愛用品の会社だから、安心だと感じるとき
毎日使う化粧品が気に入っていると、その会社についてもよく知っているように感じるかもしれません。使用感や店頭の品ぞろえには詳しくても、利益がどの事業から生まれ、どの国で売れ、どれほど借入れがあるかは別の知識です。
ピーター・リンチは、フィデリティ・マゼラン・ファンドの元運用担当者です。生活の中から企業を発見する視点を、商品のファンなら株式も安全という意味に広げることはできません。なじみ深い対象へ安心感を持つことと、損失の可能性を調べることを分ける必要があります。
愛用品が会社の一部だった独自例
架空の企業Aには化粧品と業務用素材の事業があり、自分が好きな化粧品ブランドは売上の一部にすぎないとします。本人は店頭の売れ行きを見て会社全体も好調と考えていましたが、決算資料では素材事業の需要が落ち込んでいました。
このとき、化粧品への好意を取り消す必要はありません。消費者としての評価は残したまま、株式の判断には、素材事業を含む会社全体の利益や資金繰りを取り込む作業が必要です。好きな商品の売上比率が分かっても、利益の比率まで同じとは限らない点にも注意が要ります。
都合のよい情報だけを集めていないか
例の人が商品を褒める口コミだけを読み続けると、素材事業の弱さは検討から抜けてしまいます。逆に、株価が下がったために商品の評価まで急に否定しても、事業分析が進んだとは限りません。商品、企業、株価を一つの好き嫌いでまとめないことが役立ちます。
記録には「使用感がよい」という観察と、「会社全体の利益が伸びる」という仮説を分けて残せます。仮説を確かめる資料は、企業の決算説明資料や事業別の開示などです。反対の材料を見つけたとき、それがどの事業に関わる情報かまで読むと、好意との衝突を小さくできます。
身近さを捨てる必要はないが、範囲を知る
詳しい商品や業界があることは、調べる疑問を持つ助けになります。専門家でない人にも、「前より値上げした」「販売経路が変わった」など気付けることはあります。ただし、身の回りの顧客だけを市場全体の代表として扱うことはできません。
買う・買わない理由を同じ数にそろえるより、自分の観察では分からない部分を書き出すほうが具体的です。企業への理解が進んだ後も、価格が期待を過度に含んでいる可能性や、一社への集中は残ります。人物の知名度や商品への親しさを、自分の調査への自信と混ぜない読み方が必要になります。