「荒れる年」という見出しを読んだ時
新年の相場見通しで、干支を理由に波乱を予想する文章に出会うことがあります。「申酉騒ぐ」は、申年・酉年には株価が大きく変動するという言い伝えです。大和証券の用語解説にも相場格言として掲載されていますが、その説明だけで現在の市場に予測力があるとは示せません。
「騒ぐ」には、株価の変動、売買の活発さ、ニュースの多さなど、読み手が違う現象を当てはめやすい曖昧さがあります。干支だけでは、市場、銘柄、動く方向や時期も指定されません。
年間の騰落率と、途中の動きは別
架空の指数を考えます。A年は100から130へ上がった後に100へ戻り、B年は100から102へ上がって100へ戻ったとします。どちらも年初から年末の騰落率は0%ですが、年の途中で経験した変動の大きさは同じではありません。配当等を除いた、実在しない価格経路の比較です。
この三つの観測値だけで、一年間の統計的な変動率を測ったことにもなりません。日々の変化を測るのか、高値からの下落を測るのかを決める必要があります。「騒いだ」と感じることと、指標で比較することは違います。
言い伝えと、売買の根拠を分ける
過去の大きな事件を干支へ結びつけても、そうでなかった年を省けば印象が偏ります。また、申年や酉年に事件が起きた事実から、干支が事件や株価を動かしたとは言えません。市場の制度や構成企業、金融政策も時代によって変わっています。
企業の業績、金利、為替、政策の変化は、それぞれ具体的な情報から調べる対象です。格言はそうした資料を読む代わりにはならず、証券会社の用語集に載っていることも売買効果の保証ではありません。
覚えておく用途は、相場の話題で何を意味する言葉かを理解することです。干支を知っただけで株式を全部売る、変動が大きい銘柄へ資金を集める、といった行動条件までは増えていません。
出典
出典確認日:2026年10月23日。