まず結論

今回の室町ケミカル相場は、テーマ株化と業績改善が同時に来た小型株相場です。

単に「AI半導体関連だから買われた」と見ると少し浅い。市場が反応しているのは、AI半導体工場やデータセンターの裏側にある、水処理インフラです。

半導体製造では超純水が不可欠です。さらにPFAS規制強化、工業用水の再利用、排水処理高度化まで含めると、水処理はAIインフラの外側にある地味なボトルネックになります。

室町ケミカルのイオン交換樹脂は、そこに連想がつながる材料です。

なぜ「AI半導体」だけではないのか

AI半導体相場では、最初にGPU、メモリ、製造装置、検査装置が買われます。

ただ、半導体工場が増えるほど必要になるのは装置だけではありません。

周辺インフラ見られやすいテーマ
電力データセンター、変圧器、送配電
冷却空調、冷却水、熱管理
水処理超純水、排水処理、再利用
化学材料洗浄、精製、分離、吸着
環境対応PFAS、排水規制、資源循環

室町ケミカルが見られているのは、このうち水処理と高機能分離材料の場所です。

同社のイオン交換樹脂総合情報センターでは、高純度樹脂「Muromac HGシリーズ」について、純水、薬品、有機溶剤、プロセス液の製造・精製に適応すると説明しています。また、高架橋度カチオン樹脂の想定用途として、半導体製造装置などの超純水製造装置の最終段ポリッシャが挙げられています。

この説明だけで「半導体売上が急拡大する」とは言えません。けれど、半導体超純水サプライチェーンに連想されるには十分な材料です。

業績が強いことも買われやすい理由

テーマだけなら、相場は長続きしにくいです。

室町ケミカルが短期資金を呼びやすいのは、足元の数字も強いからです。

2026年5月期第3四半期累計では、売上高56.51億円、営業利益5.46億円、純利益3.37億円となりました。前年同期比では、売上高が16.8%増、営業利益が59.1%増、純利益が35.7%増です。

さらに通期会社予想は、売上高77億円、営業利益7億円、純利益4.70億円。営業利益は前期比62.0%増、純利益は94.8%増の計画です。

項目2026年5月期3Q累計前年同期比
売上高56.51億円+16.8%
営業利益5.46億円+59.1%
経常利益5.14億円+44.8%
純利益3.37億円+35.7%

テーマ株なのに、業績も伸びている。小型株では、この組み合わせがかなり強い需給を作ります。

それでも半導体専業ではない

ここは冷静に見たいところです。

室町ケミカルの事業は、医薬品、化学品、健康食品の3本柱です。市場では半導体・AI関連として見られ始めていますが、会社全体が半導体専業というわけではありません。

化学品事業にイオン交換樹脂があり、そこから超純水やPFAS除去に連想が広がっている構図です。

つまり現在の株価には、実績として確認できる業績改善に加えて、次のようなテーマプレミアムが乗っています。

  • AI関連化
  • 半導体サプライチェーン化
  • 超純水関連化
  • PFAS除去関連化
  • 水処理インフラ関連化

小型株では、この状態になるとPERだけでは止まりにくい。逆に、資金が抜ける時も速いです。

PFASは中長期の本命テーマになり得る

個人的には、短期のAI半導体連想より、PFAS除去関連として本物化するかのほうが中長期では重要です。

PFASは、環境中に残留しやすい有機フッ素化合物として規制強化の流れがあります。環境省はPFOS・PFOAについて水質の指針値に関する情報を公表しており、米EPAも飲料水中PFASについて法的拘束力のある基準を設定しています。

室町ケミカルは、2025年2月に「イオン交換樹脂を用いたPFAS除去技術の紹介」という資料を示しており、水中PFAS除去への技術的な接点があります。

ただし、ここでも過大評価は禁物です。

現時点で、PFAS除去が室町ケミカルの売上をどの程度押し上げているかまでは、決算短信だけでは読み切れません。今はまだ「長期テーマ化する可能性がある」という段階です。

