商品も株も安くなったから、買い時と思う時
物の値下がりを歓迎する感覚のまま、下がった株も以前より得だと考える場合があります。しかし、商品の価格と株式の価格は違う対象です。デフレは一般物価が継続して下がる状態で、個別の株価の下落そのものを指す言葉ではありません。
技術進歩で特定の品物が安くなることとも区別します。需要の弱さによる値下げなら、企業の収益や所得の側も変わる場合があり、支払価格だけを見た安心はその一部分です。
株価と利益を同じ基準で比べる仮例
架空の会社の株価を200円、一株利益を10円とすると、株価を一株利益で割ったPERは20倍です。その後、株価が150円へ下がる一方、一株利益も5円へ減ったと置けば、PERは30倍になります。
株価は安くなっても、その時点の一株利益に対する倍率は高くなる設定です。同じ株数の基準、同じ長さの決算期間で比べ、一時的な特別利益や株式分割等の影響はないと仮定します。実在の会社の評価ではありません。
この比較は一般物価の下落がその会社の減益を起こしたと証明するものでも、PERが高いから必ず下がるという予測でもありません。利益の続き方や財務、成長への期待を調べず、以前の株価だけで割安と決められないことを示しています。
すべての会社へ同じ作用とは限らない
売値が下がっても、仕入れや生産の費用がそれ以上に下がる場合と、費用を下げられない場合では、収益への作用が違います。販売数量や契約の時期も変わります。消費者に安いことと、供給側に損失が出ることを、常に一組として扱う必要はありません。
反対に、物価が下がって現金の購買力が増える面だけを取り出しても、所得が減った家計の負担は説明できません。固定した名目返済、雇用、賃金も別に残ります。
不足する材料を、相場の名前で埋めない
日本銀行の過去の講演は、一般物価、資産価格、実体経済を区別しています。関連があることを理由に、どれか一つの悪化から他のすべてを同じ率で見積もることはできません。
統計を読む際も、一部の商品か幅広い価格か、今月だけか継続した動きかをそろえます。以前の安値、ランキング、短い投稿だけでは、会社の利益が維持できるかは分かりません。
下がった資産を持ち続けるか増やすかは、損失を取り返したい気持ちとは別に、今からの条件で考える余地があります。デフレという説明に合う話だけを集めず、単価、数量、費用、財務のどこが変わったかを読める形が必要です。
出典
- 日本銀行 植田審議委員講演『日本の「デフレーション」と政策対応』(2003年4月24日、一般物価・資産価格・停滞の区別)
- 米国SEC Investor.gov「Price-earnings (P/E) Ratio」
出典確認日:2026年10月23日。