5,000万円が必要になる仮の家計
手取り収入から毎月の支出を引き、10万円不足するとします。同じ不足が35年間続く仮定なら、取り崩し総額は4,200万円です。月額へ含めない住宅修繕や介護などを800万円と仮置きすれば、合計は5,000万円になります。
この800万円は標準的な費用でも推奨額でもありません。毎月の不足や見込む期間が違えば、同じ計算から出る総額も変わります。世帯の職業や持ち家の有無だけで、5,000万円が必要かを分類することはできません。
今ある資産と、残したい資産を分ける
取り崩し総額が5,000万円の場合、その用途に使える資産を確認します。退職金をすでに預金に含めているなら、将来の入金としてもう一度加えることはできません。売却しない自宅も、評価額をそのまま毎月の支払いへ充てられるわけではありません。
家族へ残したい資金がある場合、同じ額を生活費にも使えると数えないようにします。生活へ使わず残す額があれば、その分を取り崩しの原資から外す必要があります。総額が同じでも、資金の目的によって取り崩せる範囲は変わります。
同じ家計の一部を運用していた場合
同じ家計のために用意した5,000万円が、現金4,000万円と運用資産1,000万円だったとします。運用部分が20%下がれば、合計は4,800万円です。その後、生活費100万円を使うと残高は4,700万円。下落せずに同じ額を使った4,900万円とは、残る原資が200万円違います。税・費用は省いています。運用益を一定に置いた計算では、このような順序の影響が見えにくくなります。
生活費を確保する必要があれば、価格の回復を待てない場合があります。近い将来の支出に充てる現金と、長く保有できる運用資金を分けるのは、全体の利回りだけでなく支払時期へ対応するためです。
期間・物価・年金の条件を更新する
35年という期間も仮定であり、支出がずっと一定とは限りません。物価が上がる場合に、年金などの収入が同じ率で増えるとは決まっていません。本人や家族の状態、住み替え、就労の継続も変わり得ます。
年金は加入記録に基づく見込額と受取開始時期、手取りを確認します。家計は年金開始前と開始後を分け、大きな支出を年別に置くと、総額だけでは見えなかった不足時期が分かります。
大きな目標額のためにリスクを増やさない
不足を埋めるために高い固定利回りを前提にすると、実現しなかった場合の負担を見落とします。投資は元本割れもあり、過去にうまくいった取り崩し率が将来も続く保証はありません。
不足があると分かった場合は、貯蓄、支出、働き方、受け取る時期などの変更可能な条件をそれぞれ比べます。5,000万円の達成そのものより、必要な日に現金があり、条件が変わっても見直せる計画かを確かめるための数字です。
出典
参考資料の確認日:2026年10月23日。