「長期だから」の前後で理由が変わっていないか
購入直後は短期の値上がりを期待していたのに、下落後は「長期主義だから売らない」と説明する。保有期間が変わった理由が、新しい事業情報なのか、損失を認めたくない気持ちなのかで、次に調べることは違います。
倫理・社会哲学のlongtermismは、現在の行動を評価する際に遠い将来の人々への影響を重く見る立場です。株を何年持つかという運用方法の名前ではありません。日常的な「長期で考える姿勢」とも、議論の対象をそろえて使います。
一つの保有判断を記録へ戻す
仮に、新しい販売地域の開拓を理由に株を買い、その後、販売に必要な認可を失った会社を考えます。市場全体の下落で株価が下がった場合と違い、購入理由の一部に直接関わる変化です。
記録には、購入時に期待したこと、今回の公表で変わった事実、まだ分からない影響を分けます。再取得までの期間や代替販路を会社の資料で調べると、「待てば戻る」という気持ちだけでは足りない論点が見えます。この仮例から即売却が正解だと決まるわけでもありません。現在の時価で残る資産と、家計の使用期限を含めて比較します。
判断後の株価だけで当時の調査を採点しないことも役立ちます。売却後に反発しても、当時読めた情報で見通しを修正したかは別に振り返れます。
遠い将来を考えるほど確実になるわけではない
Thorstadの研究は、長期の効果が近い影響を上回って判断を決めるという強い立場について、適用範囲を制限する条件を検討しています。個人の投資成果や損切りの成功率を実証した研究ではありません。
投資でここから使える問いは、見通す期間が長くなった時に不確実性まで小さく扱っていないか、です。競争、財務、資金需要が変われば当初の予想は外れます。将来の重要性を認めることと、自分がその将来を正しく予測できることを分けると、信念の強さで情報の不足を埋めずに済みます。
出典
- Global Priorities Institute『A Research Agenda』Version 2.1(2020年10月、本文7–8ページ)
- David Thorstad『The scope of longtermism』(2021年、要旨と検討対象の範囲)
- 金融庁「資産形成の基本」
出典確認日:2026年10月23日。