一回の費用が小さければ、気にしなくてよいか
取引を繰り返すと、一回ごとの費用が小さいため全体へも大きく影響しないと感じる場合があります。しかし、利益が出る取引にも損失になる取引にも費用は関わり、その後の運用に残る資金も変わります。取引前後の成果を分ける必要があります。
このページは、投資中毒という俗称を、目的から離れて売買を増やしていないかを振り返る入口として扱います。個人の心理や医学的な状態を判定する基準ではありません。
長い期間の差を置く独自の仮例
最初の100万円を20年間運用し、入出金なしと置きます。比較のため、税引前・費用控除後の年率を一方は3%、もう一方は2%で固定すると、20年後はそれぞれ約180.6万円と148.6万円で、差は約32万円です。
費用前の成果は同じで、その差が費用だけから生じると置いた独自の設定です。実際の商品の利回り、取引費用、将来成績を示していません。実際の収益は一定ではなく、費用の付き方も商品や取引ごとに違います。
この計算は、回数を減らせば3%を得られるという意味ではありません。費用を引いた後に何が残るかを、同じ期間で比べる必要がある例です。
無料の手数料と、すべての負担がないこと
手数料が無料の条件でも、売りと買いの価格差や、見た価格と実際の約定価格の差が生じる場合があります。課税口座なら、税の発生する時点も資金へ関わります。画面に手数料ゼロとあっても、取引の全条件が同じにはなりません。
注文の成立も、価格や数量などの条件によります。想定した価格で何度でも自由に売買できたとして計算すれば、現実より有利な成績になり得ます。
過去の研究を、現在の一律の回数へ変えない
BarberとOdeanの研究は、過去の米国の個人の株式投資を、費用を含めて調べています。現在の日本の全投資家に、何回までなら良いという線を示す資料ではありません。
長期で持つ方針も、事業が悪化したときまで売らない理由になるとは限りません。必要な取引と、目的から離れた取引を分けるために、何が変わり、どんな費用で保有を変えたかを残せます。
努力を売買回数で測るより、費用後の資金と当初の目的を同じ期間で追うと、長く続ける計画へどう影響したかが読めます。
出典
- Barber / Odean「Trading Is Hazardous to Your Wealth」(2000年、著者所属大学公開版)
- FINRA「4 Myths About Online Trading」(2017年)
- 金融庁「資産形成の基本」
参考資料の確認日:2026年10月23日。