長く続ければ取り返せるとは限らない
ギャンブラーの誤謬は、独立な出来事について、続いた偏りの反対が次に出やすくなると考える誤りです。投資を長く続ける場面でも、「損した年が続いた分、次は大きく上がる」「回数を重ねれば必ずプラスになる」といった説明には注意が必要です。
長期に運用する方針には、事業の利益成長や配当、分散など、それぞれの根拠があります。一方、自分が損をした履歴だけを利益回復の根拠にはできません。過去の損失を埋める義務が、保有先や市場にあるわけではありません。
半分勝てても費用があれば平均損益は変わる
架空の取引で、毎回独立に50%の確率で1,000円を得て、50%で1,000円を失うと仮定します。費用がなければ一回の損益の期待値はゼロです。期待値は、可能な結果をそれぞれの確率で重み付けした平均を表し、実際の一回の結果を予測する額ではありません。
毎回100円の費用がかかるなら、勝ちの手残りは900円、負けは1,100円です。期待値は900円×50%−1,100円×50%=マイナス100円となります。100回なら期待される合計はマイナス1万円です。実際に必ず1万円を失うという意味ではありませんが、回数だけ増やしても、費用による不利が自動で解消される計算ではありません。
割合の回復と金額の回復は別に計算する
別の仮想例では、資産100万円が20%下がって80万円となった後、20%上がっても96万円です。元の100万円へ戻るには80万円から25%上がる必要があります。上昇率と下落率を一回ずつ同じにしただけでは、減った元本は戻りません。税金や入出金を除いた計算です。
この例から、次の年に25%上がると予測できるわけでもありません。回復に必要な率を計算する目的は、資金が減った状態で取り戻す難しさを把握することです。損を埋めるためだけに高い収益率を求め、危険な集中や過大な借入へ方針を変えていないか点検します。
保有する理由と続けられる条件を調べる
長期の計画を見直す際は、会社なら利益や財務、投資信託なら組入資産や費用など、これから収益が生まれる根拠を確認します。見込みが変わらない値下がりと、収益源自体が弱くなった値下がりを区別します。保有期間の長さだけで両者を同じにしないことです。
同時に、近い将来に使うお金を分け、下落している間も生活費のために売らずに済むかを確かめます。続けることと、見直さず放置することは違います。「いつか戻る」ではなく、保有を続ける条件とやめる条件を更新し、費用や投入額も含めて記録します。投資の長期化は、損失の補償を待つ仕組みではありません。