氷山の一角を長期投資に生かす視点

利益の見出しを、そのまま手元資金と考えない

利益が出ている会社でも、在庫や売掛金が増えて、現金が思うほど残らない場合があります。長く持つ投資先では、一回の好調な決算の後に、資金をどこへ置き、いつ回収するのかを追う意味があります。

「氷山の一角」は、目に付く情報だけでは全体が分からないという比喩です。正式な投資指標ではなく、必ず隠れた悪材料があると疑う規則でもありません。見出しから関連する開示へ進む、という読み方に使います。

粗利益と現金の増加が違う独自の仮例

ある一期間の架空の商売で、期首に100個の商品があり、一個1,000円で200個を現金で仕入れたとします。その期間に150個を一個1,500円で売り、代金を全額現金で受け取ります。期首の商品も一個1,000円で、代金は前の期間に支払済みです。

売上は22万5,000円、売れた150個の原価は15万円なので、粗利益は7万5,000円です。一方、期間中の入金22万5,000円から仕入代金20万円を引くと、現金の増加は2万5,000円です。

期末に残るのは150個で、取得原価では15万円です。期首の在庫10万円より5万円増えており、その分だけ仕入れたお金が商品に残っています。税金、人件費、売掛・買掛、値下げや評価損などはない仮定で、粗利益が会社の最終利益だという例ではありません。

在庫が増えた理由を、次の期間まで追う

在庫増加は、需要を見越した準備、納期への備え、販売の遅れなど、理由によって意味が変わります。数値が増えただけで、すべて売れ残りや不正だと結論付けることはできません。

会社の説明と、実際の販売、在庫の回収、追加の仕入れを次の開示で照合します。比較する期間の長さ、季節性、事業の範囲をそろえないと、異なる条件の増減を同じ問題にしてしまいます。

米国SECの入門資料は、利益を示す資料と現金の出入りを示す資料を関連付けて読む考え方を説明しています。ここでは一般的な仕組みを参照し、米国と日本の会計表示がすべて同じとするものではありません。

長期の仮説を、見えた数字に合わせて直す

保有前に、どの販売や回収を期待したのかを残しておくと、その後の在庫増加が計画どおりかを比べられます。長く保有するつもりであることだけを理由に、資金の回収が遅れている事実を読み飛ばさないようにします。

一方、一期間の変化だけで将来の破綻や成長を断定することもできません。氷山の比喩は、見えない事情を自由に作るためではなく、まだ確かめていない項目を具体的に挙げ、資料で追うために使います。

出典