モラルハザードの意味
モラルハザードは、保険や救済などの仕組みによって損失の一部を他者が負担するため、当事者の予防努力やリスクの選択が変化する問題です。「道徳がない人」という性格の話ではなく、責任と利得の分担が行動に及ぼす影響を指します。
保険に入った後に事故への注意が弱まれば、損失の一部を保険会社が負担します。金融では、経営破綻時の公的支援が当然に期待できると受け止められれば、金融機関の経営者が慎重さを欠くのではないかという懸念が生じます。日本銀行も、特別融資をあてにして金融機関が健全経営への努力を怠る問題をモラルハザードとして説明しています。
仕組みとリスクの例
モラルハザードが起きるかは、制度の設計や監督、当事者の行動によります。保険があるから必ず注意を怠る、支援制度があるから必ず無謀な投資をする、という意味ではありません。保険料、自己負担、審査、監督、経営責任などの仕組みで、過度なリスクを抑えられる場合もあります。
販売報酬の例でも、担当者が契約時の報酬を得る一方、顧客が後から負担や損失を抱える構造なら、短期売上を優先する誘因が生じる可能性があります。報酬指標や社内監督がどう設計されているかが論点です。
投資家が考えるとき
企業や制度を分析するときは、①誰がリスクを取るのか、②損失が出たとき誰が負担するのか、③利益は誰に帰属するのか、④その差を抑える仕組みはあるか、を順に見ます。
公的支援や保険を利用する主体を、モラルハザードがあると断定するのは適切ではありません。制度が果たす役割と、負担のずれが行動を変える可能性を分けて考えると、支援の利点と副作用の両方を見やすくなります。
出典
- 日本銀行「特融を発動することにより、モラルハザードを引き起こすことはありませんか?」
- 確認日:2026年10月17日。