決算サマリー
対象は2026年4〜9月の累計、IFRS連結。金額は億円、増減率は前年同期比。
| 項目 | 当期実績 | 前年同期 | 増減率 | 通期会社予想 | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 10,989.80億円 | 9,839.20億円 | +11.7% | 20,950億円 | 52.5% |
| 財務・法人所得税前利益(EBIT) | 701.72億円 | 1,097.07億円 | −36.0% | 1,800億円 | 39.0% |
| 税引前利益 | 633.67億円 | 1,027.89億円 | −38.4% | — | — |
| 親会社所有者帰属純利益 | 390.66億円 | 676.47億円 | −42.2% | 1,100億円 | 35.5% |
| 基本的EPS | 79.91円 | 150.11円 | −46.8% | — | — |
EBITは会社が使う財務・法人所得税前の利益指標で、営業利益とは区別する。EPSは社債型種類株式の配当と永久劣後債の利息相当額を控除して算定しており、親会社帰属利益を普通株数で単純に割った値ではない。
航空燃油費は2,856億円と前年同期比47.4%増え、約918億円の負担増となった。燃油費以外の営業費用も8.0%増。運賃単価の引き上げや貨物増収で売上を伸ばしても、費用の増加が上回った。
セグメント
売上収益は外部顧客向け、利益は調整前のセグメントEBIT。単位は億円。
| 事業 | 売上収益 | 前年同期売上収益 | EBIT | 前年同期EBIT |
|---|---|---|---|---|
| フルサービスキャリア(FSC) | 8,617.49 | 7,482.04 | 416.66 | 762.18 |
| LCC | 576.25 | 519.93 | 18.99 | 70.38 |
| マイル/金融・コマース | 786.97 | 701.76 | 222.18 | 210.89 |
| その他 | 1,009.07 | 1,135.45 | 55.98 | 64.84 |
会社開示のセグメントEBIT合計713.82億円から調整額12.10億円を差し引くと、連結EBIT701.72億円となる。個別欄の合計差は原資料の端数切捨てによる。本文の外部売上と、会社説明にある内部取引込みの事業売上は範囲が異なる。
FSCの国際線旅客収入は16.0%増えた一方、有償旅客数は3.1%減少した。増収を「旅客数の拡大」と読むのは適切でない。会社は燃油サーチャージの改定や需要に応じた販売管理による単価上昇を説明している。国際貨物郵便収入も43.7%増加した。
LCCは増収でもEBITが約51億円減少した。航空2事業の減益額は合わせて約397億円。マイル/金融・コマースのEBITは5.4%増えたが、約11億円の増益では航空事業の落ち込みを補えなかった。
財務安全性
親会社所有者帰属持分比率は45.1%へ上昇した。ただし、6月発行の社債型種類株式なども資本を支えている。利益の積み上げだけで改善した比率ではない。
| 項目 | 2026年9月末・4〜9月実績 |
|---|---|
| 資産合計 | 33,176.13億円 |
| 資本合計 | 15,431.96億円 |
| 親会社所有者帰属持分 | 14,961.37億円 |
| 現金及び現金同等物 | 10,341.35億円 |
| 営業キャッシュ・フロー | 1,600.57億円 |
| 投資キャッシュ・フロー | −1,519.90億円 |
| 財務キャッシュ・フロー | 166.81億円 |
営業CFと投資CFの単純合計は80.67億円のプラスだった。営業活動で得た資金の大部分が投資へ回っており、航空機更新を進めながら現金を積み増すには、利益の回復も欠かせない。会社は社債型種類株式で調達した資金を最新鋭機材の購入に充てる方針を示した。
定量評価
| 指標 | 今回 | 比較・算定の基準 |
|---|---|---|
| EBITマージン | 6.4% | 前年同期11.2%、約4.8ポイント低下 |
| 国際線有償座席利用率(FSC) | 82.8% | 前年同期85.5%、2.7ポイント低下 |
| 通期EBITの下期残額 | 1,098.28億円 | 会社予想1,800億円−上期701.72億円 |
| 普通株年間配当予想 | 96円 | 前期実績96円から据え置き |
下期残額は上期実績を約57%上回る。ただし、これは会社予想からの差引計算で、季節性を調整した達成確率ではない。ROE・ROICは今回の中間短信で通期実績が示されておらず、半期利益の単純年率換算は用いない。株価やPERによる割安度は本稿の分析対象に含めていない。
ポジティブ要因
国際線の単価上昇と貨物増収により、売上収益は1兆円を超えた。旅客数が減った環境でも収入を伸ばした点は、販売管理と価格転嫁の効果を示す。
マイル/金融・コマースのEBITは222億円となり、連結黒字を支える規模に育っている。航空運賃や燃油市況だけに依存しない利益が増えれば、今後の減益幅を抑える役割を期待できる。
リスク要因
最も大きいのは燃油費の増加だ。燃油サーチャージを改定しても、費用増の時期と収入増の時期・対象路線は一致しない。高い単価を維持しようとして旅客数がさらに減れば、収入の伸びも鈍る。
FSCの国際線利用率は低下し、国内線の有償旅客数も2.2%減少した。今回の売上増をそのまま輸送需要全体の拡大とみなせない。普通株の配当96円を維持する一方、社債型種類株式への配当など普通株主に帰属しない資金負担も生じる。
業界動向との関連
航空会社では、円安が訪日需要や外貨建て収入を支える一方、燃油や機材関連費用を押し上げる。今回のJAL決算は、需要の強さだけでは利益を説明できないことを示した。
国際線と貨物の増収を続けられるかに加え、運賃への転嫁が燃油費の増加に追い付くかが、次の四半期の収益を左右する。非航空事業の増益だけで航空事業の大幅減益を埋めるには、まだ規模の差が大きい。
株価への示唆
通期予想の据え置きは会社が回復を見込んでいることを表すが、上期の減益を取り消す材料ではない。売上の進捗は半分を超えても、EBITの進捗は39.0%にとどまる。燃油費負担の緩和か、単価・貨物・非航空利益の一段の積み上げがないと、下期の利益回復は進みにくい。
今期の総括
価格転嫁で増収を確保したが、燃油費を中心とする費用増が利益を削った。マイル事業の安定収益と厚い手元資金は支えとなるものの、航空事業の採算低下が決算全体を決めた。
通期見通しと配当
会社は売上収益2兆950億円、EBIT1,800億円、親会社所有者帰属利益1,100億円を据え置いた。前期比ではEBIT17.4%減、純利益20.1%減の予想。2028年3月期の正式な業績予想は今回の資料にない。
普通株は中間48円、期末予想48円の年間96円。別に記載された第1回社債型種類株式の年間配当予想331.50円は、普通株の配当と合算しない。
総合判断
弱気。 増収を確保してもEBITが36.0%減り、航空事業の負担増を非航空事業で埋め切れていない。次回は旅客単価の高さよりも、燃油費と転嫁後の採算が改善し、通期利益の残額を縮められるかを見たい。
出典
- 日本航空 決算短信・決算説明会資料:「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」、2026年11月2日。表紙、添付2〜7・14〜15・19〜20ページ。進捗率・通期残額・CF合計は開示数値から計算。