金融の仕組みを、安心できる物語で置き換える
南海会社は貿易だけでなく、英国の国の債務の取扱いとも関係していました。1720年には株価が大きく上昇した後、急落しています。イングランド銀行の歴史解説は、この制度と投資の関係を読む手掛かりになりますが、「政府が関わる投資なら元本は安全」という結論を与えるものではありません。
国の債務を株式へ替える仕組みを考える際も、株主が持つ権利と、国へ直接貸した債権の条件は区別する必要があります。会社の事業や株価が変わっても、元と同じ受取額が保証されるわけではありません。名前や関係者の知名度だけで、何を保有するのかを省くと読み違えます。
会社の利益と、一株の利益を分ける独自例
歴史の取引条件を再現せず、架空の会社Aで考えます。最初の一年間は普通株100万株が通年変わらず、純利益が1億円だったとします。次の一年は期首に追加発行が終わり、普通株が通年200万株となり、純利益が1億5,000万円へ増えました。自己株式、優先株、ほかの株数の変化はないものとします。
一株当たり利益は、前の年が1億円÷100万株=100円、次の年が1億5,000万円÷200万株=75円です。会社の利益は50%増えても、一株当たりでは25%減っています。追加発行の是非をこの二年だけで決める例ではなく、総額だけでは既存の一株の成果を読めないという計算です。
増えた資金の使途と、成果が出る時期を読む
例で調達したお金が有望な設備に使われ、その先で利益が増える可能性はあります。一方、必要な費用がかさむ場合や、予定した成果を得られない場合もあります。調達できた金額と、それを使って稼ぐ金額は同じではありません。
現在の企業の資料では、発行する株数、調達資金の使途、利益計画の時期などを読むことができます。実際の一株当たり利益では期中の株数を踏まえるため、期末の株数だけで機械的に割ると条件がずれます。増資前後の利益を比べる際も、対象期間や計算の範囲をそろえる必要があります。
有名な失敗談だけを覚えて終わらない
南海泡沫事件はよく知られていますが、著名人の名言や損失額を覚えるだけでは、現在の開示を読めるようにはなりません。実際に確認できる権利、資金の流れ、収益の前提へ戻るほうが、知っている物語に引きずられにくくなります。
新しい市場へ期待が集まる場面にも、過去と同じ崩壊日が来ると決めつけることはできません。逆に、時代が違うから何も学べないわけでもありません。会社の大きさや公的な関係を、自分が持つ一株の利益や安全性へ直結させていないか、という具体的な問いにして使えます。