こどもNISAと教育資金戦略 2027年こどもNISAに向けて、教育資金、親NISA、贈与税、現金管理を整理するサムネイル 2027 こどもNISAで 教育資金はどう変わるか 親NISA・現金・贈与を分けて設計する 年間60万円 0〜17歳の積立枠 総額600万円 長期運用の器 払出し制限 使う時期も管理 教育資金 現金と投資を分ける 教育資金は「いつ使うか」で分ける

2027年から、未成年のNISAが大きく変わる見込みだ。

金融庁の解説によれば、令和8年度税制改正大綱では、2027年1月以降にNISAのつみたて投資枠の対象年齢を0〜17歳へ広げ、未成年の間は年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円とする方針が示されている。

いわゆる「こどもNISA」である。

本記事では便宜上「こどもNISA」と呼ぶが、現時点では未成年向けにNISAのつみたて投資枠を拡充する制度案を指す。正式名称や細かな手続きは、今後の法令や金融機関の案内で変わる可能性がある。

ただ、ここで「子どもにも非課税枠ができる。じゃあ教育資金は全部オルカンでいい」と飛びつくと、少し危ない。

教育資金は、老後資金と違って出口が近い。大学入学金、授業料、下宿費、留学費用。支払い時期は相場に合わせて待ってくれない。ちょうど使う年に株式市場が崩れていれば、含み損でも売らざるを得ない。

こどもNISAは便利な制度になりそうだが、教育資金の正解そのものではない。この記事では、こどもNISAを「お得な新制度」としてではなく、親が教育資金をどう設計し直すかという家計戦略として整理する。

なお、本記事は2026年6月時点の公開情報をもとにした一般的な資産形成メモであり、特定の商品購入、投資判断、税務判断を勧めるものではない。制度の細部、口座手続き、贈与税の扱いは、金融庁、国税庁、証券会社、税理士などの最新情報で確認してほしい。

まず結論

こどもNISAが始まると、子ども名義で非課税の長期運用がしやすくなる。

ただし、教育資金をすべて株式投信に入れればよい、という話ではない。むしろ大事なのは、次の3つを分けることだ。

資金の種類向きやすい置き場所見方
3〜5年以内に使う学費預貯金、個人向け国債など元本変動の小さい資産相場より支払時期を優先
10年以上先の教育資金親のNISA、2027年以降のこどもNISA長期・積立・分散を検討しやすい
子ども本人に持たせたい将来資金こどもNISA、未成年口座贈与と名義管理を整理する

制度面だけを見れば、こどもNISAはかなり使いやすくなる。

ただ、教育資金は「非課税で増やせるか」より、「必要な時期に取り崩せるか」の方が重い。ここを間違えると、制度は合っているのに家計運用としては失敗する。

2027年のこどもNISAで変わること

現在のNISAは、原則として18歳以上が対象である。

2023年末までは未成年向けにジュニアNISAがあったが、新規の口座開設は終了した。そのため、2024年以降に子どものための非課税投資を始めにくい空白期間があった。

こどもNISAは、この空白を埋める制度として位置づけられる。

2026年6月時点で公表されている主な内容は次の通りだ。

項目2027年以降の見込み
対象年齢0〜17歳
年間投資枠60万円
非課税保有限度額600万円
対象枠つみたて投資枠
非課税期間無期限
18歳以降成人後のつみたて投資枠へ自動移行する仕組み
払出し原則制限あり。12歳以降は一定要件で払出し可能

ここで押さえたいのは、未成年が使えるのは、成人のNISAと完全に同じ枠ではないという点だ。

成人のNISAは、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて年間360万円、非課税保有限度額1,800万円という設計になっている。これに対して、こどもNISAは未成年向けのつみたて投資枠として、年間60万円、総額600万円の枠になる見込みだ。

「子どもにも大人と同じ1,800万円の枠ができる」と理解するとズレる。

長期資金用の小さめの非課税ポケットができる、と見た方が実務感に近い。

払出し制限はかなり重要

こどもNISAで一番誤解されやすいのは、払出しだと思う。

金融庁の解説では、12歳以降は一定の要件のもとで払出しが可能になるとされている。要件は、資金の使途が子どものためであり、子どもが払出しに同意したことを示す書面とともに、親権者等が申出書を金融機関へ提出するというものだ。

