大きく儲かった銘柄だけ持っていればよかったか
過去の運用結果を並べると、少数の銘柄が利益の大きな部分を占める場合があります。それを見て、その銘柄だけ持てばよかったと思うことがあります。しかし、結果を知った後の選別と、買う前の選別は同じではありません。
パレートの法則は、少数の要因が成果の大きな部分へ関わる偏りを読む考え方で、八〇対二〇の法則とも呼ばれます。どんなデータも正確にその比率になると決めるための算式ではありません。
過去の利益が偏った独自の例
同じ期間に完了した架空の五つの投資の利益を、税・費用控除後でAが80万円、Bが10万円、Cが5万円、Dが3万円、Eが2万円と置きます。合計100万円のうち、一件、すなわち件数の20%が利益の80%を占めています。
ただし、これは意図的に置いた数値です。実際の株式投資で同じ比率になることや、次の期間にもAが上位になることを示していません。Aを選べた理由も、結果の表だけでは分かりません。
また、この設定は全件が利益です。損失の取引もある場合、差し引きの利益に対する一件の寄与率が100%を超えることもあり、同じ感覚で八〇対二〇を読めません。集計する量が何かを先に決める必要があります。
知名度と、利益への寄与は同じではない
話題の銘柄へ注意が向いても、自分の実際の利益や損失への寄与が最大とは限りません。保有数量、購入時期、保有期間が違うからです。目立った値上がり率だけで、口座全体へどれほど届いたかは読めません。
投資家の心理を振り返る際も、記憶に残った一回だけで全体を評価せず、入出金や未売却の評価損益、費用を含めた記録と比べられます。成功した例だけを残せば、偏り自体も正しく測れません。
少数へ集中するという結論を急がない
過去の上位だけを買うには、その上位が事前に分かるという追加の前提が必要です。集中すれば、期待した会社が失速した時の影響も大きくなります。成果の偏りを知ることだけから、家計で負担できる集中度は決まりません。
Juranの資料では、品質改善で要因の寄与を測り、優先する対象を読む考え方を扱っています。その考えを投資の記録へ使う際にも、まず実際の数値を見るという順序が関わります。
この法則を使う意義は、八割を生む二割を先に言い当てることではなく、何へ成果や損失が偏っていたかを調べることにあります。分かった偏りと、次に起きることの不確実さを分けると、過去の勝者だけから計画を作る場面を振り返れます。
出典
- Juran Institute「Pareto Principle (80/20 Rule) & Pareto Analysis Guide」
- MoneySense「Behavioural science and investing」
- 金融庁「資産形成の基本」
参考資料の確認日:2026年10月23日。