株の売買と、企業が売る商品の話を分ける
人気の株に買い注文が集まることと、その会社の商品が売れることは同じではありません。短期には株式の注文で価格が動いても、長い期間の利益は、顧客が何をいくらで買い、企業にどれだけ費用がかかるかに関わります。
長期投資で需要と供給を見る場合は、商品の価格ごとに求められる量と供給できる量、そして株式市場で売買したい量を分けます。事業の需給から利益を考えることと、その利益に投資家が付ける価格を考えることは、つながっていても別の段階です。
特に、新しい工場や設備の計画が多い時には、供給する力が増えることと、最終的に顧客が使う量が増えることを混同しない必要があります。
販売が増えた月でも、在庫が積み上がる例
独自の架空工場で、同じ商品を扱い、期首在庫は0個とします。最初の月は100個生産して100個販売し、月末在庫は0個。翌月は150個生産し、120個販売したので、月末在庫は30個になります。返品、廃棄、他の入出庫はない設定です。
翌月の販売は増えていますが、生産がそれ以上に増えたため、在庫も増えました。さらに次の月に150個生産し、100個販売すると、期首の30個を合わせて月末在庫は80個になります。生産量が大きいことだけでは、需要が同じだけ増えたとは言えません。
実際の会社を読む時には、在庫の金額に価格や品目構成も影響します。上の例は数量を固定した同じ商品の計算で、会社全体の棚卸資産額をそのまま数量へ置き換えることはできません。
長期の需要を確かめる資料には、時間の違いがある
受注は将来の販売候補、販売はその期間の出荷や取引、設備能力は作れる量の上限の目安です。受注しても取消しや納期変更があり、能力があっても顧客の購入が追い付かない場合があります。同じ需要という言葉でも観測する段階をそろえます。
企業の説明資料では、販売数量と単価、在庫、稼働率、設備投資、受注の納期などを並べて見ます。一社の好調だけでは、顧客の最終需要が増えたのか、競合から注文を獲得したのかも決まりません。
価格が高い期間に供給が増えれば、後から競争が強まることもあります。需要が伸びる産業でも、一社の利益が同じように伸びるとは限らず、競争力と費用の条件が残ります。
日々の需給を、長期の保有理由へ無理につなげない
一日の出来高や投資主体の売買だけから、何年先の利益を決めることはできません。逆に、長期の事業の見通しが良くても、購入した価格が高ければ、保有中に損失となる場合があります。期間の異なる材料を分けて使います。
長く持つ理由には、顧客の利用が続くこと、供給の増加に耐えられること、必要な投資を賄えることなどの条件が要ります。家計の資金を使う時期も合わせて、企業の需要が確認できる時間まで待てるかを考えます。