つまり、12歳になれば自由に引き出せる制度ではない。

教育費や生活費など、子どものための支出であることが前提になる。小学校低学年のうちは、災害などかなり限られた場合を除き、原則として払い出せない設計だ。

この制限は不便に見える一方で、制度の趣旨からすれば自然でもある。子ども名義の非課税枠を、親の短期資金置き場として使わせないためだ。

近い学費は現金。遠い学費は投資。成人後に渡す資金は子ども名義。

こどもNISAを教育資金に使うなら、この切り分けを最初から作っておく必要がある。

親のNISAからこどもNISAへ、そのまま移せるわけではない

ここで一番注意したいのは、「2027年になったら親のNISAからこどもNISAへ切り替える」と単純化しすぎないことだ。

方向性としては分かる。ただし実務では、親のNISAで持っている投資信託を、そのまま子どものNISA口座へ移管できるとは考えない方がいい。

親のNISAは親の口座、こどもNISAは子ども本人の口座である。資産の名義が違う。親のNISA資産を売却し、現金化して子どもへ渡し、子どものNISAで買い直すような形になれば、贈与税の論点も出てくる。

だから現実的には、次のように分けて考える。

時期現実的な動き
2026年中親のNISA枠に余裕があれば、親名義で教育資金分を管理する
2027年以降新規積立は、こどもNISAを候補に入れる
親NISAで保有中の資産無理に移さず、目的別に売却時期と使途を管理する
子ども名義へ資金移動する場合贈与税、名義管理、記録を確認する

「2027年に一気に移す」より、「2027年から新しい積立先が増える」と捉えた方が安全だ。

それでも親NISAはまだ有力

こどもNISAができるからといって、親NISAの価値が落ちるわけではない。

親のNISA枠に余裕があり、教育資金まで10年以上あるなら、親のNISAで教育資金の一部を運用するのは現実的な選択肢になる。

特に、子どもがまだ小さい家庭では、2027年を待つより、2026年中に親NISAで積み立てを始めた方が時間を使える場合もある。

成人のNISAは、つみたて投資枠と成長投資枠を合わせて非課税保有限度額1,800万円が設定されている。夫婦それぞれがNISA口座を使える家庭なら、世帯単位での余地はさらに大きい。

ただし、親の老後資金と子どもの教育資金を同じ口座の中で混ぜると、あとでかなり分かりにくくなる。

実務では、家計簿やスプレッドシートで目的別に分けておきたい。

親NISAの中身
  老後資金用:月5万円
  教育資金用:月2万円
  予備資金用:ボーナス時のみ

口座は1つでも、目的は分ける。ここを曖昧にすると、相場下落時に「これは何のためのお金だったか」が見えなくなる。

投資で意外と多い失敗は、商品選びよりも資金のラベル管理だ。

未成年口座は「分けたい家庭」向け

こどもNISAが始まるまでの間、子ども名義で証券口座を作る方法もある。

いわゆる未成年口座だ。投資信託や株式を子ども名義で保有でき、親の資産と分けて管理しやすい。

ただし、未成年口座は原則として課税口座である。売却益や配当、分配金には税金がかかる。非課税メリットだけを見るなら、親のNISAや2027年以降のこどもNISAの方が使いやすい。

未成年口座が向くのは、たとえば次のような家庭だ。

向くケース理由
祖父母からの資金を子ども名義で分けたい名義と管理を整理しやすい
金融教育として実口座を見せたい子ども自身の資産として説明しやすい
親のNISA枠をすでに使っている課税でも別口座にする意味がある
将来、本人に資産を引き継ぐ前提が明確成人後の管理移行を説明しやすい

逆に、単に教育費を効率よく準備したいだけなら、未成年口座は少し手間が重い。制度開始後は、こどもNISAを優先し、未成年口座は「名義を分ける必要がある資金」に絞る形が自然だろう。

贈与税と名義管理は避けて通れない

子ども名義の口座に親や祖父母のお金を入れる場合、贈与税の考え方が関係する。

国税庁のタックスアンサーでは、暦年課税の贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与でもらった財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて計算すると説明されている。

年間110万円以内なら常に何をしても問題ない、という意味ではない。

生活費や教育費として通常必要な範囲の支出と、将来資産として子ども名義に移すお金は、税務上の見方が異なるため混同しない方がよい。

たとえば「毎年100万円ずつ10年間贈与する」と最初から約束している場合、国税庁は、約束した年に定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかる例を示している。

実際に子どもへ資金を移すなら、少なくとも次の点は記録しておきたい。

確認点理由
誰から誰への資金移動か贈与者と受贈者を明確にする
金額と日付年間110万円の基礎控除を確認する前提
使途教育費、将来資金、生活費などを整理する
子ども本人の財産という認識名義預金扱いを避けるため
成年後の管理方針18歳以降は本人の判断が強くなる

