取引先の不調で、なぜ別の会社も困るのか
ある会社の支払いが遅れると、その会社の外でも資金繰りに影響が出る場合があります。ドミノ効果は、一つの変化が次の相手や市場へ波及し、影響が連鎖する様子を表す比喩です。つながりがあれば最後まで必ず倒れる、という独立した金融法則ではありません。
金利、信用不安、供給の混乱などでも使われますが、何が誰へ伝わる経路なのかを具体的にする必要があります。
回収遅れと支払いをつなぐ、独自の仮例
架空のB社がA社から100万円を回収する予定だったところ、支払いが遅れたとします。Bの手元現金は30万円で、それ以外の入金はなく、その日にC社へ50万円を払う設定です。追加の調達がなければ、Cへの支払いに20万円不足します。
未回収の100万円と、その日の支払不足20万円は別の数字です。回収が遅れた時点で、100万円がすべて最終損失になったとも限りません。税、費用、他の資金移動を除き、支払日をそろえた独自の模型です。
Bがつなぎ資金を調達する、支払いを調整するなどができれば、Cへの遅れを避けられる可能性があります。実際にCへ遅れが出るかは、Bの残高と調達、契約の条件に依存します。最初の遅れだけでCも破綻すると結ぶことはできません。
直接の取引と、共通の資産を持つ関係
金融市場では、貸し借りや決済の相手として直接つながる経路に加え、似た資産を持つ経路もあります。一方が資金を作るため急いで売り、価格が下がれば、直接の取引がない他方の評価にも作用し得ます。
BISの2020年の研究は、銀行間の直接の債権と、共通保有資産を通じる間接的な波及を分けています。特定の欧州データとモデルで調べた研究であり、どんな市場でも同じ経路が最も大きいという認定ではありません。
連鎖の途中で止まる条件も、説明に入れる
現金の余力、代替調達、保険、在庫、価格転嫁、政策など、緩衝するものは経路によって違います。名前を列挙するだけでは効くか分からず、契約の対象、使えるまでの時間、費用も読む必要があります。
共通のニュースへ複数社が反応しただけなら、最初の一社から順番に損失が移ったとは限りません。同時に下がったことと、因果の連鎖を確認したことも区別します。
ドミノという比喩を使うなら、起点、直接の相手、次へ伝わる条件、止まる条件を一段ずつ残せます。最悪の物語を完成させるためではなく、何が既に起き、どこから先が仮説かを読むための考え方です。
出典
- Aldasoro・Hüser・Kok(2020)BIS Working Paper 908『Contagion Accounting』(公開要旨・解説。直接の債権と共通保有資産を通じる波及の区別)
- 米連邦準備制度理事会『Types of Financial System Vulnerabilities and Risks』(借入、資金調達、資産売却によるショックの増幅経路)
出典確認日:2026年10月23日。