最終製品は売れているのに、部品の注文が弱い時
半導体を使う製品の販売が続いているのに、半導体メーカーへの発注が減る場合があります。半導体サイクルは、需要と供給能力の変化、在庫の積上がりや取崩しなどを通じる業界の波を捉える表現です。すべての製品が決まった年数で一緒に上下する法則ではありません。
メーカーの出荷、顧客や流通の在庫、最終製品の販売は、別の段階の数字です。同じ期間でも方向や変化の幅がそろうとは限りません。
顧客の在庫と次の発注をつなぐ仮例
架空の顧客が期首に同じ種類の半導体を50単位持ち、期間中に100単位受け取り、製品への組込みで80単位使ったとします。破損や返品などがなければ、期末在庫は50+100−80で70単位です。
次の期間も使用見込みは80単位のままでも、期末在庫を50単位へ戻すなら、新たに必要な受取量は60単位です。70+60−80=50となります。使用する量は同じでも、受取量は前期間の100から60へ40%減る設定です。
在庫を減らす期間の部品調達と、最終需要が同じとは限らないと分かります。数量の模型で、実在企業の発注、歩留まり、金額や利益ではありません。発注と受取りの時間差や契約の取消しも置いていないため、そのままメーカーの売上予測にはできません。
供給能力は、すぐ同じ量へ変わらない
TIの2025年年次報告書は、需給と在庫による循環を説明し、製造設備を建設・維持する大きな時間と費用が関わるとしています。需要増を見て能力を増やしても、使える時までに需要の条件が変わる可能性があります。
逆に、需要が弱まった時も、設備や人員の負担をすぐ同じ比率で減らせるとは限りません。価格や稼働率、利益率、設備投資と現金の負担も、数量とは別に読む余地があります。
業界全体を一つの波にしない
メモリー、ロジック、アナログなどで製品の性質は違い、用途もデータセンター、自動車、スマートフォン等へ分かれます。ある用途が強くても、別の用途の在庫調整が終わった証拠にはなりません。会社の製品構成と顧客の中身を読む必要が残ります。
装置を供給する会社、半導体を製造する会社、製品へ使う会社では、需要や投資が数字に出る時点も異なります。好決算の時点が将来も同じ需要を示すとは限らず、逆に悪い数字から必ず底へ近いとも言えません。
サイクルの名称は、次の株価の天井や谷を当てる指標ではありません。どの段階の数字を読んでいるかをそろえ、今後の期待と実績を分けるために使えます。
出典
出典確認日:2026年10月23日。