NISAで損をしたので、次は取り戻せると思った
非課税で持つつもりだった株式が下がり、空いている枠で買い増せば次こそ戻せると考える場合があります。ギャンブラーの誤謬は、独立した結果に、過去の偏りを次が取り返す関係を読み込む判断です。NISAを使っても、損が続いた回数が将来の利益を呼ぶ仕組みにはなりません。
また、実際の株価は公平なコインと同じ条件ではありません。回数だけで反発を断定することも、常に同じ勝率を置くことも避ける必要があります。
同じ株式の買い増しを読む独自例
NISAの成長投資枠で、架空の対象株式を一株2,000円で100株買ったとします。その後1,600円へ下がった時に、同じ100株を追加すると、取得代金の合計は36万円、200株の平均取得単価は1,800円です。
ここから価格がさらに1,200円へ下がれば、時価は24万円、取得代金との差は12万円の損失です。追加しなかった場合、元の100株の時価は12万円で、20万円の取得代金に対する損失は8万円です。追加購入した100株の損失4万円が上乗せされています。費用や税、配当は除きます。
この同じ価格経路での比較では、平均単価は下がっても、負う金額は増えています。価格がこの経路をたどる確率や、いずれ戻る時期を示したものではありません。対象要件と制度枠に余裕がある設定で、買い増しの推奨でもありません。
制度の枠は、値下がりの保険ではない
2026年10月23日時点で、NISAは対象商品の譲渡益や一定の配当等を非課税とする制度です。口座内の売却損失は、課税口座の利益との損益通算や繰越控除に使えません。含み損があることと、売却して確定した損失も区別します。
残りの枠を使える場合でも、その年のうちに全て投資する義務はありません。非課税枠の余裕と、家計がさらに下落を負える余裕は別です。同じ銘柄を増やせば、その会社の業績や信用への依存も増えます。
買い増す理由を、前の損失から切り離す
追加を考える時は、今の事業の見通しと価格について新たに何を知ったかを残せます。元の買値に戻したいという希望だけなら、将来の利益を説明する材料は増えていません。必要資金を投じる期限も、会社側の回復を早めません。
Rabinの研究を、NISA商品の反発を予測する手法として扱うことはできません。回数、平均取得単価、税の扱い、将来の収益の条件を分けると、口座の表示を変えることと投資の根拠を見直すことの違いが読み取れます。
出典
- Matthew Rabin『Inference by Believers in the Law of Small Numbers』(University of California, Berkeley Working Paper E00-282、2000年公開原稿。要旨・導入部の推論モデル)
- 日本証券業協会「NISAのよくある質問」
- 国税庁『No.1535 NISA制度』(非課税の対象と損失の扱い)
出典確認日:2026年10月23日。