年収が高い人ほど、使える余裕も大きいか
年収や資産残高を比べると、数字の大きい人の方が安心して暮らせるように感じる場合があります。しかし、借入、毎年の支出、使える現金の時期などが違えば、同じ順位にはなりません。本人が何を望む生活かも、数字だけからは分かりません。
お金と幸福の関係を読む際は、収入という流れ、資産という残高、暮らしの評価を区別することが出発点です。
二つの架空の家計をそろえる仮例
説明用に、次の二つの家計を置きます。実際の統計でも、幸福を測った実験でもありません。年間支出は生活の消費などで、借入元本の返済や資産の購入は含めない単純な設定です。
| 比較する数字 | Aの家計 | Bの家計 |
|---|---|---|
| 年間の手取り収入 | 600万円 | 450万円 |
| 年間の支出 | 590万円 | 400万円 |
| その差 | 10万円 | 50万円 |
| 資産残高 | 1,000万円 | 300万円 |
| 借入残高 | 900万円 | ゼロ |
| 資産から借入を引いた額 | 100万円 | 300万円 |
Aは収入と資産の総額が大きくても、この設定で毎年残る額と純資産はBより小さくなります。ただし、これでBの幸福度が高いと証明したわけではありません。何を比べるかで順位が違うことを示す計算です。
所得と幸福の研究は、個人への約束ではない
2023年のKillingsworthらの再分析は、所得と感情面の幸福の関係が全員で一様ではないことを扱っています。一つの年収を、誰にでも共通する満足の上限として当てはめることはできません。
さらに、2024年のRohrerとWenzの論考は、横断的な関連から個人の所得増の効果を読む際の仮定を検討しています。高所得の人の評価が高いという関連だけで、自分の収入を増やした場合の変化が同じと決まるわけではありません。所得の研究を資産残高の研究へ置き換えることもできません。
生活で何を選べるかへ戻る
CFPBは金融面の良好な状態を、現在と将来の安心や、生活の選択の自由を含めて説明しています。ただし、その質問票や評価をここで再現したものではありません。
家計を比べるなら、支払いを続けられるか、急な支出へ対応できるか、自分の望むことへどの資金を使えるかを別々に読めます。他人の残高を一つのゴールにするより、数字の中身と自分の希望をつなげる材料になります。
出典
- Killingsworth / Kahneman / Mellers「Income and emotional well-being: A conflict resolved」(2023年、公開要旨)
- Rohrer / Wenz「Inappropriate causal assumptions underlie Killingsworth, Kahneman, and Mellers’ conclusions」(2024年)
- 米消費者金融保護局 CFPB「Why financial well-being?」
参考資料の確認日:2026年10月23日。