税務は家庭の財産状況、相続関係、過去の贈与、祖父母からの支援の有無で変わる。祖父母資金、相続対策、過去の贈与が絡むなら、自己判断で走らず、早めに税理士へ確認した方がいい。

教育資金は「増やす」より「間に合わせる」

投資記事では、どうしても利回りの話が前に出る。

しかし教育資金で本当に怖いのは、高い利回りを逃すことではない。必要なタイミングで、必要な額を用意できないことだ。

大学入学の年に株式市場が大きく下がっていれば、含み損のまま売ることになる。留学費用や入学金の支払いは、相場の回復を待ってくれない。

だから教育資金の運用は、年齢によってリスクを下げていく発想が合いやすい。

子どもの年齢考え方
0〜6歳10年以上先の資金は投資も検討しやすい
7〜12歳中学・高校費用と大学資金を分け始める
13〜15歳大学入学金に近い資金は現金比率を高める
16〜18歳使う予定の資金は値動きの小さい場所へ寄せる

こどもNISAは、教育資金づくりの強い道具になる。

ただし、強い道具だからこそ使い方を間違えやすい。全額を同じリスク資産に置く必要はない。むしろ、使う時期が近づくほど現金に戻すルールを先に決めておく方が、家計としては強い。

2027年までに親がやること

こどもNISAの開始を待つ間に、やることはかなりある。

制度開始と同時に慌てて商品を選ぶより、家計の設計を先に済ませたい。

1. 教育費の時期を確認する
   幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、留学、下宿の可能性を分ける

2. 現金で確保する金額を決める
   3〜5年以内に使う資金は投資に回しすぎない

3. 親のNISA余力を見る
   老後資金と教育資金を同じ枠で混ぜすぎない

4. 2027年以降の新規積立先を決める
   こどもNISAを使うか、親NISAを継続するかを比較する

5. 贈与と名義管理の記録を整える
   祖父母資金、児童手当、親の資金を混ぜない

ここまで整理できていれば、制度開始後に「とりあえずランキング上位の投信を買う」という流れになりにくい。

FAQ

こどもNISAは2027年から始まる?

2026年6月時点では、令和8年度税制改正大綱に基づき、2027年1月以降の導入が示されている段階である。実際の開始日、取扱金融機関、口座手続きは、今後の法令・金融機関の案内を確認する必要がある。

12歳以降なら自由に引き出せる?

自由に引き出せる制度ではない。資金の使途が子どものためであること、子どもの同意を示す書面、親権者等による申出書の提出など、一定の要件が想定されている。

親のNISAからこどもNISAへ移管できる?

親のNISA資産を子どものNISAへそのまま移せる前提で考えない方がいい。親名義の資産を子ども名義へ移す場合、売却、現金化、贈与、再投資などの論点が出る。証券会社と税務の確認が必要になる。

オルカンやS&P500だけで教育資金を作ればいい?

長期資金なら候補にはなるが、教育資金は使う時期が決まっている。子どもが高校生になった後も全額を株式投信に置くのは、家計運用としてはやや攻めすぎだ。年齢が上がるほど現金比率を高める設計を考えたい。

まとめ

こどもNISAは、子育て世帯にとって大きな制度変更になる。

0〜17歳でも非課税のつみたて投資枠を使えるようになれば、教育資金や成人後の資産形成を、子ども本人の名義で始めやすくなる。

ただし、制度が便利になるほど、家計側の設計力が問われる。

親のNISAで運用するのか、2027年以降はこどもNISAで積み立てるのか。子ども名義にするなら、贈与税や名義管理をどう記録するのか。大学資金のように使う時期が決まったお金を、どこまでリスク資産に置くのか。

こどもNISAは「教育資金の答え」ではない。

でも、教育資金を考えるきっかけとしてはかなり大きい。2027年までにやるべきことは、人気ファンド探しではなく、家計の中で子どもの資金をどの時間軸に置くかを決めることだ。

時間は、子どもの資産形成にとって最大の味方になる。だからこそ、制度開始を待つだけでなく、今のうちに現金、親NISA、こどもNISA、贈与、金融教育の役割を分けておきたい。

出典・注意

本記事は、2026年6月18日時点で確認できる公開情報をもとにした一般的な解説である。税制、NISA制度、証券会社の手続き、教育費、贈与税の扱いは変更される可能性がある。個別の投資判断や税務判断は、最新の公式情報と専門家への確認を前提にしてほしい。