NISAとは
NISAは「少額投資非課税制度」の愛称です。
日本に住む個人が、一定の投資枠の中で株式や投資信託などを買い、その運用益を非課税にできる制度です。
通常、投資で利益が出ると税金がかかります。
たとえば、課税口座で100万円の利益が出た場合、税率を20.315%で考えると、税金は約20万円です。手元に残るのは約80万円になります。
NISA口座で同じ100万円の利益が出た場合、その利益は非課税です。
| 口座 | 利益 | 税金の目安 | 手取りの目安 |
|---|---|---|---|
| 課税口座 | 100万円 | 約20.3万円 | 約79.7万円 |
| NISA口座 | 100万円 | 0円 | 100万円 |
この差は、投資期間が長くなるほど効いてきます。
ただし、ここで大事なのは、NISAそのものが利益を生むわけではないことです。
NISAは投資商品ではありません。投資信託や株式を入れるための「非課税の器」と考えると分かりやすいです。
なぜNISAが作られたのか
NISAは、個人の長期的な資産形成を後押しするために作られた制度です。
日本では長く「貯蓄から投資へ」という政策が進められてきました。
預金だけでは資産を増やしにくい低金利環境が続き、老後資金や教育費などを自分で準備する必要性も高まっています。
そこで、投資で得た利益にかかる税金を非課税にし、家計が長期投資を始めやすくする仕組みとしてNISAが整備されました。
とはいえ、制度の目的は「国が利益を保証すること」ではありません。
税制面で投資しやすくする制度であり、実際の成果は、何を買うか、どのくらい続けるか、どれだけリスクを取るかで変わります。
新NISAの2つの投資枠
2024年からの新NISAには、2つの投資枠があります。
| 投資枠 | 年間投資上限 | 主な対象 | 使い方のイメージ |
|---|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 長期・積立・分散に向いた投資信託 | 毎月コツコツ積み立てる |
| 成長投資枠 | 240万円 | 上場株式、ETF、投資信託など | 追加投資や個別株にも使う |
両方を併用すると、年間で最大360万円まで投資できます。
また、生涯の非課税保有限度額は1,800万円です。このうち、成長投資枠だけで使える上限は1,200万円とされています。
つみたて投資枠
つみたて投資枠は、長期・積立・分散投資向けの枠です。
対象商品は、金融庁の基準を満たした投資信託が中心です。毎月一定額を積み立てる使い方と相性がよく、投資初心者が最初に使いやすい枠です。
たとえば、全世界株式インデックスファンド、米国株式インデックスファンド、バランス型ファンドなどが候補になります。
もちろん、対象商品なら何でも安全という意味ではありません。株式型の投資信託は、世界的な株安が起きれば大きく値下がりします。
それでも、個別株1銘柄に集中するよりは、広く分散された商品を少額から積み立てやすいのが特徴です。
成長投資枠
成長投資枠は、対象商品の幅が広い枠です。
国内株式、海外株式、ETF、REIT、投資信託などを購入できます。ただし、整理・監理銘柄や長期投資に向きにくい一部商品など、対象外の商品もあります。
自由度が高い分、使い方でリスクは大きく変わります。
たとえば、成長投資枠を低コストの投資信託で使えば、つみたて投資枠の延長のように使えます。一方で、話題の個別株だけに集中すれば、値動きはかなり大きくなります。
成長投資枠は「攻めの枠」と見られがちですが、必ず攻めに使う必要はありません。家計や目的に合わせて、分散投資の補助として使ってもよい枠です。
NISAの主なメリット
利益が非課税になる
最大のメリットは、投資利益に税金がかからないことです。
売却益だけでなく、条件を満たす配当金や分配金も非課税になります。
長期で投資を続けると、利益に税金がかからない効果は大きくなります。特に、運用益を再投資する場合、税金で引かれる分が少ないほど複利の効果を活かしやすくなります。
非課税保有期間が無期限
旧制度では、非課税で保有できる期間に期限がありました。
2024年からの新NISAでは、非課税保有期間が無期限になっています。
これにより、期限を気にして売却する必要が薄くなり、老後資金づくりのような長期投資に使いやすくなりました。
生涯投資枠が大きい
新NISAの非課税保有限度額は、総額1,800万円です。
毎年少しずつ積み立てる人にとっても、まとまった余裕資金を段階的に投資したい人にとっても、長期で使える大きな枠になっています。
さらに、商品を売却した場合は、翌年以降に取得金額ベースで枠が復活します。
100万円で買った商品を売却
↓
翌年以降、100万円分の非課税保有限度額が復活
売却時の時価ではなく、買ったときの金額で枠が戻る点は覚えておきたいところです。
NISAのデメリットと注意点
元本保証ではない
NISAは税制優遇制度であり、利益を保証する制度ではありません。
投資信託や株式が値下がりすれば、NISA口座でも損失は出ます。
ここでつまずきやすいのは、「国の制度だから安全」と考えてしまうことです。
制度としてのNISAは便利です。ただ、NISA口座の中で買う商品は、普通の投資商品です。値動きもありますし、元本割れもあります。
損益通算や繰越控除ができない
NISA口座の損失は、課税口座の利益と損益通算できません。
たとえば、次のようなケースです。