本物になるには、次の確認が必要です。

確認点見る理由
官公庁・自治体案件公共水処理需要として広がるか
工業排水案件半導体・化学工場向けに展開できるか
継続受注一過性の試験導入で終わらないか
利益率高機能材料として採算が取れるか
海外展開PFAS規制強化地域で拡大できるか

PFASは、水処理テーマとしては息が長くなりやすい。だからこそ、IRでの言及や受注実績の有無を追う価値があります。

リスクは流動性とテーマ剥落

室町ケミカルは大型株ではありません。小型株でテーマがつくと、値動きはかなり荒くなります。

注意点は3つです。

1. 半導体売上比率は確認が必要

市場では半導体関連として扱われていますが、売上構成の中心は医薬品、化学品、健康食品です。

イオン交換樹脂が半導体超純水に関連することと、会社全体の業績が半導体工場投資だけで動くことは別です。

2. AIテーマの循環が速い

日本株では、AI、データセンター、電力、冷却、半導体材料、水処理へ短期資金が高速で回っています。

その資金が抜けると、業績が悪くなくても株価は急に冷えます。テーマ株は、材料よりも需給の賞味期限が先に来ることがあります。

3. 業績期待が先に乗りやすい

通期予想は強いです。増配も評価できます。

ただ、これを前提に株価が先に上がると、次の決算では「良い数字」だけでは足りません。化学品事業の利益率、受注、半導体向けの実需、PFAS関連の具体化まで見られます。

次回決算で見るべきポイント

次回決算で確認したいのは、次の項目です。

注目点重要理由
化学品部門利益率原価率改善が続いているか
イオン交換樹脂の伸びテーマが実需化しているか
半導体・超純水関連の説明思惑から業績材料に変わるか
PFAS関連の言及中長期テーマとして育つか
受注残・在庫一過性需要か継続需要か
設備投資計画需要拡大に対応する意思があるか
増配継続キャッシュ創出力を確認できるか

室町ケミカルを見る時は、売上高だけでは足りません。

売上より利益、利益よりキャッシュ。さらに、その利益が医薬品なのか、化学品なのか、イオン交換樹脂なのかを分けて見る必要があります。

投資スタンス

現在の市場評価を時間軸で整理すると、次のようになります。

時間軸見方
短期AI・半導体小型株として資金集中しやすい
中期利益成長と化学品事業の採算改善を検証
長期PFAS・超純水・工業用水再利用で水処理インフラ企業へ進化できるか

短期では、急騰後の反動に注意です。

中期では、通期予想の達成と利益率改善が焦点です。

長期では、室町ケミカルが単なる医薬品・化学品会社ではなく、高機能分離材料を持つ水処理インフラ企業として評価されるかがポイントになります。

まとめ

室町ケミカルの急騰は、単なるAI関連株の物色ではありません。

半導体超純水、PFAS除去、高機能分離材料、工業用水再利用という複数テーマが重なり、水処理インフラ銘柄として再評価され始めた動きです。

足元の業績も強く、2026年5月期第3四半期累計では営業利益が前年同期比59.1%増。通期予想では営業利益62.0%増、純利益94.8%増が見込まれています。

ただし、半導体専業ではなく、PFAS関連の売上寄与もまだ決算上は明確ではありません。ここから本当に評価が続くかは、化学品事業の利益率、イオン交換樹脂の実需、PFAS案件、キャッシュ創出力で決まります。

テーマは強い。数字も悪くない。だからこそ、次は期待ではなく実需を見たい局面です。

出典・参考資料

  • 室町ケミカル「2026年5月期第3四半期決算短信〔日本基準〕(非連結)」、開示日: 2026-04-14
  • 室町ケミカル「イオン交換樹脂総合情報センター 高純度樹脂(高架橋度樹脂)」
  • 室町ケミカル「イオン交換樹脂を用いたPFAS除去技術の紹介」、2025年2月19日
  • 環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
  • 米国環境保護庁(EPA)「Per- and Polyfluoroalkyl Substances(PFAS)」
  • 確認日: 2026-05-27
本記事は、公開情報に基づいた教育的・情報提供のみを目的としており、特定の銘柄や金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。掲載内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容や将来の投資成果を保証するものではないことをあらかじめご了承ください。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願い申し上げます。