一社の値下げが、ほかの家計や企業にも届く
売れないので価格を下げる。利益が減ったので賞与や設備投資を抑える。その影響を受けた家計や取引先も支出を減らす。このつながりが続けば、最初の需要不足をさらに強める場合があります。本記事では、この相互作用をデフレ循環と呼びます。
物価下落と経済活動の弱まりが互いを強める悪循環は、デフレスパイラルとも呼ばれます。ただし、物価が下がれば必ずその状態に入るという意味ではありません。デフレ自体は幅広い価格の持続的な下落を指し、景気の上下や悪循環の強さとは区別します。
また、一定の年数で底から回復する周期法則でもありません。「循環」という言葉から、下がれば自動的に上がると読むのは誤りです。
値下げと数量減が重なった商売の仮例
架空の商品を1個1,000円で1,000個販売し、1個当たりの変動費を600円、固定費を30万円とします。売上100万円から変動費60万円と固定費30万円を引いた利益は10万円です。
次の期は単価を950円に下げても販売数量が950個に減り、費用条件は変わらないと仮定します。売上は90万2,500円、変動費は57万円なので、利益は3万2,500円です。税金や利息は省き、数量が減る分の変動費だけが下がる計算です。
この会社が利益減に対応して発注や賞与を減らせば、その支払いを受ける側の購買力へ影響します。ただし、どれだけ支出を減らすかは会社の現金、借入れ、経営判断次第です。利益減がそのまま同額の賃金減になると決まっているわけではありません。
費用削減の中身で、次の影響は変わる
効率化によって単位当たりの費用も下げられるなら、値下げしても利益を保つ余地があります。供給力の改善に伴う値下げと、売れないために利幅を削る値下げは、区別が必要です。内閣府の2001年の分析も、供給側、需要側、金融面の要因を分けています。
投資家が見る項目は、単価と数量に加え、粗利益率、設備投資、雇用・人件費、取引先への支払い、営業キャッシュフローです。現金が十分なら一時的な減益に耐えられる場合がありますが、返済や仕入れ支払いが迫る会社は同じ減益でも負担が違います。
資金調達が難しくなれば、本来採算の合う投資まで見送る場合があります。価格だけでなく、銀行借入れや手元資金を見る理由はここにあります。
株価の安さと、回復できる事業を分ける
低成長でも繰り返し必要とされる商品や、費用を調整できる事業は、収益を守れるかを確認する対象になります。ただし、業種名だけで利益が安定すると決めず、決算の数量や利幅で確かめます。売上が落ち続ける会社の低い株価は、事業の縮小を反映している可能性もあります。
悪循環が弱まったかを考える際も、物価指数一つだけでは足りません。賃金、消費、企業の投資、金融の状態が同じ方向を向くかを点検します。過去資料の説明をそのまま現在の売買指示にせず、仕組みを確認する項目へ置き換える使い方が向いています。