時間をかければ、高過ぎた価格も戻るのか
大きく下がった株を見て、「何年でも待てば元に戻る」と考えることがあります。しかし、時間が経つことと、以前の価格を正当化する利益が生まれることは別です。南海泡沫事件では1720年に南海会社へ投資が集中した後、株価が急落しました。歴史的な急騰の存在は、将来の回復を保証する材料にはなりません。
長期投資で追う対象は、価格が元へ戻る日だけでなく、企業が継続して生む利益と、自分が払った金額の関係です。事業が残ること、売上が伸びること、株主の購入価格を上回る成果が出ることも、同じ条件ではありません。
利益が増えても、株価が下がる独自の仮例
架空の会社Aについて、購入時の1株当たり年間利益が60円、株価が2,400円だったとします。10年後の1株当たり年間利益は90円に増えましたが、その時点の株価は1,800円だったという場面を置きます。株数の変化や株式分割はなく、配当、税・売買費用を含まない比較です。南海会社の実際の数字ではありません。
利益は50%増えていますが、株価だけの変化はマイナス25%です。株価を1株当たり利益で割るPERは、購入時40倍、10年後20倍となります。これはPERが必ず20倍へ戻る予測でも、20倍が適正という意味でもありません。利益の成長と、それに対して払われる価格の評価が違う方向へ動くことを表した例です。
持っている間に、前提が変わることもある
例では株数を固定しましたが、現実には増資や買収、主要事業の変更が起こり得ます。会社全体の利益が伸びても、株数が大きく増えれば、一株の持分に対応する利益は別の動きになります。また、新規投資で稼ぐ力が増えるか、借入を返せるかも、時間とともに読む対象です。
長く持つという最初の予定を守るために、予想の未達や財務の悪化を見なかったことにすると、方針と点検が逆転します。短期の価格変動で毎回事業評価を変える必要はありませんが、持つ理由が失われた後も同じ説明を繰り返していないかは別に振り返れます。
自分が待てる期間と、企業の期間は別
企業の事業計画が長いことから、自分の教育費や生活費の支払いを延期できるわけではありません。投資先の回復を期待している時期に家計で現金が必要になるなら、長期投資という言葉だけでは負担を解消できません。
南海泡沫事件と現在の企業を同一視する必要はありませんが、価格へ強い期待が入る場合の問いは作れます。何を実現すればその価格に見合うのか、期待のどこが未確定か、外れた場合の保有額をどう考えるかです。歴史は、保有を続けるかを自動的に答える道具ではなく、見落とした前提を読む入口になります。