会社概要とビジネスモデル
不動産流通システムは、REDS(レッズ)ブランドで不動産売買仲介、リフォーム・リノベーション工事を手掛ける会社だ。公式会社概要では、2025年度通期の売買取引高は412億1100万円、住宅新報社調べの主要不動産流通各社売買仲介実績で全国32位とされている。
特徴は、店舗網を大きく張る従来型の仲介会社というより、WEB反響と専門エージェントを軸にした仲介モデルにある。公式サイトでは「仲介手数料最大無料」を訴求し、企業情報ページでは宅建士資格を持つ専任エージェントがお客様の利益を追求する姿勢を打ち出している。さらに、沿革では2022年にNHKドラマ『正直不動産』へ不動産考証・取材協力したことも確認できる。
収益源は大きく2つ。不動産売買仲介業で仲介手数料を得て、付随するリフォーム工事で追加収益を狙う形だ。ただし、今回の決算を見る限り、利益の柱はあくまで不動産売買仲介業。リフォーム工事業は補完的な位置づけで、2026年12月期は人員体制の立て直しを優先する。
決算サマリー
| 項目 | 2025年12月期実績 | 前期実績 | 増減率 | 2026年12月期予想 | 予想増減率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9.28億円 | 8.05億円 | +15.2% | 9.30億円 | +0.2% |
| 営業利益 | 0.53億円 | 0.34億円 | +56.8% | 0.25億円 | -52.9% |
| 経常利益 | 0.53億円 | 0.31億円 | +71.6% | 0.25億円 | -52.8% |
| 当期純利益 | 0.57億円 | 0.12億円 | +361.0% | 0.17億円 | -69.5% |
| EPS | 420.93円 | 82.55円 | +409.9% | 146.45円 | -65.2% |
2025年12月期は、売上も利益も改善した。営業利益率は5.8%で、前期の4.2%から上がっている。もっとも、2026年12月期は売上がほぼ横ばいの一方、利益は大きく落ちる予想だ。市場が見るなら、ここは素直に「成長株」というより、上場費用を吸収しながら収益基盤を作れるかを見る局面だろう。
セグメント別の見方
| セグメント | 2025年12月期売上高 | セグメント利益 | コメント |
|---|---|---|---|
| 不動産売買仲介業 | 8.19億円 | 1.77億円 | 主力事業。広告施策、営業拠点集約、営業品質向上が寄与。 |
| リフォーム工事業 | 1.08億円 | -0.01億円 | 採算管理は改善したが、まだ利益貢献は小さい。 |
主役は明らかに不動産売買仲介業だ。売上の約88%を占め、セグメント利益もここで稼いでいる。SNSやWEBを使った広告戦略、首都圏営業拠点の集約、スカウト型採用による営業体制の安定化が効いた。
リフォーム工事業は売上こそ伸びたが、セグメント損失が残った。赤字幅は小さいものの、2026年12月期は人員体制の立て直しと施工品質の安定化を優先し、売上高60百万円(前期比-44.7%)を見込む。ここは成長ドライバーというより、仲介事業に付随する補完事業として慎重に見たい。
2026年12月期予想
2026年12月期の会社予想は、売上高930百万円、営業利益25百万円、当期純利益17百万円。売上は前期比+0.2%とほぼ横ばいだが、営業利益は半減する。
会社側は、不動産仲介事業について売上高870百万円(前期比+6.2%)を見込む。ポータルサイト経由の反響数増加、成約率の維持、東京23区内の中古マンション価格上昇を背景に、平均成約単価は前期比約4%増を想定している。
一方で、リフォーム工事業は売上高60百万円(前期比-44.7%)の計画。さらに販売費及び一般管理費は859百万円(+7.5%)まで増える見通しだ。TOKYO PRO Market上場関連費用、上場維持関連費用、支払手数料、支払報酬料が乗る。数字は良いが、上場初年度の損益は軽くない。ここを市場は見る。
財務安全性
| 項目 | 2025年12月期 | 2024年12月期 |
|---|---|---|
| 総資産 | 4.42億円 | 4.57億円 |
| 純資産 | 2.29億円 | 2.23億円 |
| 自己資本比率 | 51.9% | 48.9% |
| 現金及び預金 | 2.98億円 | 2.82億円 |
| 営業CF | +0.68億円 | +0.23億円 |
