値下がりを、値引きと同じに考えない
店で同じ商品が値引きされれば、安く買えると感じます。株式の場合は、価格の下落と同時に将来の利益や財務の見通しも変わっているかもしれません。以前より株価が低いだけで、今の事業に対して割安とは判断できません。
「落ちるナイフは掴むな」は、落下する刃物を急落中の株式になぞらえた相場格言です。ナイフが床に着くという比喩は、現実の相場で底値を完全に知る方法を与えてくれるものではありません。下落中に反射的な買いを入れる前に、一度判断を止める言葉として読めます。
一度の反発が底値を示さない独自例
図は架空銘柄の五期間の終値を、1,000円、800円、640円、700円、600円と置いた例です。640円から700円へ反発していますが、その後に600円へ下がっています。700円の時点では、さらに安値が出る未来はまだ分かりません。
例えば800円で100株を買い、後に600円で全株売却できたなら、損失は2万円です。手数料、配当、税金を除き、両価格で約定した仮定です。最初の1,000円から値下がりしていたことは、800円で買う人の損失を防ぎません。図の形は実際の値動きや反発後の下落確率を示してもいません。
価格と下落理由は、別の資料から読む
株価の記録からは、どの期間に下がり、どこで反発したかを読めます。一方、企業の下方修正、主要事業の不振、資金繰りなどは開示資料から調べる対象です。市場全体が下がったのか、その企業に固有の変化があったのかでも、検討する材料は変わります。
出来高が増えた事実だけでは、売りが出尽くしたとは分かりません。売買の成立には買い手も売り手もいて、出来高は誰か一方の気持ちを表す数字ではないからです。反発や安値更新の停止を観察しても、その後の再下落は残ります。
待てば必ず良い価格で買えるわけでもない
調べる間に株価が戻り、最安値で買う機会を逃す場合はあります。それでも、分からない下落理由を放置したまま購入する義務はありません。何を調べれば判断を進められるかを具体的にすると、待つ行動にも意味ができます。
購入を検討するなら、持つ期間、株数、再び下がった場合の負担も必要です。売却条件に逆指値を使っても、条件価格での約定が保証されるわけではありません。格言は底値を当てる装置ではなく、安さだけで判断していないかを問い直すきっかけです。