利上げなら株安、利下げなら株高と決める弱点
中央銀行の発表を見て、利上げだから売る、利下げだから買う、と結論を急ぐと、その政策が必要になった経済の状態を見落とします。利下げの背景が企業収益の悪化なら、借りる費用の低下だけでは株価の方向を説明できません。
中央銀行の金融政策は、金利などへ働きかけ、経済活動と物価へ影響を及ぼす仕組みです。企業や家計の行動を通じるので、効果は直接でも一様でもありません。そのため、政策の方向を知るだけでは、企業の利益や資産価格への影響を読み切れません。
日本銀行も、金融機関の調達や貸出、企業と家計の資金利用を経て、景気や物価へ波及する経路を説明しています。その途中の条件を飛ばすと、政策と損益を直結させてしまいます。
同じ借入額でも、影響する時期が違う例
独自の仮例で、A社とB社がそれぞれ1億円を借りているとします。A社には固定金利の契約がまだ残り、B社は来月に借り換えます。B社の新しい契約の年利が2%から3%へ変わると仮定します。
元本が1年間変わらなければ、B社の年間利息は200万円から300万円へ増えます。費用や税金は含めません。A社の既存契約の金利が同じ日に変わる設定ではなく、同じ借入残高でも影響の時期がそろわないことを示しています。
現実には、新しい契約の金利は政策金利の変更幅だけで決まりません。借り手の信用力や担保、銀行側の条件が関係します。政策が何%動いたから全社の利息も同じ幅で動く、という計算にはできません。
物価へ届くまでの時間と、供給側の問題が残る
市場金利や価格は早く反応しても、企業が設備を減らし、雇用や所得を経て消費が変わるまでには時間がかかります。2006年の日本銀行副総裁講演も、金融政策の波及には時間差があり、その長さが景気や構造で変わり得ると説明しています。特定の月数を固定した法則ではありません。
また、エネルギーや部品が不足して価格が上がる場合、金利を上げても供給がその場で増えるわけではありません。需要へ働きかけることで物価へ影響する可能性はありますが、同時に投資や消費を抑える負担も考える必要があります。
発表直後に物価が下がらなかったことだけで失敗と決めるのも、その後の変化をすべて政策の成果と決めるのも早すぎます。海外の価格や為替、財政の影響も重なります。
発表内容、予想との差、企業の条件をそろえる
投資で見る時には、実際に決まった方針と、それ以前に想定されていた内容、次の判断の前提を分けます。すでに予想されていた変更かどうかで価格の反応は変わるので、政策の方向だけから反応を断定できません。
その上で、投資先の借り換え時期、顧客の支出、原材料と販売価格の関係を確かめます。中央銀行が何でも制御できると考えるより、政策が届く経路と届きにくい条件を具体的に探る方が、役割の理解を投資へつなげられます。