米国株の外国税額控除とは
米国株の配当金を受け取ると、まず米国側で税金が引かれます。
たとえば配当が100ドルなら、米国で10ドルが源泉徴収され、残りの90ドルが日本の証券口座に入る、というイメージです。
さらに日本でも配当課税がかかるため、米国株の配当は二重課税になりやすい構造があります。
ここで使えるのが外国税額控除です。
外国税額控除は、海外で支払った所得税に相当する税金を、日本側の所得税額などから一定範囲で差し引ける制度です。
「米国で引かれた税金が必ず全額戻る」というより、日本側の税額と控除限度額の範囲で調整する制度、と考える方が実務に近いです。
なぜ米国株投資で重要なのか
米国株投資では、長期になるほど配当課税の差が効いてきます。
少額のうちは気にならなくても、配当収入が増えると、米国で引かれる税額も大きくなります。
| 年間配当 | 米国で引かれる10%の目安 |
|---|---|
| 10万円 | 1万円 |
| 50万円 | 5万円 |
| 100万円 | 10万円 |
配当を再投資する人ほど、税引後の手取りは地味に効きます。
特に影響が出やすいのは、高配当ETFを課税口座で持っているケースです。
- VYM
- HDV
- SPYD
こうしたETFは配当が魅力ですが、受け取る配当が増えるほど税金の確認も必要になります。
外国税額控除の流れ
1. 米国で源泉徴収される
日本の居住者が米国株の配当を受け取る場合、日米租税条約により、米国側の源泉税率は多くの場合10%になります。
通常は証券会社側で処理されるため、投資家が米国に直接申告して10%にする、という場面は多くありません。
ただし、銘柄や商品、口座、証券会社の扱いによって異なる場合があります。実際の税額は、配当金計算書や年間取引報告書で確認します。
2. 日本でも課税される
課税口座で受け取る配当には、日本でも税金がかかります。
上場株式等の配当では、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%が目安です。
つまり、米国で源泉徴収されたあと、日本側でも課税されるため、何もしないと税引後の手取りが下がりやすくなります。
3. 確定申告で控除を申請する
外国税額控除を使うには、原則として確定申告が必要です。
確定申告で外国税額控除を入力すると、米国で源泉徴収された税金の一部または全部が、日本側の税額から控除される場合があります。
必要になることが多い資料は、次のようなものです。
- 特定口座年間取引報告書
- 外国株式等の配当金計算書、支払通知書
- 外国税額控除に関する明細
- 本人確認、マイナンバー関連の書類
証券会社によって資料名は少し違います。確定申告前に、年間取引報告書と配当明細をダウンロードしておくと作業が楽です。
NISAではどうなるか
ここは初心者がつまずきやすいところです。
NISA口座では、日本側の配当課税は非課税です。
ただし、米国株や米国ETFの配当にかかる米国側の源泉税は、基本的に残ります。
| 口座 | 日本税 | 米国税 |
|---|---|---|
| 特定口座 | あり | あり |
| NISA | なし | あり |
NISAでは日本側の税金が非課税になるため、外国税額控除で差し引く日本側の税額がありません。
そのため、「NISAだから完全に税金ゼロ」と考えると少しズレます。日本側は非課税でも、外国株の現地課税は残る場合があります。
外国税額控除が向いている人
外国税額控除を検討しやすいのは、次のような人です。
- 課税口座で米国株や米国ETFを持っている
- 配当収入がある程度大きい
- 高配当ETFを中心に運用している
- 確定申告の手間を受け入れられる
逆に、配当が少額なら、申告作業に見合うかは人によります。
NISA中心で運用している人も、外国税額控除の出番は限られます。
税金を細かく最適化する前に、投資額、商品選び、長期で続けられる設計を整える方が効果的なことも多いです。
初心者のよくある失敗
NISAなら完全非課税だと思う
NISAは、日本側の税金を非課税にする制度です。
外国株や海外ETFでは、現地で源泉徴収される税金が残る場合があります。
米国株なら、米国側の10%を意識しておきます。
確定申告しない
課税口座で米国株配当を受け取っているのに確定申告をしないと、外国税額控除を使う機会を逃すことがあります。
もちろん、還付額は所得や税額、控除限度額によって変わります。
「配当が増えてきたら一度確認する」くらいの距離感で十分です。
配当利回りだけで選ぶ
高配当ほど、税金の影響を受けやすくなります。
表面利回りが4%でも、税引後では手取りが下がります。高配当ETFや個別高配当株を見るときは、利回りだけでなく、税引後リターン、為替、減配リスクまでセットで考えたいところです。
投資での実務的な考え方
初心者は、いきなり税金の最適化から入らなくても大丈夫です。
まずは、次の順番の方が失敗しにくいです。
- 生活防衛資金を分ける
- 新NISAで積立投資を始める
- 低コストの投資信託やETFで分散する
- 長期で続ける
- 配当が増えてきたら税金を確認する
代表的な米国株ETFには、次のようなものがあります。
- VOO
- VT
- VTI
ただし、ETFが良いか投資信託が良いかは、口座、手数料、税金、再投資のしやすさで変わります。
配当を受け取る設計にするのか、分配金を出さない投資信託で効率を重視するのか。ここは好みだけでなく、税引後の手取りにも関わります。
図解
まとめ
外国税額控除は、海外で支払った税金を日本側の税額から調整する制度です。
米国株や米国ETFでは、配当に米国側の源泉税がかかり、その後に日本側でも課税されることがあります。
課税口座で高配当ETFや米国高配当株を持つ人は、外国税額控除を知っておく価値があります。
ただし初心者は、最初から税金対策ばかりを気にしすぎなくても大丈夫です。
まずは積立、長期保有、分散投資。配当が増えてきたら、確定申告と外国税額控除を確認する。
この順番で十分です。
税制は個別事情によって扱いが変わります。実際に申告する場合は、国税庁、証券会社、税理士などの案内も確認してください。
参考
- 国税庁, No.1240 居住者に係る外国税額控除
- 国税庁, No.1535 NISA制度
- 金融庁, NISA特設ウェブサイト
- 財務省, 日米租税条約のポイント