疑われているので買う、という順序の誤り
投資の話題に否定的な意見が集まると、「懐疑があるから上昇の途中だ」と買いたくなる場合があります。しかし、この格言は、懸念が残る間にも価格が上がることがあるという見方です。懸念があるすべての企業が良い投資になる、という条件ではありません。
テンプルトンの考え方への帰属を確認できても、目の前の銘柄へそのまま当てはまる証拠が増えるわけではありません。格言の知名度と、現在の事業に対する判断の根拠を分ける必要があります。
否定的な投稿が増えた独自の場面
架空の企業Aについて、売れ残りへの心配がSNSに多く出ている場面を考えます。投資家はそれを「皆がまだ疑っているから買い」と解釈しました。しかし、会社が公表した資料には在庫の増加と利益予想の引下げがあり、新しい販売策の効果はまだ確認できません。
このとき調べるのは、否定的な投稿の数だけではありません。在庫が増えた理由、販売価格の引下げが利益へ及ぼす影響、販売策を評価できる資料の時期などです。新商品が売れれば改善するという推測は、公表された改善実績と区別して残す必要があります。
同じ意見の繰り返しを、市場全体と見なさない
例で多く見えた投稿が、同じ公表資料を引用し合っているだけという場合もあります。複数の投稿を読んでも、独立した事実を複数確認したことにはなりません。逆に、好意的な投稿だけを選んで読めば、懐疑が消えたようにも見えてしまいます。
また、発言する人の数と、売買される株数や資金の大きさは同じではありません。目に入る意見から市場全体の心理を測り切ることはできず、否定的な意見が多く見えたという観察だけで、価格が織り込む期待の程度も確定できません。
判断が変わる資料を、売買前に決める
例の企業なら、在庫の減少が値引き頼みなのか、販売数量や採算が改善したのかで読み方が変わります。確認前に購入するなら、その不確実性を引き受ける判断であって、格言で安全が確かめられた判断ではありません。
下落後に損失を戻したい気持ちから保有を増やすと、当初より一社への依存が大きくなる場合があります。「長期だから」「皆が疑っているから」を追加購入の代わりの理由にせず、投資先、保有額、資金を使う期限へ戻って点検します。懸念の内容を確かめる姿勢と、懸念があれば必ず見送るという一律の規則も別です。