NISA口座:30万円の損失
特定口座:30万円の利益
通常の課税口座同士なら、損失と利益を相殺できる場合があります。
しかし、NISA口座の損失は税務上なかったものとして扱われるため、特定口座の利益と相殺できません。損失の繰越控除もできません。
NISAは利益が出たときに強い制度です。損失が出たときの税務メリットはありません。
配当金の受取方式に注意が必要
上場株式の配当金をNISAで非課税にするには、証券会社を通じて配当金を受け取る方式を選ぶ必要があります。
一般的には「株式数比例配分方式」と呼ばれる受取方式です。
銀行口座で直接受け取る方式などを選んでいると、NISA口座で保有していても配当金が課税扱いになる場合があります。
投資信託だけを積み立てる人は意識しにくいですが、NISAで個別株やETFを買う人は、購入前に証券会社の設定を確認しておきましょう。
初心者は何を買えばいいのか
初心者の場合、最初から個別株を大きく買うより、低コストで分散された投資信託から始めるケースが多いです。
代表的な候補は、次のような商品です。
| 商品タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 全世界株式インデックスファンド | 世界中の株式に広く分散しやすい |
| 米国株式インデックスファンド | 米国株式市場に集中して投資する |
| バランス型ファンド | 株式と債券などを組み合わせる |
全世界株式なら万能、米国株なら必ず有利、という話ではありません。
全世界株式も株式市場全体が下がれば下落します。米国株式は米国市場への集中度が高く、為替の影響も受けます。バランス型は値動きが抑えられる一方、株式だけのファンドより上昇力が弱くなることもあります。
大切なのは、商品の名前ではなく、自分が続けられるリスクかどうかです。
初心者なら、まず次の3つを決めてから商品を選ぶと迷いにくくなります。
| 決めること | 考え方 |
|---|---|
| 投資目的 | 老後資金、教育費、余裕資金づくりなど |
| 投資期間 | 10年以上、20年以上など |
| 毎月の投資額 | 下落しても続けられる金額 |
特に投資額は大事です。
NISAの枠が大きいからといって、無理に使い切る必要はありません。生活防衛資金や近い将来使うお金まで投資に回すと、下落時に売らされやすくなります。
NISAでよくある誤解
「NISAなら損しない」
これは誤解です。
NISAで買っても、投資信託や株式の価格は上下します。30%下がることもありますし、個別株ならもっと大きく下がることもあります。
NISAは、利益が出たときの税金を軽くする制度です。損失を防ぐ制度ではありません。
「非課税枠は早く埋めないと損」
余裕資金が十分にある人なら、早めに枠を使う選択もあります。
ただ、初心者が家計を圧迫してまで枠を埋めにいく必要はありません。
投資は続けられる金額で始める方が現実的です。月1万円でも、月3万円でも、まず値動きに慣れて、家計に合うペースを作ることが大切です。
「成長投資枠では個別株を買うべき」
成長投資枠で個別株を買うことはできます。
でも、買うべきと決まっているわけではありません。
成長投資枠でも投資信託やETFを使えます。つみたて投資枠だけでは足りない分を、成長投資枠で同じような分散商品に投資する方法もあります。
制度の名前に引っ張られず、自分の目的に合う使い方を選ぶ方が大事です。
投資家が理解すべき本質
NISAの本質は、投資商品ではなく「税金を減らすための口座」です。
同じ商品を買う場合でも、課税口座で買うか、NISA口座で買うかによって、将来の手取り額が変わることがあります。
ただし、非課税の効果が出るのは、あくまで利益が出たときです。
利益が出る
↓
その利益にかかる税金が非課税になる
この順番を逆にしないことです。
「NISAだから買う」のではなく、「長期で持ちたい商品があり、その置き場所としてNISAを使う」と考える方が失敗しにくくなります。
まとめ
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益が非課税になる制度です。
2024年からの新NISAでは、非課税保有期間が無期限になり、つみたて投資枠と成長投資枠を併用できるようになりました。
2026年6月15日時点の主なポイントは、次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| つみたて投資枠 | 年120万円 |
| 成長投資枠 | 年240万円 |
| 年間投資枠の合計 | 年360万円 |
| 非課税保有限度額 | 1,800万円 |
| 成長投資枠の上限 | 1,200万円 |
| 非課税保有期間 | 無期限 |
NISAはとても使いやすい制度です。
ただし、元本保証ではなく、損益通算もできません。個別株の配当を非課税にしたい場合は、配当金の受取方式も確認が必要です。
投資で大事なのは、短期的な値動きを当てることではありません。
NISAという非課税制度を活用しながら、家計に無理のない金額で、長期・積立・分散投資を続けること。そこが、資産形成の第一歩になります。
出典・参考資料
- 金融庁, NISAを知る:NISA特設ウェブサイト
- 金融庁, 新しいNISA
- 金融庁, つみたて投資枠対象商品
- 国税庁, No.1535 NISA制度
- 確認日: 2026-06-15