半導体サイクルとは?デメリットでわかる投資判断の使い方

波の名前が分かっても、底の日時は分からない

「半導体の在庫調整が進んだ」と聞いて買ったのに、利益予想の下方修正が続くことがあります。サイクルの考え方は需要と供給の関係を整理する材料ですが、どの日に価格や株価が底を打つかを教える時計ではありません。

製品の種類、使われる市場、会社の立場で波は異なります。特定のメモリの価格が回復しても、自動車向けの別の半導体や、顧客の投資を待つ装置企業が同時に回復するとは限りません。

また、在庫や設備投資のデータは集計範囲と公表時期に差があります。最新の発表でも、すでに終わった期間を表す数字であり、今まさに売れる数量と同じではありません。

価格と数量が少し動くだけで、利益が縮む例

架空の半導体製造企業の年間売上を100億円、数量に比例する変動費を50億円、短期には変えにくい固定費を30億円とします。営業利益は20億円です。実際の業界平均を示す数字ではありません。

販売単価が10%下がり、出荷数量も20%減ったと仮定すると、売上は100×0.9×0.8=72億円です。単位当たりの変動費が同じなら変動費は40億円で、固定費30億円を引いた利益は2億円になります。売上の減少より、利益の落ち込みが大きく出ています。

費用の性質を分けた単純例で、税金、利息、在庫の評価損は省きます。実際には生産数量と出荷数量、在庫の費用配分も異なります。それでも、数量の減少と単価下落を別々に見るだけでは利益変動を読み違える理由が分かります。

在庫減少も、強い需要の証明とは限らない

在庫が減った理由には、販売が増えた場合だけでなく、生産を大きく絞った場合や、評価額が下がった場合があります。在庫金額と数量を混ぜると、実際の需給改善より強く見えることがあります。

能力を増やす投資にも時間がかかるため、好況で決めた供給拡大が、需要が弱まった後に効いてくる場合があります。反対に、需要が強くても必要な工程や部品が不足すれば、その売上をすぐ取り込めません。東京エレクトロンのリスク開示も、市場の急変や供給対応に関する問題を挙げています。

工場の能力、実際の生産、顧客へ出荷した数量、顧客側の消費量は別です。どの段階の数字を使っているかを確認せず、一本のサイクル図に当てはめるのは危険です。

見通しが外れた時に、説明を後付けしない

回復を見込むなら、単価、数量、稼働、在庫のうち何が変われば見方を改めるかを残します。外れるたびに「もう少し待てば次の周期」と延ばすと、最初の判断を検証できなくなります。

投資金額も、回復するまでの期間を正確に当てられる前提にしないことです。製品への集中、顧客の投資先送り、規制や競争力の変化など、在庫調整だけで終わらない問題もあります。サイクルを見る利点を生かすには、その見方で分からない部分も明確にする必要があります。

出典