続けて損をしたので、次の注文を大きくしたくなった
売買で損失が続くと、次こそ利益が出る気がする場合があります。独立した試行なら、過去の結果が逆の結果を呼び込むわけではありません。その関係を読み込むのが、ギャンブラーの誤謬です。
投資では、次は勝つという予想に、早く損を取り戻したい気持ちが重なることがあります。前者は確率についての判断、後者は本人の目標です。同じものとして扱うと、投入額を増やす理由が見えにくくなります。
次の一取引の大きさだけを比べる独自例
架空の投資家が、前の売買の損失を取り戻そうとして、次の購入額を20万円から60万円へ増やすと考えます。次の取引で、どちらも購入後に価格が10%下がって売却したなら、損失額はそれぞれ2万円と6万円です。費用、税、配当、購入中の資金移動は除きます。
同じ取引の投入額だけを変えた比較であり、10%下がる確率も、次に成功する確率も設定していません。損失率が同じでも、金額を三倍にすれば損失額も三倍になると読む例です。前の損失額を置いていないので、ここで取り戻しに必要な利益は計算していません。
実際の国内株式なら、価格と売買単位によって選べる購入額も変わります。これは特定銘柄への注文ではなく、投入額と負担の関係を抽象化した模型です。
反転の予想と、取り戻す期限を分ける
「そろそろ勝てる」という考えに、業績や価格の材料が付いているかを読めます。「今月中に戻したい」という都合は、その材料を増やしません。焦りがあれば、いつ必要になる資金を使おうとしているかも別に残せます。
株価の各回の騰落が独立とも、常に半々とも限りません。そのため、コインの説明だけで相場の確率を求めたり、直近の連敗だけで戦略の良し悪しを確定したりはできません。対象や期間、費用をそろえた検討が必要です。
判断の記録を、後から成功談へ変えない
次の取引で利益が出ても、投入額を増やした判断が正しかったとは限りません。最初の理由が連敗の回数だけだったなら、その記録は残ります。逆に損をした時も、どの想定が違ったかを、結果を知った後の説明と分けて読めます。
Rabinの研究は、小さな標本を全体へ似過ぎるものとして捉える推論をモデル化しています。個々の投資家の気持ちや、今回の勝率を診断するものではありません。
自分の損失を戻したいという希望と、投資先が生む将来の収益は、別の条件で動きます。金額を増やす前の理由に、過去の回数以外の情報があるかを残すところから使えます。
出典
- Matthew Rabin『Inference by Believers in the Law of Small Numbers』(University of California, Berkeley Working Paper E00-282、2000年公開原稿。要旨・導入部の推論モデル)
- 日本取引所グループ『会社の株価の決まり方』(注文の需給と、業績・市場全体の要因)
出典確認日:2026年10月23日。