| 投資CF | -0.14億円 | -0.33億円 |
| 財務CF | -0.38億円 | +0.35億円 |
財務は小粒だが、上場時点で大きく崩れているわけではない。自己資本比率は51.9%、現金及び預金は2.98億円。営業キャッシュ・フローも68百万円のプラスだった。
気になるのは規模の小ささだ。営業利益25百万円の予想に対して、上場維持費用や人件費、広告費の振れは相対的に大きい。大企業なら吸収できる費用でも、この規模では利益率にすぐ出る。売上より利益、利益よりキャッシュ。TPM銘柄ではなおさらこの順番で見たい。
上場目的と中期目標
同社はTOKYO PRO Market上場の目的として、優秀な人材の確保、信用力・知名度の向上、経営管理体制の強化、将来的な一般市場への上場を掲げている。
開示では、今後3年以内の目標として、営業社員50名体制、仲介売上高の倍増、成約率の現状比1.25倍程度への向上、ホームページ経由の反響件数15%以上増加、当期純利益1億円の達成が示された。
この目標はかなり意欲的だ。2025年12月期の当期純利益は57百万円、2026年12月期予想は17百万円。そこから3年以内に1億円へ戻し、さらに超えていくには、仲介事業の人員拡大が単なる固定費増ではなく、成約件数と粗利に結びつく必要がある。
ポジティブ材料
主力の不動産売買仲介業が黒字をしっかり出している点は評価できる。2025年12月期の同セグメント利益は177百万円で、全社費用を差し引く前の稼ぐ力は見える。
また、同社の事業は居住用不動産の売買仲介が中心で、投資用不動産だけに寄ったモデルではない。実需の売買ニーズ、紹介案件、リピート取引を積み上げられるなら、景気循環の影響は受けつつも、一定の案件基盤を作りやすい。
リスク要因
最大のリスクは、利益の薄さと固定費の増え方だ。2026年12月期の営業利益予想は25百万円にすぎない。上場関連費用が一巡すれば戻る可能性はあるが、営業社員の増員、広告投資、内部管理体制の強化も同時に必要になる。費用が先に出る局面では、利益の見え方は鈍くなりやすい。
もう一つは流動性だ。TOKYO PRO Marketはプロ投資家向け市場であり、東証グロースやスタンダードのIPOと同じ感覚では見られない。流動性プロバイダーは指定されているが、一般市場に比べて売買機会や価格形成は限定的になりやすい。
住宅ローン金利、建築コスト、中古マンション価格の動きも無視できない。平均成約単価の上昇は売上には追い風だが、買い手の負担が増えすぎれば成約率には逆風になる。ここは不動産仲介会社らしい難しさだ。
株価への示唆
今回の決算は、上場時点の信用補完としては悪くない。2025年12月期は増収増益、営業CFもプラス、自己資本比率も5割を超えている。最低限の安心材料はある。
ただ、株価材料としては単純ではない。2026年12月期は減益予想で、しかもTPM銘柄として流動性に制約がある。短期的には「上場したから買われる」というより、上場費用をこなした後に、仲介事業の売上と利益がどこまで伸びるかを確認する局面になる。
市場はまだ完全には信用しにくい。次に見たいのは、反響数、成約率、営業社員数、仲介売上高の実績だ。ここが伸びれば、上場目的として掲げた人材採用と知名度向上が数字に変わり始めたと言える。
総合判断
総合判断は中立である。2025年12月期の実績は良い。売上高9.28億円、営業利益0.53億円、当期純利益0.57億円まで改善し、営業CFもプラスだった。上場時点の決算としては、無理に悪く見る内容ではない。
ただし、2026年12月期の減益予想は軽くない。リフォーム工事業の縮小、上場関連費用、上場維持費用が利益を押し下げる。中長期では一般市場へのステップアップ期待があるが、そこに乗るには、仲介事業の成長が費用増を上回ることを数字で見せる必要がある。
小型のTPM銘柄らしく、期待より確認が先。次の決算では、売上の伸びよりも営業利益率と営業キャッシュ・フローを見たい。
出典
本記事は、株式会社不動産流通システムが開示した上場時決算情報および上場目的の開示資料を基に作成しています。
- 株式会社不動産流通システム「東京証券取引所 TOKYO PRO Market上場に伴う当社決算情報等のお知らせ」、開示日: 2026-06-24
- 株式会社不動産流通システム「TOKYO PRO Marketへの上場目的の開示に関するお知らせ」、開示日: 2026-06-24
- 株式会社不動産流通システム 公式サイト「会社概要」「企業情報」「沿革」、確認日: 2026-06-24