事業概要

ANAホールディングスは、日本最大級の航空グループで、フルサービスのANAとLCCのPeachを中核に、航空輸送を中心とした周辺事業を持つ持株会社である。

収益の中心は航空輸送事業で、2026年3月期通期のセグメント売上高は2兆3,132億円、営業利益は2,219億円だった。全社売上高2兆5,392億円に占める比重が大きく、旅客需要と貨物需要、そして燃油や人件費の変動が全社業績を左右しやすい構造にある。

航空輸送以外では、空港地上支援や機内食などの航空関連、旅行サービス、商社・小売、その他事業を展開する。ただし利益面では航空輸送への依存がなお大きい。

直近材料(3ヶ月)

2026年4月30日、ANAホールディングスは2026年3月期通期決算を公表した。売上高、営業利益、純利益はいずれも過去最高となり、期末配当を前回計画比で5円引き上げ、年間65円とした。

2026年4月8日には2月の輸送実績を開示した。国際線旅客数は73万9,900人で前年同月比9.6%増、国内線旅客数は305万8,375人で同2.4%増だった。国内線は有効座席キロが前年同月比1.9%減のなかで旅客数を伸ばしており、需給運営の柔軟さがうかがえる。

外部環境では、日本政府観光局が2026年4月15日に公表した3月訪日外客数が361万8,900人となり、3月として過去最高を更新した。インバウンド需要が航空各社の旅客需要を支える地合いはなお続いている。

最近の業績

指標内容
売上高2兆5,392億円、前年同期比12.3%増
営業利益2,174億円、同10.6%増
経常利益2,196億円、同9.8%増
純利益1,690億円、同10.5%増
年間配当65円、前回計画から5円引き上げ

中核の航空輸送事業は、売上高が2兆3,132億円で前年同期比12.4%増、営業利益は2,219億円で同11.5%増だった。国際線と国内線の旅客需要に加え、日本貨物航空の連結が増収要因になった。

一方で、航空関連事業は売上高3616億円と増収ながら、営業利益は14億円まで縮小した。人件費など費用増の影響が強く、売上成長がそのまま利益に結びついていない。旅行サービス事業は売上高653億円、営業損益は1億円弱の赤字で、需要回復が見えても収益性はまだ弱い。

通期実績だけを見ると好調だが、利益の質をみるうえでは主力の航空輸送以外の採算改善がなお課題として残っている。

何が業績を動かしたか

1. 国際線の需要回復が続いた

会社側は欧州路線の伸びや新規就航路線の寄与を通期増収の柱としている。2月輸送実績でも国際線旅客数は前年同月比9.6%増、搭乗率は85.5%まで上がっており、訪日需要と日本発レジャー需要の両方を取り込めている。

2. 国内線も大きく崩れていない

国内線は、ピーク時に増便しつつ閑散期には小型機材を使うなど需給調整を進めた。2月輸送実績では、旅客数が前年同月比2.4%増、搭乗率は81.1%だった。有効座席キロが前年を下回るなかで旅客数を伸ばしたため、単純な数量拡大よりも運航効率の改善が意味を持つ。

3. 日本貨物航空の連結が売上を押し上げた

今期は日本貨物航空の連結寄与が加わり、航空輸送事業の増収要因になった。貨物単体では自動車部品や電子商取引向け需要の波があるものの、ANA本体とNCAを一体で運営することで路線や機材配分の選択肢が広がる点は中期的なプラス要因になりうる。

4. コストは確実に重くなっている

好需要があっても、燃油費と人件費の上昇圧力は無視できない。実際に2027年3月期会社計画は増収でも営業利益が大きく減る見通しで、会社は中東情勢に伴う燃油コスト上昇の影響を織り込んでいる。つまり、足元は需要不安よりコスト不安の方が利益の振れ幅を作りやすい。

リスク

リスク内容
燃油価格中東情勢次第で燃油費が想定以上に上振れする可能性
需給インバウンドや国内レジャー需要が鈍化すると搭乗率が低下しやすい
人件費人員確保や処遇改善で固定費が上がりやすい
統合効果日本貨物航空の統合やブランド再編の効果が想定を下回る可能性
周辺事業採算航空関連や旅行サービスの利益改善が遅れる可能性

今後の見方

会社計画では2027年3月期の売上高を2兆7,700億円と見込む一方、営業利益は1,500億円、経常利益は1,370億円、純利益は960億円を予想する。過去最高の売上更新を見込んでも利益は減る前提であり、市場が重視しやすいのは「需要が強いか」よりも「コスト上昇をどこまで吸収できるか」に移っている。

短期では、月次の国際線・国内線輸送実績、燃油市況、中東情勢の落ち着き方が焦点になる。訪日需要が続けば売上面は支えられやすいが、利益面では燃油費と人件費の管理がより重要になる。

中期では、日本貨物航空の統合効果、ANAとPeachを軸にしたブランド再編の収益性改善、周辺事業の採算回復が評価ポイントになる。2026年3月期の通期実績は強かったが、株価の評価軸はすでに次の年度の利益率維持へ移りつつあるとみるのが自然だ。


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