数倍になった株の話だけが記憶に残るとき
小さな会社の株が大きく上がった話を見ると、自分も似た会社を早く見つけたくなる場合があります。成功した事例は目立ちますが、同時期に伸びなかった会社や上場廃止になった会社が、その話へ含まれているとは限りません。
小型株効果を考える際は、個別の大きな上昇と、分類した企業群の平均を分ける必要があります。研究上の平均的な差があっても、その一社や次の期間に同じ成果が出るとはいえません。
一社が3倍になった企業群の仮例
独自の仮例として、架空の10社へ各10万円、計100万円を投資したと置きます。一社が3倍の30万円、残りの9社がそれぞれ10%下がり各9万円になると、合計は111万円です。途中の売買や配当、費用は除いています。
目立つ一社の利益率は200%でも、この企業群全体の利益率は11%です。これは実際の小型株の成績ではなく、保有比率と全銘柄の結果を合わせるための計算です。特定の分類の平均収益を示したものでもありません。
上がった一社だけを見て「小型株なら3倍になる」とまとめると、残りの結果や、事前にその一社を選べたかという問題を省いてしまいます。
事例を選ぶ条件が結果を変える
現在残っている企業だけで過去を調べると、失敗して消えた企業が抜ける場合があります。成功後に知られた事業計画を、投資した時点でも分かっていた情報として扱うこともできません。
研究を読む際は、どの時点のどの企業を対象にし、何の規模で区切ったかが材料になります。FamaとFrenchの研究やFrenchの因子の説明も、複数の企業群を構成して比較するもので、個別の成功談とは対象が違います。
小型という安心感を持たない
事業が小さければ、取引先の増減や一つの製品の結果が全体へ大きく影響する場合があります。ただし、すべての小型株が同じ事業や財務というわけではありません。実際の顧客、利益、現金、返済の条件を読む必要があります。
値上がりを期待して注文を出す場合も、希望した量を同じ価格で売買できるとは限りません。買えることと、必要な時に売れることを一つにしない方が、資金の条件を考えやすくなります。
注目した理由を、調査の理由へ変える
MoneySenseの投資教育は、目立つ値動きへ注意が偏る可能性も扱っています。大きな上昇が気になったことを入口にしても、事業や買値を調べる段階は残ります。成功例から焦って金額を増やす前に、企業群と自分の保有先、価格変動を負う量を分けて説明できると、期待の偏りを読みやすくなります。
出典
- Eugene F. Fama / Kenneth R. French「The Cross-Section of Expected Stock Returns」(1992年、冒頭・対象データ)
- Kenneth R. French「Description of Fama/French Factors」SMB・HMLの構成
- MoneySense「Behavioural science and investing」目立つ情報と投資判断
参考資料の確認日:2026年10月23日。