実在銘柄の成功談ではなく、比較の仮例で考える
「噂で買って事実で売る」は、正式な発表までの期待で価格が上がり、内容が出ると売られることがある、という格言です。うまくいった取引だけを並べても、発表前に同じ判断ができたかは分かりません。
ここでは架空の会社と予想を使います。実際に起きた決算や売買を再現したものではなく、ニュースの良し悪しと期待との差を分けるための例です。
同じ増益発表を、違う期待から読む
前年の年間営業利益が10億円だった会社が、次の年は12億円だったと発表したとします。同じ会計期間と事業範囲で、特別な比較上の変更はない設定なら、前年比では20%の増益です。
仮の期待Aでは、発表前に15億円を見込んでいたとします。この場合、12億円は期待に届きません。仮の期待Bで11億円を見込んでいたなら、12億円は期待を上回ります。発表の数字自体は同じでも、比較する基準によって受け止め方が変わります。
AとBは説明のための設定で、調査会社の集計や市場全体の予想ではありません。Aなら何%下落し、Bなら何%上昇する、と対応する株価を置けるわけでもありません。
発表後に下がっても、格言が原因を証明するわけではない
Aのような期待が一部にあったなら、増益でも売りが出る説明の一つになります。しかし、実際には来期の見通し、利益の継続性、資金調達なども同時に評価されます。株価が下がったという結果から、全員が15億円を期待していたと逆算することはできません。
逆に、期待が高そうに見えた銘柄でも、その先の成長見通しが更新されれば、発表後に上がる可能性は残ります。発表前後を一律に「先に買い、後で売ればよい」という手順へ変えると、格言の説明できる範囲を超えてしまいます。
自分の事前メモと、正式な開示を照らす
発表前に残すなら、比較する利益の種類、予想の出所、対象期間、期待する理由をそろえます。売上の予想と営業利益の実績、通期計画と四半期実績をそのまま比べると、期待に届いたかという問い自体がずれます。
発表後は数字だけでなく、その増減理由や今後の計画を読みます。予想が外れたのに比較対象を変えて正しかったことにする、株価が下がってから初めて「織込み済みだった」と説明する、といった後付けを避けるためです。
格言を使う価値は、ニュースと期待を読み分ける点にあります。売買の成立価格や許容できる損失は、この比較を終えても別に残る判断です。