まず結論
建設業の人手不足は、賃金上昇だけの問題ではありません。
人が足りなくなると、
人手不足 ↓ 賃金・外注費の上昇 ↓ 工期の長期化 ↓ 工事費の上昇 ↓ 住宅・修繕・インフラコストへ波及
という流れが起こる可能性があります。
一方、「人が足りないなら建設会社が高く請求できるため儲かる」という単純な話でもありません。
増えたコストを工事価格へどこまで転嫁できるかによって、企業ごとの利益に大きな差が生まれます。
人手不足が起こす4つの変化
1) 賃金・外注費の上昇
技能者を確保しにくくなれば、企業には賃金や待遇を改善する圧力がかかります。
自社だけで必要な人員を確保できなければ、協力会社や外注先の確保も重要になります。
ただし、建設業界全体で人手が不足していれば、外注すれば簡単に解決するわけではありません。
結果として、自社の人件費だけでなく、外注単価も上昇する可能性があります。
2) 工期の長期化
人員を十分に配置できなければ、予定していた工程を進めにくくなります。
工期が長引けば、
- 現場管理費
- 仮設設備費
- 人員配置コスト
- 資金回収までの期間
などにも影響します。
つまり、人手不足は「人件費」だけでなく、時間そのものをコストに変えることがあります。
3) 住宅・修繕費への影響
建設会社側で増えたコストを工事価格へ転嫁すれば、住宅を建てる側や修繕を依頼する側にも影響します。
たとえば、
- 新築住宅の建築費
- リフォーム費
- マンションの大規模修繕費
- 設備交換費
などです。
ただし、建設費が上昇した分がそのまま住宅価格や賃料へ転嫁されるとは限りません。
住宅需要や地域の所得水準、金利、不動産市況なども価格を左右するためです。
4) インフラ維持コストの増加
道路、橋、トンネル、上下水道などのインフラは、古くなれば点検・補修・更新が必要になります。
ところが、必要な工事が増えても施工する人が不足すれば、
工事需要はあるのに施工能力が足りない
という問題が起こります。
人件費や工事単価だけでなく、限られた施工能力をどこへ優先配分するかも重要になります。
「人手不足=必ず儲かる」ではない理由
建設会社の採算は売上だけでは決まりません。
人手不足によって、
- 人件費上昇
- 外注費上昇
- 工期長期化
- 資材費上昇
- 受注機会の取りこぼし
が起こる可能性があります。
たとえば100億円で受注した工事でも、契約後に人件費や資材費が大きく上昇し、その分を発注者へ転嫁できなければ利益率は低下します。
逆に、人件費が上昇しても新しい契約価格へ素早く反映できる企業なら、採算を守りやすくなります。
そのため重要なのは、
受注が増えているか
だけではなく、
受注した仕事で利益を確保できているか
です。
家計と投資の接続
家計では、人手不足による影響が新築住宅だけでなく、リフォームや修繕など身近なところに現れる可能性があります。
「家を買う予定はないから関係ない」とは限りません。
マンションであれば大規模修繕、一戸建てなら外壁・屋根・設備交換など、住宅を維持するためにも建設・施工人材が必要です。
一方、投資では建設会社を見る際に、
- 受注高・受注残高
- 完成工事総利益率
- 人件費・外注費
- 工事採算
- 価格転嫁
- 施工能力
などを確認します。
特に、
受注残高は増えているのに利益率が低下している
場合は注意が必要です。
仕事はあるものの、人件費や資材費の上昇を十分に価格転嫁できていない可能性があります。
逆に、
受注残高増加+利益率改善
が同時に起きていれば、需要を確保しながら採算も改善している可能性があります。
まとめ
建設業の人手不足は、
賃金 ↓ 外注費 ↓ 工期 ↓ 工事費 ↓ 住宅・修繕・インフラ
へ波及する可能性があります。
ただし、人手不足そのものが建設会社の利益を増やすわけではありません。
企業を見るときに重要なのは、
「人件費が上がったか」ではなく、「増えたコストを価格へ転嫁できたか」です。
さらに、受注があっても施工する人が足りなければ、売上に変えられません。
そのため投資では、
受注残高 × 利益率 × 価格転嫁 × 施工能力
をセットで確認すると、建設業の人手不足を企業業績につなげて考えやすくなります。