損失が自己評価へ結びつく
含み損を確定することが、自分の分析や能力への評価に感じられる場合があります。「戻るまで持てば失敗ではない」と考えると、投資先が変わっても売却条件が動かなくなりがちです。しかし、売却していないことは購入時の判断が正しかった証拠ではありません。
また、売った直後に反発する不安もあります。将来の反発を完全に避けることはできず、持ち続ければさらに下がる可能性もあります。感情が消えるまで待つだけでは比較が進みません。
三つの欄を作る仮例
仮に保有株が18万円から13万円になったとします。感情欄には「5万円の損失を認めたくない」。事実欄には「主力製品の利益率が低下」。未確認欄には「一時費用か、需要の変化か」と書きます。
感情欄の願望から事実欄を作らず、未確認の内容を会社の資料で調べます。業績前提が保たれているなら継続の根拠になり得ますし、変化が大きいなら保有額の見直しを考えます。現在の13万円の使い道を、過去の18万円から切り離して比較します。
名前を付けて終わらない
損失回避、買値へのアンカリング、過去の支出を惜しむサンクコスト効果など、複数の偏りが関わる場合があります。どれか一つへ分類することより、どの情報を読まずに判断を止めたかを確かめます。
事前に保有の根拠と再検討する条件を残すと、下落後に条件を変えたかを見られます。価格基準を使う場合も、急落時にその価格で売れる保証はなく、家計に合う保有額を先に検討します。
売却後は当時の情報で振り返り、次の投資で取り返すために金額を増やさないようにします。損切りが常に正解という意味ではなく、保有にも売却にも今の根拠を持つための整理です。
出典
- Odean(1998)“Are Investors Reluctant to Realize Their Losses?”(著者所属大学公開の掲載版)
- Tversky and Kahneman “Loss Aversion in Riskless Choice: A Reference-Dependent Model”(著者編書籍への再録・出版社公開要旨)
- Arkes and Blumer(1985)“The psychology of sunk cost”
- Tversky and Kahneman(1974)“Judgment under Uncertainty: Heuristics and Biases”