まず結論
総悲観は、単に株価が大きく下がった状態ではありません。
普段なら好決算の企業は買われ、業績の悪い企業は売られます。ところが悲観が強くなると、企業ごとの差より「これ以上損をしたくない」という心理が前に出ます。好業績株や財務の健全な企業まで売られるのは、そのためです。
こういう相場で自分なら、ニュースの暗さよりニュースに対する株価の反応を先に見ます。
悪材料が出るたびに安値を更新するなら、まだ売りたい参加者が多い。反対に、悪いニュースが続いているのに前回安値を割らなくなれば、少なくとも売り圧力に変化が出ている可能性があります。
仕組み
総悲観は、
悪材料 → 株価下落 → 含み損拡大 → 損切り・換金 → さらに下落
という流れで強まります。
途中からは「悪材料が株価を下げる」のではなく、株価が下がっていること自体が次の不安材料になるのが厄介です。
信用取引では追証や建玉整理が起きます。機関投資家も、価格が安いと思っていてもファンドの解約やリスク管理のために売らなければならないことがあります。
つまり暴落時には、安いと思っていても売る人がいるわけです。
だから「割安になった=すぐ反発する」とは限りません。
総悲観はどう見える?
公式な判定基準はありません。
見るなら、指数の下落率だけでなく市場の中身です。
騰落銘柄数
指数が下がっていても、一部の大型株だけが原因なら市場全体が総悲観とは限りません。
反対に、ほぼ全業種が下落し、好決算株やディフェンシブ株まで売られているなら、銘柄選別より換金が優先されている可能性があります。
VIX
VIXは市場不安が強まると上昇しやすいため「恐怖指数」と呼ばれます。
ただ、自分なら優先順位はそれほど高く置きません。
VIXが高いまま株価がさらに下落することもあるため、「VIXが○以上だから底」という使い方より、市場がどれほど大きな値動きを警戒しているかを見る補助材料として使います。
悪材料への反応
ここが一番見たいところです。
悲観が深まる途中では、悪材料で大きく下がる一方、好材料が出ても上昇が続かなくなります。
ところが下落が進むと、景気指標も決算見通しも悪いのに株価が前回安値を割らないことがあります。
ニュースが良くなったのではありません。その悪材料を理由に売ろうとする圧力が以前より弱くなったということです。
底値確定ではありませんが、相場の変化を見る材料にはなります。
SNSの悲観と「売り切った」は別
SNSが悲観一色でも、市場参加者が実際に株を売り切ったとは限りません。
口では弱気でも、信用買い残が大量に残っていることがあります。
日本株なら、こういう場面では信用評価損益率や信用買い残、投資主体別売買を見ます。含み損が膨らんでいるのに買い残が高水準なら、まだ整理されていないポジションが残っている可能性があります。
SNS上の悲観と、実際のポジションとしての悲観は別物です。
「株価が下がった」と「割安」は別
暴落時にはPERも注意が必要です。
PERは、
株価 ÷ 1株利益
です。
株価の「P」は市場で先に下がります。一方、「E」にあたる利益予想は、決算や会社側の業績修正を待って後から下がることがあります。
特に景気敏感株では、株価が景気悪化を先に織り込んでいるのに、会社計画や市場予想にはまだ十分反映されていないことがあります。
その時点ではPERが低下して割安に見えても、数カ月後に利益予想が切り下がれば印象は変わります。
心理による下落か、企業価値の悪化か
市場全体の換金売りなら、業績や財務がそれほど悪化していない企業まで売られることがあります。
一方、利益予想の下方修正、受注減少、資金調達コスト上昇、債務問題などが続いているなら、株価下落には企業価値の悪化という理由があります。
さらに、株価と景気の底は同じ時期になるとは限りません。
景気指標や決算がまだ悪い最中でも、「半年後には悪化が止まりそうだ」と市場が考えれば株価だけ先に反発することがあります。逆に、足元の業績が好調でも、先行き悪化を織り込んで株価が先に下がることもあります。
悪材料が残っているのに株価が下がらなくなる現象を見る意味は、ここにあります。
見え方のポイント
自分なら、おおむね次の順番で見ます。
- 悪材料への株価反応
- 騰落銘柄数と業種の広がり
- 信用評価損益率などの需給
- 利益予想の下方修正
- VIXなどのボラティリティ
全部を細かく追う必要はありません。
好決算でも売られるなら弱い。悪材料でも安値を割らなくなれば、売り方に変化が出ている。そこに信用需給と利益予想を重ねて考えると、市場心理だけの下落なのか、業績悪化まで進んでいるのかを分けやすくなります。
注意点
「みんな悲観しているから逆に買い」は、それだけでは弱い投資理由です。
強い悲観の後に大きな上昇相場が始まった例はありますが、市場は景気や決算の改善を確認してから動くとは限りません。むしろ、実体経済がまだ悪い段階で将来の改善期待を先に織り込み、株価だけ反発することがあります。
反対に、「もう十分下がった」と感じた地点からさらに大きく下落することもあります。
そのため、総悲観局面で買うなら「ここが底か」より、ここからさらに下がっても持ち続けられる量かを考えた方が実戦的です。
底値を当てる必要はありません。判断を間違えたときに次の一手を残しておく方が、暴落相場では扱いやすくなります。
使い方
総悲観を売買シグナルとして単独で使うより、市場の変化を確認する材料として使います。
確認したいのは、
- 悪材料への反応が変わったか
- 幅広い銘柄がまだ売られているか
- 信用需給の整理が進んでいるか
- 利益予想の下方修正がどこまで進んだか
- さらに下落しても持てるポジションか
です。
「総悲観だから一括で買う」のではなく、最初の判断が間違っていた場合にも追加の判断余地を残します。
総悲観を当てることより、総悲観が想像以上に長引いても資金管理を崩さないことの方が重要です。
まとめ
総悲観とは、悲観的なニュースが増えた状態ではなく、市場参加者の行動そのものがリスク回避へ大きく傾いた状態です。
見るべきなのはニュースの本数ではなく、そのニュースに株価がどう反応しているかです。
悪材料のたびに安値を更新するなら、まだ悲観が価格に入り続けています。反対に、悪材料が残っているのに安値を割らなくなれば、売り圧力に変化が出ている可能性があります。
ただし、そこで「底」と決めつけず、利益予想や信用需給も確認します。暴落直後は株価だけ先に下がり、利益予想の下方修正が後から追いつくこともあるためです。
悲観がどこまで価格に織り込まれ、まだ何が織り込まれていないのかを見る。
総悲観を投資判断に使うなら、この視点が一番実用的です。
出典
- Investor.gov「Don’t Panic, Plan It!」
- Investor.gov「Diversify Your Investments」
- Investor.gov「Is It Time to Rebalance Your Investment Portfolio?」
- Federal Reserve Bank of St. Louis / CBOE「CBOE Volatility Index: VIX」