決算サマリー
| 項目 | 当期実績 | 前年同期 | 増減率 | 会社計画 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 731.57億円 | 588.49億円 | +24.3% | 992.00億円 | 73.7% |
| 営業利益 | 196.12億円 | 174.79億円 | +12.2% | 231.00億円 | 84.9% |
| 経常利益 | 214.38億円 | 182.97億円 | +17.2% | 235.30億円 | 91.1% |
| 純利益 | 142.14億円 | 125.57億円 | +13.2% | 160.81億円 | 88.4% |
| EPS | 353.89円 | 316.21円 | +11.9% | 401.05円 | 88.2% |
売上の伸びに対して営業利益の伸びはやや抑えられた。HR Techが利益を作り、Incubationと全社費用を吸収する構図である。
セグメント
| セグメント | 売上高 | 前年同期 | 増減率 | セグメント利益 |
|---|---|---|---|---|
| HR Tech | 691.90億円 | 568.01億円 | +21.8% | 223.59億円 |
| Incubation | 39.63億円 | 19.90億円 | +99.1% | -15.58億円 |
| 調整額ほか | 0.03億円 | 0.57億円 | - | -11.89億円 |
| 連結合計 | 731.57億円 | 588.49億円 | +24.3% | 196.12億円 |
HR TechではBizReach事業の売上高が597.14億円、管理部門経費配賦前の営業利益が254.79億円となった。導入企業数は43900社以上、利用ヘッドハンター数は9400人以上、スカウト可能会員数は342万人以上まで拡大している。
HRMOS事業は売上高66.53億円、管理部門経費配賦前の営業損失0.40億円で、前年同期の1.97億円損失から赤字幅が縮小した。ARRは94.86億円、利用中企業数は10262社。Thinkings連結により利用社数が増えた一方、ARPUは前年同期末比39.3%減の77039円となっており、規模拡大と単価の見え方は分けて読む必要がある。
財務安全性
総資産は1125.24億円、純資産は823.33億円、自己資本比率は72.5%で、財務安全性は高い水準にある。現金及び預金は729.28億円と厚い。ただし、Thinkings取得に伴ってのれんは139.81億円へ増加した。第3四半期累計のキャッシュ・フロー計算書は作成されていないため、営業利益が現金収支にどこまでつながっているかは通期開示で確認したい。
定量評価
| 指標 | 直近実績 | 比較対象 | 見方 |
|---|---|---|---|
| EPS成長率 | +11.9% | 前年同期比 | 純利益の伸びは続くが、売上成長率より低い |
| 営業利益率 | 26.8% | 前年同期29.7% | 高水準だが、前年同期からは低下 |
| ROIC | 開示なし | 決算短信では未算定 | 投下資本の定義が不足するため、簡易推計は見送る |
| PER推移 | 市場データ未反映 | 別途株価確認が必要 | 会社計画EPS401.05円を基準に評価されやすい |
数字から見ると、利益率はまだ高いが、売上成長に対して営業利益率が低下した点を市場は見やすい。成長投資と買収影響をどこまで許容するかが評価の分かれ目になる。
ポジティブ要因
BizReachが主力利益を維持
BizReach事業は売上高597.14億円、管理部門経費配賦前営業利益254.79億円となった。プロフェッショナル人材領域の需要と広告宣伝活動が導入企業数・会員数の拡大につながっている。
HRMOSの赤字幅が縮小
HRMOS事業は売上高66.53億円で77.7%増、営業損失は0.40億円まで縮小した。採用、タレントマネジメント、労務給与、勤怠、経費などの範囲が広がり、SaaS型収益の厚みが増している。
財務余力が大きい
現金及び預金は729.28億円、自己資本比率は72.5%である。IncubationやM&A後の統合費用を吸収する余力はある。
リスク要因
Incubationの赤字拡大
Incubationは売上高39.63億円と99.1%増えた一方、セグメント損失は15.58億円と前年同期の11.71億円から拡大した。新規領域の成長は見えるが、利益貢献にはまだ距離がある。
のれん増加の見方
Thinkingsの子会社化により、のれんは前期末37.41億円から139.81億円へ増加した。買収後の収益貢献が想定を下回る場合、将来の減損リスクが意識される。
人材需要の循環性
BizReachは企業の求人意欲に支えられている。採用需要が鈍る局面では、スカウト活動、ヘッドハンター利用、広告投資効率に影響が出やすい。
業界動向との関連
HR Tech市場では、採用支援、人材活用、労務管理を横断するクラウド化とAI機能の実装が進んでいる。ビジョナルはBizReachの高収益を土台にHRMOSを広げる形だが、SaaS領域では機能拡張、営業投資、買収後統合が先行しやすい。売上成長だけでなく、解約率とARPUの変化を併せて見る必要がある。
株価への示唆
株価評価では、会社計画EPS401.05円をどのPERで見るかがひとつの軸になる。ただし、本記事では市場株価データを取得していないため、理論株価の算定は行わない。業績面では通期営業利益計画231.00億円に対して第3四半期累計で196.12億円まで進んでおり、利益進捗は高い。市場が上振れを織り込むには、HR Techの利益率維持、Incubation赤字のコントロール、のれん増加後の収益貢献が確認される必要がある。
今期の総括
2026年7月期第3四半期は、主力HR Techが利益を支えた決算である。売上高は24.3%増、営業利益は12.2%増で、増収増益は維持した。ただ、営業利益率は前年同期から低下し、Incubationの赤字とのれん増加も見える。高収益な採用プラットフォーム企業から、複数サービスを抱えるHR Techグループへ評価軸が移りつつある。
来期見通し
会社は2026年7月期通期予想を据え置き、売上高992.00億円、営業利益231.00億円、経常利益235.30億円、親会社株主に帰属する当期純利益160.81億円を計画している。配当予想は年間0円で変更なし。第3四半期時点の利益進捗は高いが、通期では広告宣伝、プロダクト投資、買収後統合費用の出方で営業利益率が変わる。
総合判断
総合判断は中立である。BizReachの利益創出力と財務余力は強い一方、Incubation赤字、のれん増加、HRMOSのARPU低下という確認点も残る。次回決算では、通期計画に対する着地だけでなく、HR Techの利益率、HRMOSのARRと解約率、Thinkings連結後の収益貢献を見たい。
出典
- ビジョナル「2026年7月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」、開示日: 2026-06-11
- ビジョナル「決算短信」IRライブラリー