まず結論
正味受取利息とは、金融機関が資金運用で受け取った利息から、資金調達のために支払った利息を差し引いた金額です。英語では Net Interest Income と呼ばれ、NII と略されることもあります。
式はシンプルです。
正味受取利息 = 受取利息 - 支払利息
銀行は、預金などで集めたお金を企業や個人への貸出、国債などの有価証券で運用します。そこで得る利息が受取利息です。反対に、預金者へ払う利息や、社債などで資金を集めるための利息が支払利息です。
具体例
たとえば、ある銀行の利息収支が次のようだったとします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 貸出金の利息収入 | 120億円 |
| 債券などの利息収入 | 30億円 |
| 預金者への利息支払い | 40億円 |
| 社債などの利息支払い | 10億円 |
| 正味受取利息 | 100億円 |
計算は、受け取る側の利息150億円から、支払う側の利息50億円を引いて100億円です。
ここでつまずきやすいのは、「利息収入が増えたから銀行の利益も同じだけ増える」と見てしまうことです。実際には、預金金利や市場からの調達コストも上がるため、差し引き後の正味受取利息で見る必要があります。
なぜ銀行株で見られるのか
銀行の収益は大きく、利息で稼ぐ部分と、手数料・信託・証券・カードなどの非金利収益に分けて考えられます。正味受取利息は、このうち利息で稼ぐ部分の中心です。
正味受取利息が増えていれば、貸出残高が増えた、貸出金利が上がった、有価証券運用の利回りが改善した、などの変化が考えられます。ただし、それだけで銀行全体が好調とは言い切れません。貸倒れに備える費用、債券価格の下落、海外事業の損益、経費の増減も利益に影響します。
金利上昇との関係
金利が上がる局面では、銀行は貸出金利や運用利回りを上げやすくなります。支払う預金金利の上昇がゆっくりなら、受取利息の増加が支払利息の増加を上回り、正味受取利息が伸びることがあります。
ただ、金利上昇がいつも銀行に都合よく働くわけではありません。預金者がより高い金利を求めれば預金コストは上がります。企業や個人の借入需要が鈍れば、貸出残高が伸びにくくなります。さらに、金利上昇で保有債券の評価損が意識される場面もあります。
銀行株を見るときは、「金利が上がったから追い風」で止めず、受取利息、支払利息、貸出残高、信用コストを並べて見るほうが実態に近づきます。
銘柄を見るときの使い方
決算資料で正味受取利息を見るときは、前年同期比で増えているかだけでなく、増え方の中身を確認します。
| 見る項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 正味受取利息の推移 | 本業の利息収支が伸びているか |
| 貸出残高 | 金利だけでなく取引量も増えているか |
| 支払利息 | 預金金利や調達コストが重くなっていないか |
| 信用コスト | 貸倒れリスクが利益を削っていないか |
| 非金利収益 | 手数料など別の収益源もあるか |
ひとつの指標だけで判断しないことが大切です。正味受取利息が伸びていても、信用コストが急増すれば最終利益は伸びにくくなります。反対に、利息収支が横ばいでも、手数料収入や経費改善で利益が支えられる場合もあります。
まとめ
正味受取利息は、銀行が利息ビジネスでどれだけ稼いだかを示す基本指標です。計算式は「受取利息 - 支払利息」で、銀行の本業を見る入口になります。
ただし、金利上昇、貸出残高、預金コスト、信用コストは一緒に動きます。銀行株を分析するときは、正味受取利息の増減を出発点にしつつ、なぜ増えたのか、他の費用で相殺されていないかまで確認すると、決算の読み間違いを減らしやすくなります。