良い会社を知っても、安く買えるとは限らない
企業の利益が伸びていることを知ったとき、その成長が既に株価へ含まれていれば、情報を知っただけで有利な投資になるとは限りません。他の投資家も同じ開示を読み、先の成果を見込んで取引している場合があります。
効率的市場仮説は、利用できる情報が価格へ反映され、同程度のリスクを取った投資より継続して高い収益を得られるかを考える枠組みです。どの情報を対象にし、どんなリスクの尺度や費用を使うかで検討の範囲が変わります。
運用結果と費用を分ける仮例
独自の仮例として、同じ100万円の運用で、Aの費用前利益を7万円、費用を1万5,000円、Bの費用前利益を6万円、費用を1,000円と置きます。税や入出金は除き、費用はこの金額で確定している単純な設定です。
| 項目 | A | B |
|---|---|---|
| 費用前の利益 | 7万円 | 6万円 |
| 費用 | 1万5,000円 | 1,000円 |
| 費用控除後の利益 | 5万5,000円 | 5万9,000円 |
この条件では、費用前に成績が高いAよりBの手元に多く残ります。ただし、両者のリスクや資産配分を同じとは置いていないため、表だけでBが投資として優れていると結論づけていません。実際の商品の費用率や運用成績でもありません。
価格が完全だという意味には広げない
Malkielの論考は、市場効率性を支持する議論を示しつつ、市場価格が常に完全だと主張しているわけではない点を明記しています。後から誤った評価が分かることと、その時点で費用やリスクを超える利益の機会を安定して利用できることは、別の問いです。
また、一部の投資家が良い成績を出した一期間だけで、情報の反映が遅いと証明することもできません。偶然や、比較対象と違うリスクの影響も検討する必要があります。
インデックス投資にも残る判断
市場全体を広く持つ方法は、個別銘柄を継続して選ぶ負担を減らす選択肢になります。しかし、何の市場へ投資するか、費用はいくらか、自分の支出へ合うかという判断は残ります。指数へ連動しても、元本や将来の成績は保証されません。
市場効率性の見方を採るかどうかにかかわらず、価格変動のある資産へ近く必要な資金まで回せるとは限りません。仮説が家計の予定を決めてくれるわけではありません。
長期投資へ生かすなら、情報を得た喜びだけで買う前に、既に何が価格に含まれ、どの費用とリスクを負うかを分けられます。市場を信じるか疑うかという二択より、投資の条件を具体的に読むための枠組みとして使えます。
出典
- Burton G. Malkiel「The Efficient Market Hypothesis and Its Critics」Princeton CEPS Working Paper 91(2003年、冒頭の定義と議論)
- 金融庁「資産形成の基本」
参考資料の確認日:2026年10月23日。