「十分下がった」後に買い増す場面
株価がしばらく下がると、以前の高値からの距離が気になり、企業の変化より「そろそろ戻るはず」という期待が強くなることがあります。「まだはもうなり、もうはまだなり」は、そうした断定を疑う格言です。次の値動きを逆方向へ決めるものではありません。
一つの架空取引で損失を見る
架空の国内株を1,480円で100株買い、その後「もう底だ」と1,180円で100株買い増したとします。合計の買付額は26万6,000円、200株の平均取得価格は1,330円です。さらに株価が1,030円になれば、評価額は20万6,000円、含み損は6万円となります。配当、税や手数料を省き、通常の100株単位での例です。
最初の100株だけなら同じ価格時点の含み損は4万5,000円です。平均取得価格は下がっても、追加の資金を入れたため、金額としての損失は増えています。買い増しが常に誤りという話ではありませんが、「平均が下がった」ことだけでは、資産全体への負担が軽くなったとは言えません。
格言を言い直すだけでは売買が決まらない
さらに下がった後なら「もうはまだだった」と説明でき、反発した後なら「まだと思ったが、もう底だった」とも説明できます。どちらにも後付けできる言葉は、いつ買うべきだったかを検証する規則にはなりません。
同じ場面を評価するなら、買い増し時点で公表されていた業績、追加資金の上限、保有目的を使います。その後の株価を知らない条件で、なぜ追加保有が妥当と考えたかが論点です。逆に、投資の前提が壊れた時も、価格が戻るまで待つ義務はありません。
日本証券業協会の格言解説が扱うのは、自分だけの判断への戒めです。チャートの正解を探すより、見立てが外れた場合に負担する金額を、買付けの前から計画へ入れる使い方になります。
出典
出典確認日:2026年10月23日。