。
ただし、経常利益の伸びは小さく、最終利益は微減益予想。ここが力の源HDのやや悩ましいところです。トップラインは伸びるが、利益の伸びがまだ素直についてこない。
市場が強気になり切れない理由はここにあります。
外食産業の追い風と逆風
外食株を見るうえで、2026年から2027年にかけての論点はかなりはっきりしています。
| 論点 | 力の源HDへの影響 |
|---|---|
| インバウンド | 都市部・観光地の一風堂には追い風 |
| 円安 | 訪日需要にはプラス、輸入コストにはマイナス |
| 人件費上昇 | 国内外で利益率を圧迫 |
| 原材料高 | 豚肉、小麦、コメ、エネルギーがコスト要因 |
| 価格改定 | 客離れを抑えながら単価を上げられるか |
| 省人化・DX | チャーハン自動調理器などで人時生産性を改善できるか |
ギフトHDの決算短信でも、外食産業では人件費、物流費、エネルギーコスト、コメや豚肉などの食材価格が重いテーマとして挙げられています。これは力の源HDだけの問題ではありません。
差が出るのは、値上げしても客数が落ちにくいブランド力と、店舗オペレーションの強さです。
力の源HDは一風堂のブランド力があります。ただ、2026年3月期はそのブランド力があっても営業利益率が下がった。ここから2027年にかけては、値上げ、商品設計、省人化、海外店舗の見直しが数字で確認されるかが勝負になります。
ラーメン主要3社の比較
株価指標は2026年5月22日終値ベースです。PER、PBR、時価総額は市場データ表示値を使い、業績数値は各社の直近開示を基にしています。
| 指標 | 力の源HD(3561) | ギフトHD(9279) | 丸千代山岡家(3399) |
|---|---|---|---|
| 主力ブランド | 一風堂 | 町田商店、豚山、元祖油堂 | ラーメン山岡家 |
| 上場市場 | 東証プライム | 東証プライム | 東証スタンダード |
| 決算期 | 3月 | 10月 | 1月 |
| 株価 | 1,447円 | 4,190円 | 2,957円 |
| 時価総額 | 約439億円 | 約840億円 | 約595億円 |
| 予想PER | 24.1倍 | 32.2倍 | 16.1倍 |
| 実績PBR | 3.60倍 | 7.54倍 | 5.75倍 |
| 前期売上高 | 362.61億円 | 358.78億円 | 430.00億円 |
| 今期予想売上高 | 401.25億円 | 430.00億円 | 483.61億円 |
| 前期営業利益率 | 6.4% | 9.4% | 10.9% |
| 今期予想営業利益率 | 6.5% | 10.2% | 10.7% |
| 予想配当利回り | 1.66% | 0.62% | 1.01% |
| 経営モデル | 国内直営、海外直営・ライセンス、商品販売 | 直営店とプロデュース店、製造供給力 | 完全直営、店内調理、24時間営業中心 |
この比較で目立つのは、力の源HDの営業利益率の低さです。
売上規模では3社とも400億円台が見えるところに来ています。ところが利益率では、ギフトHDと山岡家が10%前後を出しているのに対し、力の源HDは6%台です。
PERだけを見ると、力の源HDはギフトHDより低く、山岡家より高い。つまり市場は、力の源HDを高成長プレミアム銘柄としてはギフトほど買っておらず、かといって山岡家ほど割安にも置いていません。
かなり中途半端に見られている、と言った方が近いかもしれません。
ギフトHDと山岡家はなぜ強く見えるのか
ギフトHDは、直営店だけでなくプロデュース店向けに麺やスープを供給するモデルを持ちます。店舗数の拡大と製造供給のレバレッジが効きやすく、2026年10月期は売上高430億円、営業利益44億円まで引き上げた会社予想になっています。
その分、株価はすでに高い期待を織り込んでいます。予想PER32倍、PBR7倍台。月次が強い間は許容されますが、出店ペースや既存店に鈍化が出ると、株価の反応はかなり荒くなりやすい水準です。
山岡家は別の強さです。全店直営、店内調理、24時間営業を基本とし、郊外ロードサイド色が強い。コストが重そうなモデルに見えますが、2026年1月期は売上高430.00億円、営業利益46.78億円、既存店売上高46カ月連続前年超えという強い数字を出しました。
しかも2027年1月期の会社予想は売上高483.61億円、営業利益51.84億円。予想PERは16倍前後です。東証スタンダード上場という見られ方の差はありますが、足元の業績に対するバリュエーションは3社で最も軽く見えます。
力の源HDの投資目線:見直しには利益率の回復が必要
力の源HDに投資妙味が出るとすれば、ポイントは海外店舗数そのものではなく、利益率の回復です。
確認したいのは次の5つです。
| 確認項目 | なぜ見るか |
|---|---|
| 国内既存店の客数・客単価 | 値上げ後の需要耐性を見る |
| 海外店舗の採算 | 高単価でもコスト増で利益が残るかを見る |
| 営業利益率 | 6%台から7〜8%台へ戻せるか |
| 店舗数と出店地域 | 無理な出店で固定費を増やしていないか |
| 商品販売事業 | 店舗外収益として育つか |
個人的には、力の源HDは「売上成長はまだあるが、利益の質を確認したい銘柄」です。
一風堂のブランド、海外展開、インバウンドという材料は分かりやすい。ただ、いまの株価水準では、単に海外店舗が増えました、売上が伸びました、だけでは少し弱い。市場はもう一段、営業利益率の戻りを見たいはずです。
株価1,447円で見ると何が織り込まれているか
2026年5月22日終値1,447円、予想PER24倍前後という水準は、外食株として極端に安いとは言えません。
ただ、ギフトHDの32倍台と比べると、力の源HDには「利益率が戻るなら見直せる余地」はあります。
反対に、営業利益率が6%台のままなら、山岡家のような高収益・低PER銘柄と比較され、上値は重くなりやすい。ここはかなり現実的な見方です。
増配方針は支えになります。2027年3月期は年間24円予想で、配当利回りは1.66%程度。高配当株ではありませんが、株主還元を少しずつ強めている点は悪くありません。
とはいえ、力の源HDを見る主役は配当ではなく、やはり営業利益率です。
まとめ
力の源HDは、一風堂という強いブランドと海外展開力を持つ会社です。国内のインバウンド需要、海外の日本食人気、商品販売の広がりを考えると、売上成長の絵はまだ描けます。
ただ、2026年3月期は営業減益で、営業利益率も6.4%まで低下しました。2027年3月期は増収営業増益予想ですが、経常利益の伸びは小さく、純利益は微減益計画です。
ギフトHDは成長期待を高PERで買われ、山岡家は高収益なのにPER16倍前後で残っています。その間で、力の源HDは「海外成長株」として再評価されるのか、「利益率が低い外食株」として見られるのかの分かれ道にいます。
次に見るべきは、月次の客数・客単価、国内外の価格改定の浸透、そして四半期ごとの営業利益率です。売上400億円台は通過点。株価の本番は、利益率が戻るかどうかで決まりそうです。
※本記事は公開情報をもとにした投資教育・分析メモです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身のリスク許容度に応じて行ってください。
出典・参考
- 力の源ホールディングス「2026年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」
- Yahoo!ファイナンス「力の源ホールディングス 株価時系列」
- ギフトホールディングス「2026年10月期 第1四半期決算短信」
- ギフトホールディングス「連結業績予想の修正に関するお知らせ」
- IRBANK「ギフトHD(9279)の株価チャート」
- 丸千代山岡家「2026年1月期 決算短信〔日本基準〕(非連結)」
- IRBANK「丸千代山岡家(3399)の株価チャート」