公の伝達と、自分から送信する行為
著作権法23条2項は、公衆送信される著作物を受信装置で公に伝達する権利を定めています。中継を受信し、店舗の画面で来店客に見せる場面が検討対象です。中継画面を自分のSNSへ再配信する行為は、客に画面を見せる行為とは異なり、自分から送信する権利の問題も生じます。
また、保存済みの動画をスクリーンへ映す行為は「上映」の問題になります。録画する段階の複製と、その録画を客に見せる段階も別です。一度視聴できた映像であっても、すべての使い方が許されるわけではありません。
放送等には38条3項の例外がある
放送、有線放送、特定入力型自動公衆送信、一定の放送同時配信等については、非営利かつ観客から料金を受けない公の伝達に関する例外があります。放送が終了した後に開始される配信は、ここでいう放送同時配信等から除かれます。同項には通常の家庭用受信装置を用いる場合の規定もあり、店舗だから著作権法上必ず許可が必要と一括する説明は正確ではありません。
一方、この例外をネット上のあらゆる動画へ広げることもできません。対象となる送信の類型や機器、利用方法を区別する必要があります。大型設備での観戦イベント、見逃し動画、独自のインターネット配信を、通常のテレビ受信と同じ条件として扱う判断はできません。
法律上の例外と契約上の許可は別に読む
有料サービスに加入している事実だけでは、店舗やイベントでの利用条件は分かりません。個人向け契約、店舗向け契約、配信対象の地域、公開視聴の条件が別に定められる場合があります。無料公開されている映像でも同様です。
たとえばYouTubeの日本語利用規約には、個人的で非営利の視聴用途と、不特定または多数の人のための上映等に関する制限があります。プラットフォームの規約と、投稿者や番組の権利者が許可した利用範囲を分けて読む必要があります。動画が公式に公開されていることと、店内で流す契約上の許可があることは同じではありません。
同じ試合でも、質問に必要な条件が変わる
仮に同じ野球の試合を扱うとしても、家庭用テレビで放送を受信する案、個人契約のネット動画を大型スクリーンへ映す案、録画を後日上映する案では検討する条項が変わります。「入場無料」だけでは、機器、送信の種類、録画の有無、契約の問題は解消しません。
大会名、受信元、機器、観客の範囲、観戦に対する料金、利用する日時をそろえると、サービス窓口や権利者への問い合わせも具体的になります。ワールドカップや野球大会の放映権ビジネスを読む際も、映像制作・送信をめぐる権利や契約と、視聴者に許される利用を分けることで、権利料と許諾範囲を混同せずに捉えられます。
出典
参考資料の確認日:2026年10月23日。